山平園│静岡県富士市 煎茶の製造工場で。多くの工程を経て煎茶ができあがる 取材/原口真吾(本誌) 写真/堀 隆弘

山平園│静岡県富士市
煎茶の製造工場で。多くの工程を経て煎茶ができあがる
取材/原口真吾(本誌) 写真/堀 隆弘

 静岡県富士市にある茶園農家「山平園(やまひらえん)」は、無農薬・無化学肥料のお茶を製造販売している。富士山南東の愛鷹(あしたか)山系の斜面にある農園で、さまざまな微生物が共生する「生きた土作り」に力を入れ、山から川へ、そして海、人へと“いのちの輪”が繋がっていくお茶作りをめざしている。

 富士山南東の須津川(すどがわ)渓谷沿いは、霧が多く、排水も良いため、お茶作りに適している。この愛鷹山系の斜面、約3ヘクタールの農園でお茶作りを営む山平園は、より安心・安全なお茶を作るため、平成15年から無農薬・無化学肥料の栽培に切り換えた。

 スタート当初は、新芽が出なくなるほど茶の木がやせ衰えてしまった。化学肥料を使っていた畑では、作物がしっかり根を張る必要がなかったため、無農薬・無化学肥料の栽培では、茶の木が土から栄養を吸い上げられなかったからだった。しかし、4年目から徐々に回復し始め、以前と遜色のない状態になるまでに6年かかったという。

上:茶葉を日向で発酵させ、無農薬の国産烏龍茶を試作している/下:さまざまな虫が息づき、植生も豊かな畑の土はとてもやわらかい

上:茶葉を日向で発酵させ、無農薬の国産烏龍茶を試作している/下:さまざまな虫が息づき、植生も豊かな畑の土はとてもやわらかい

 よいお茶を育てるには、その土台である土壌が重要なため、山平園では、多様な微生物が共生する“生きた土作り”に力を入れている。人にも自然にも優しい栽培方法を追求した結果、肥料には、黒砂糖、酢、おから、鰹の煮汁など、食品としても使用できるものを加えている。

 黒砂糖は微生物の餌、鰹の煮汁に含まれるチッ素はお茶の栄養になり、酢はミネラルを補給するとともに、お茶のチッ素の吸収を助ける。また、田んぼ周辺の河川敷などにある葦を刈り取り、茶畑の畝の間に敷き、肥料にしている。

 農薬を散布していない茶畑には、毎年、お茶の葉の養分を吸うウンカ、スリップス、赤ダニなどの害虫が発生するが、一定数以上は増加しない。これは、茶畑に生物多様性があるため、害虫が出れば自ずと天敵が増え、生態系のバランスが保たれているからだ。

 こうして自然に近い環境で栽培されたお茶は、「お茶本来の風味が味わえる」と多くの人から好評を博している。

 山から川へ、そして海、人へと、いのちが循環していくようにとの思いを込めて栽培をしているという、山平園主の平栁利博(ひらやなぎとしひろ)さんは、次のように語る。

「自然に優しい肥料のみを施した“土が喜び笑う農法”で、“いのちの輪”を大切にしながら、これからも安心・安全でおいしいお茶作りをしていきます」

問い合わせ先
TEL/0545-34-1349 
MAIL/http://yamahiraen.net/