三尾 勇樹(みお・ゆうき)さん 名古屋市天白区・27歳・足診師(そくしんし) 取材●長谷部匡彦(本誌)撮影●永谷正樹

三尾 勇樹(みお・ゆうき)さん
名古屋市天白区・27歳・足診師(そくしんし)
取材●長谷部匡彦(本誌)撮影●永谷正樹

 小学6年生の時に両親が離婚してから、心のバランスが崩れていった。不登校や高校中退など紆余曲折(うよきょくせつ)があったが、人のために祈り始めたとき、心に光が差し込んだ。さらに、クラフト作りをしていると、心に押し込めていた過去の想いが浮かび上がり、気持ちに整理がついていくにつれて、様々な良いアイデアが浮かぶようになってきた。

 国の重要文化財に指定された五重塔のある八事山興正寺(やごとさんこうしょうじ)や、中京大学などがあり、緑豊かな文教地区として知られる名古屋市の八事。市営地下鉄「八事」駅に近い、待ち合わせ場所に、さわやかな笑顔の三尾勇樹さんが現れた。

「仕事は、民間療法の『足診(そくしん)』をしています。足裏のツボに刺激を与えると、瞬時に刺激が伝わって、症状や体質の改善に効果があるんですよ。足診を通して、人の喜ぶ顔を見られるのがうれしいですね」

集中する時間が過去の想いを浮かび上がらせる

 今年(2017)7月5日から6日にかけて九州北部で発生した記録的な集中豪雨は、福岡県朝倉市や大分県日田(ひた)市などに、甚大(じんだい)な被害をもたらした。そのニュースをテレビで見た三尾さんは、ボランティアに行こうと思い立った。

 発生から10日後、大分県に入ると、まず生長の家大分県教化部(*1)で開催されていた練成会(*2)に参加。座談会で、ボランティア活動をするために来たことを話すと、その思いに共鳴した2人の青年が現れ、一緒にボランティアに行くことになった。

「他の参加者の皆さんからも、『わたしたちの代わりに頑張ってきて! 』という応援と、援助をいただきました。誰かの役に立ちたいという考えが、人の愛を引き出すことにつながったのはうれしかったです。人の役に立ちたいと思い、素直に行動できるようになったのは、以前よりも心が落ち着いて、クリアになったからだと思います」

苦手だった人間関係

 岐阜県中津川(なかつがわ)市で生まれ育った三尾さんは、小学6年生の時に両親が離婚。母親のもとに残ることにした。

「両親が喧嘩(けんか)を繰り返すうちに心が暗くなり、離婚をきっかけに何事にも投げやりになってしまいました。そんな時に、友だちのある言葉に傷ついて、同級生に対し、心を閉ざすようになってしまいました。年上や年下の人とは話せても、同級生とは普通に話すことができなくなってしまったんです」

自宅から徒歩10分で行ける八事山興正寺。散歩コースの1つ

自宅から徒歩10分で行ける八事山興正寺。散歩コースの1つ

 両親の離婚後、三尾さんは、近所に住む生長の家の信徒の勧めで、毎年練成会に参加するようになり、「人間は神の子で、本来素晴らしい存在」だと教えられた。

「教えに感動して、青少年練成会の運営など積極的に関わるようになって、生長の家の友だちと接しているときだけは、明るい気持ちになれました。でも学校では、同級生と馴染(なじ)むことができず、中学では不登校になり、高校では1年生を留年した後、2回目の1年生の10月に退学しました。生長の家の教えが唯一、自分の心の支えでした」

 その後、新設されたばかりの学童保育所で、子どもの世話をするアルバイトをしながら、高卒認定の資格を取得。さらに、生長の家の教えを伝えてくれた信徒に誘われて、民間療法の足診師(そくしんし)の資格をとった。

 平成24年から4年間は、愛知県で一人暮らしをしながら、足診師の仕事をする傍(かたわ)ら、アルバイトや派遣や契約社員として働いた。その期間は青年会活動に参加できずにいたが、岐阜の実家に戻ると、生長の家に恩返しをするつもりで、青年会活動に改めて関わるようになった。

祈りで善い点が見えるようになる

 平成28年の夏に行われた練成会で、三尾さんは友達との不和が原因で不登校になった中学生から相談を受けた。練成会が終了すると、その中学生と毎朝LINEをつなぎ、母親も含めて一緒に神想観(*3)の実修をしようと呼びかけた。

「自分も神想観のなかで、その子が友達と和解できるように真剣に祈りました。それを続けていくうちに、荒(すさ)んでいたその子の雰囲気がだんだん落ち着いて、学校にも行けるようになったんです」

 その後も、練成会の参加者や、青年会の仲間のために祈り続けるうち、三尾さん自身にも変化があらわれた。

「物事の良い面に心が向けられるようになってきたんです。それまでは上辺(うわべ)だけの人間関係だったのが、相手の良いところを心の底から感じられるようになりました。自分の中にあった物事を暗くとらえるフィルターがなくなり、心に光がとどくようになった感じです」

他の人の役に立つアイデアに、愛は引き出される

 さらに、平成28年の青年一日見真会では、こんな経験をした。手作りに挑戦するクラフトの時間で、バターナイフを作っていた三尾さんは、それまで感じたことのない感覚にとらわれた。

三尾さんのクラフト作品「これを友だちにプレゼントするつもりです。喜んでくれたら嬉しいですね」

三尾さんのクラフト作品「これを友だちにプレゼントするつもりです。喜んでくれたら嬉しいですね」

「木の端材(はざい)を削(けず)り出しているうちに、手の中にある木と自分が一つになり、参加しているみんなや空間全体とも同化するような、不思議な一体感を感じました」

 その体験に感動した三尾さんは、平成29年1月、生長の家国際本部の青年会中央部が主催した「21日間習慣化プログラム」に参加した。良い習慣を身につけるため、フェイスブックに進捗(しんちょく)状況を投稿し、参加者同士で励ましあいながら、21日間続けていくもので、三尾さんは、毎日続けてクラフト作りをすることを表明した。

「一つのことに集中する時間を持つことで、新しい視点や考えを身につけられるかもしれないと思ったんです。毎日続けていると、ざわついていた心が落ち着いてきて、それまで目を背(そむ)けていた過去に抱いた想いが脳裏に浮かんできました。それらをノートに書き出したんです」

 その一つに、忘れていた父親との思い出があった。

「幼稚園の頃、父親が木製の遊び道具を作ってくれたことを思い出したんです。自分が足診師の仕事や、クラフト作りなどの手先を使うことが得意なのは、手先が器用だった父親から受け継いだ才能だと気づいて、父親と自分をともに受け入れることができるようになりました。その後、神想観を実修したり、クラフトで集中する時間を持ったりすることで、自分自身の内面を見つめ直し、心がクリアになっていくにしたがって、いろんなアイデアが浮かぶようになりました」

 三尾さんは、朝の神想観実修のときに、多くの人とLINEグループ通話で、「神が創(つく)られたままの完全円満な善一元の世界」をともに祈ることを思いつき、知り合いに参加を呼びかけた。

 現在、このグループには、約80人が登録しており、開始時間を毎朝5時と6時の2回に分けて、神想観を一緒に行い、喜びをわかちあっている。

*1︎ 生長の家の布教・伝道の拠点
*2︎ 合宿して教えを学び、実践する集い
*3 生長の家独得の座禅的瞑想法