すずき農園は、静岡県西部に広がる三方原(みかたはら)台地で、可能な限り人間の手を加えず、生物多様性がつくり出す調和を大切にした野菜作りを行っている。無農薬・無化学肥料で育った野菜は生命力に溢れ、力強い香りと味わいがある。景観が悪くなるだけでなく、微生物の棲家を奪うビニールマルチは一切使用せず、自然と共生した持続可能な農業を目指している。

すずき農園 │静岡県浜松市 すずき農園の畑で、実ったスナップエンドウを手にする園主の鈴木重文さん 取材/原口真吾(本誌) 写真/堀 隆弘

すずき農園 │静岡県浜松市
すずき農園の畑で、実ったスナップエンドウを手にする園主の鈴木重文さん
取材/原口真吾(本誌) 写真/堀 隆弘

 すずき農園の大きな特徴は、できるだけ人間が干渉しない、気候風土に逆らわないといった“自然体”の野菜作りをしていることだ。人間の都合と利益に合わせた農薬や化学肥料、除草剤を使用しないのはもちろん、肥料となる発酵鶏糞や、牡蠣殻石灰も、野菜の生育によって消費された土壌の栄養分を補う程度で、ほとんど使用しない。

 さらに、野菜をより自然に近い環境で育てるため、定植後は雨が頼りだが、浜松市では、例年7月中旬から9月初旬頃まで、ほとんど雨が降らないことも珍しくない。そのため、せっかく育っていた野菜が枯れてしまうこともあるが、園主の鈴木重文さんはこう語る。

上:日を浴びて、力強く伸び始めたイタリアンパプリカの苗/下:レタスなどの野菜だけではない、さまざまな植物と生物が共存、共栄している農園

上:日を浴びて、力強く伸び始めたイタリアンパプリカの苗/下:レタスなどの野菜だけではない、さまざまな植物と生物が共存、共栄している農園

「それも自然の営みの一つなんです。野菜を育てるのは、なんと言っても“自然の力”によるものですから、野菜の生長が遅くなっても、たくさん収穫できなくても、自然に逆らわず、自然と共存、共栄ができるような野菜作りをしています」

 こうした環境によって、野菜本来の生命力が引き出され、香り高く、味わい深い、すずき農園ならではの生命力に富んだ野菜が育つ。

 収穫した野菜は、個人の希望者に定期的に送ったり、東京や愛知県のレストランに直送したりしている他、地元の食品店で販売している。

 適度に残された雑草を隠れ家にさまざまな生物が棲息し、多様性が織りなす調和の中で野菜が育つすずき農園では、景観が悪くなるだけでなく、外界と遮断されることで、生物の棲家を奪うビニールマルチを一切使用していない。有機栽培や自然農法などでも一般的に使われているものだが、使用後に大量の産業廃棄物となり、地球環境に負荷をかけている現状があるからだ。

 持続可能な農業を展開していくためには、多様な生物が共存する環境の中で野菜を育てることが極めて大切だと鈴木さんは強調する。

「私が確認しただけでも、農園の畑には、300種類以上の虫が棲息し、それぞれ役割を持って、それぞれに生命を営んでいます。自然と調和した野菜作りを通して、生物多様性の大切さ、食物の大切さを伝えていきたいと思っています」

問い合わせ先
https://organicfarmsuzuki.wixsite.com/organic-farm-suzuki
TEL:090-1065-2127