中村龍治(なかむらりゅうじ)さん│56歳│熊本県南阿蘇(あそ)村 取材/磯部和寛 写真/遠藤昭彦 中村さんの自宅母屋に設置されたソーラーパネル。室内の照明はすべてLEDとなっている。 「環境のことを考えて導入した太陽光発電と蓄電池が、熊本地震の時に役立ってよかったです」

中村龍治(なかむらりゅうじ)さん│56歳│熊本県南阿蘇(あそ)村
取材/磯部和寛 写真/遠藤昭彦
中村さんの自宅母屋に設置されたソーラーパネル。室内の照明はすべてLEDとなっている。
「環境のことを考えて導入した太陽光発電と蓄電池が、熊本地震の時に役立ってよかったです」

熊本地震の災害時、周辺住民に電気を供給して

 世界有数の規模を誇る阿蘇カルデラ内の南部、阿蘇五岳と外輪山に挟まれた南阿蘇村は、雄大な景色と豊富な水源を有する風光明媚(ふうこうめいび)な地。しかし、昨年(2016)4月に発生した熊本地震では、大規模な土砂崩れなどの大きな被害が出て、今も不通の道路があるなど、震災の生々しい爪痕(つめあと)が至るところに残っている。

上:ツボに打った鍼の上にもぐさを乗せる「灸頭鍼(きゅうとうしん)」という治療を行っている/左:結婚して36年経った今も仲睦まじい中村さん夫妻

上:ツボに打った鍼の上にもぐさを乗せる「灸頭鍼(きゅうとうしん)」という治療を行っている/左:結婚して36年経った今も仲睦まじい中村さん夫妻

 この村で30年以上、鍼灸(しんきゅう)院を営む中村龍治さんは、当時をこう振り返る。

「4月16日未明、二度目の大きな揺れが起きた時は寝ていました。這(は)っていって窓を開け、避難経路を確保するのが精一杯。後は揺れが収まるまで身動きできませんでした。幸い自宅を含め、この辺りでは建物が崩れるような被害はありませんでしたが、電気も水道も止まり、その後も大きな余震が続いたので、とても恐ろしかったですね」

 電気が復旧するまでに10日ほどかかったが、そんな災害時に役立ったのが、鍼灸院の治療室として使っている離れと母屋の屋根に設置している太陽光発電と蓄電池。停電で周囲一帯が真っ暗な中、中村さん宅だけに、煌々(こうこう)と灯(あか)りが点っていたため、近所の人たちが不思議がって集まってきたという。

「皆さん、電気が止まって困っていたので、携帯電話などの充電用として蓄電池から電気を供給させていただきました。皆さんの喜ぶ顔を見て、太陽光発電、蓄電池を備えていて、本当に良かったと思いました」

 中村さんが太陽光発電装置と蓄電池を導入したのは、平成25年。その年、山梨県北杜(ほくと)市にある生長の家国際本部“森の中のオフィス”を見学したのがきっかけだった。

「日本初のゼロ・エネルギー・ビル(*1)として、エネルギーを自給自足し、環境に負荷を与えない“森の中のオフィス”の素晴らしさを目の当たりにして、私もできることから環境保全に貢献しようと思いました。特に、蓄電池を併用することで電力会社からの買電を抑(おさ)えられると知って、太陽光発電と蓄電池を一緒に導入しようと……」

環境保全のために自分ができることをしよう

 そんな折、ソーラーパネル販売会社のセールスマンが、中村さん宅を訪ねてきた。設置費用は、母屋に5.52キロワットの太陽光発電を付けた場合、工事費込みで約300万円と聞いて尻込みしたが、足繁く通ってくるセールスマンの話を詳しく聞いてみると、その時は、太陽光発電を設置すれば、蓄電池が無料で付くキャンペーン中だということが分かった。

母屋の屋根の下に取り付けられたパワーコンディショナー。雲の多い阿蘇地方だが、ソーラーパネルの性能向上により、申し分ない発電量が得られている

母屋の屋根の下に取り付けられたパワーコンディショナー。雲の多い阿蘇地方だが、ソーラーパネルの性能向上により、申し分ない発電量が得られている

「それを聞いても、まだ二の足を踏んでいたんですが、毎朝欠かさずに行っている神想観(*2)を通して祈っているうちに、日頃、生長の家で教えられている環境保全のために、自分ができることをしようという前向きな気持ちになって、設置を決意したんです」

