菊地伸一(きくち・しんいち)さん│68歳│山形県寒河江市 取材/久門遥香(本誌) 写真/堀 隆弘 「墨の香りや紙の手触りなど、書道を通してさまざまな感覚が磨かれます」と菊地さん

菊地伸一(きくち・しんいち)さん│68歳│山形県寒河江市
取材/久門遥香(本誌) 写真/堀 隆弘
「墨の香りや紙の手触りなど、書道を通してさまざまな感覚が磨かれます」と菊地さん

 額に表装した、さまざまな書の作品が床の間に飾られた和室で、菊地伸一さんは、机の前に正座し、気持ちを集中させるように墨を磨(す)る。筆にたっぷりと墨汁を含ませて筆先を整えると、色紙に勢いよく「愛」の一字を書いた。

江戸時代の僧侶、良寛の詩を書いた作品

江戸時代の僧侶、良寛の詩を書いた作品

「つけ、とめ、はらいなどといった基本を守るのはもちろんですが、自由にのびのびと書くことを大事にしています。力まず、そのままの心で筆を運ぶと、自然に自分なりの表現が生まれます」

 もともと書道が好きで、大学時代は書道クラブで活動していたが、本格的に学ぶようになったのは昭和52年頃。大学卒業後、小学校教諭となった菊地さんは、授業で毛筆の指導をするため、「きちんと学んで技術を磨(みが)きたい」と書道塾に通って習い始めた。

 昇級試験、書道展への出品などを通して研鑽(けんさん)に励み、昭和55年に、師範の資格を取得した。

 長年、書に親しんできた菊地さんにとって、今や書道は“生活の一部”。朝起きるとすぐ神想観(*1)を行い、その後、筆を執(と)るのが日課という。

「朝の静かな時間に、書と向き合うことで心が落ち着き、いい気分で一日をスタートできるんです。他にも油絵やフルートなどの趣味も持っているんですが、一番の癒(いや)しはやはり書道ですね」

 生長の家の教えに触れたのは、昭和63年頃、職場の先輩から誘われ、生長の家の講演会に参加したのがきっかけだった。その頃、生徒の指導の仕方に悩み、自信をなくしていた菊地さんは、「子供に内在する神性(しんせい)を認め、言葉の力でそれを引き出す」という生長の家の教育法を知り、「こんな素晴らしい教えがあったのか」と感銘を受けた。

「『子供は皆、そのままで素晴らしい神の子』と信じて接すると、それに応えるように、子供たちが私を慕(した)ってくれるようになりました」

 8年前、60歳で定年退職した後は、生命学園(*2)の運営や相愛会(*3)の活動に励む一方、妻の明子さんが自宅で開く、小学生を対象とした英語塾で、塾生の希望者に書道を教えている。教員の経験を生かした、長所を褒(ほ)めて伸ばす指導で、子供たちから喜ばれているという。

「肩肘(かたひじ)張らず、ゆったりとした心で書を楽しむのが私のモットーですから、子供たちにも楽しく教えるよう心掛けています。明るく、豊かな気持ちでいると、それが書に表れますからね」

*1=生長の家独得の座禅的瞑想法
*2=幼児や小学児童を対象にした生長の家の学びの場
*3=生長の家の男性の組織