 ちょうどその折、九州電力では、一般家庭で10キロワットの太陽光発電を付けた場合、20年間、売電価格が1キロワット39円に据え置かれることを知り、母屋だけでなく、鍼灸院の治療室にも5.12キロワットの太陽光発電を設置することにした。

 こうして26年1月、母屋、鍼灸院の治療室合わせて10.64キロワットの太陽光発電、蓄電容量2.4キロワットアワー、最大出力1キロワットの蓄電池を導入したのだった。

 設置費用は総額約570万円。15年ローンで、毎月3万7千円ずつ返済することにした。

「最初は、毎月3万7千円の出費は痛いと思ったんですが、今は、売電額の平均が2万5千円から3万円、夏などは5万円になることもあり、楽になりました。また、蓄電池を併用することで買電額も抑(おさ)えられ、あの時、思い切って太陽光発電と蓄電池を導入して本当によかったです。災害時には困っている人のお役にも立てたし、『やっぱりこれは神のみ心に叶(かな)うことだったんだなぁ』と思います」

鍼灸院を訪れる人を心からの笑顔で迎える

 中村さんは、鍼灸師だった父親の影響で、中学卒業後、神奈川県小田原市の鍼灸専門学校に5年間通って資格を取得。卒業と同時に、同じ学校に通っていたすみさんと婿入(むこいり)の形で結婚し、すみさんの郷里、現在の南阿蘇村で鍼灸院を開業した。

 生長の家の教えには、熱心な信徒だった義母のスマ子さんを通して触れたが、宗教嫌いだった中村さんは、なかなか振り向かなかったという。

「それでも、たまに『白鳩(*3)』などを開いたりして、『褒(ほ)めて育てる』などの子育ての体験などを読むと、いいことが書いてあるなあと思ってはいたんです。それで、現在、相愛会(*4)熊本教区連合会長の田尻博司さんから誌友会(*5)に誘われるうちに、いつの間にか顔を出すようになり、『すべての人やものへの感謝』を説く生長の家の教えに惹(ひ)かれるようになったんです。そして、平成19年に相愛会の一員になりました」

「来てくださってありがとうございます」──中村さんは、感謝の思いを込め、にっこり笑って鍼灸院を訪れる人を迎えるという。そんな温かい人柄が口コミで広がり、来訪者が増えている。

「今は、自宅側の畑で、無農薬、化学肥料を使わず、EM菌などを用いて、アソタカナ、キャベツ、ブロッコリー、ホウレンソウ、ダイコンなどのさまざまな野菜を作っています。節電、節水はもちろん、これからも無駄に資源を消費しない、環境に配慮した生活を続けていきたいですね」

EM菌を使って野菜を栽培している畑で、妻のすみさんと

EM菌を使って野菜を栽培している畑で、妻のすみさんと

*1=創エネ・省エネの技術により、建物内の年間エネルギー使用量をゼロにするビルのこと
*2=生長の家独得の座禅的瞑想法
*3=本誌の姉妹誌
*4=生長の家の男性の集まり
*5=生長の家の教えを学ぶ集会

無駄に電気を使うことがなくなりました
中村龍治さんの話「エコキュートで、残量を考えながらお湯を使うのと同様、蓄電池も、残量を考えながら電気を使うのか、充電するのかを決めています。ですから、無駄に電気を使うことがなくなりました。わが家では、朝4時に起床したら、まず母屋と治療室のポットのお湯を沸(わ)かし、炊飯器でご飯を炊いて、冬だったらコタツを入れてという具合いに蓄電池を使い、午前10時から夜までは充電しています。太陽光発電と蓄電池との連携で、効率的にエネルギーが利用できるおかげで、電力会社から購入する電気はごくわずかで、逆に太陽光発電による売電量が増えて助かっています」

95歳ながらかくしゃくとした義母のスマ子さんと。「主人は母にマッサージをしてあげたり、実の母親のように優しくしてくれます」とすみさん

95歳ながらかくしゃくとした義母のスマ子さんと。「主人は母にマッサージをしてあげたり、実の母親のように優しくしてくれます」とすみさん