齊藤健一(さいとう・けんいち)さん│67歳│長野県 取材/久門遥香(本誌) 写真/堀 隆弘 「絵画や書道など色々な趣味に挑戦してきましたが、仏像彫刻は心が癒やされて、自分に合っていると思います」と齊藤さん

齊藤健一(さいとう・けんいち)さん│67歳│長野県 取材/久門遥香(本誌) 写真/堀 隆弘
「絵画や書道など色々な趣味に挑戦してきましたが、仏像彫刻は心が癒やされて、自分に合っていると思います」と齊藤さん

 南アルプスと中央アルプスに挟まれた南信地方で、農業を営む齊藤健一さんは、余暇(よか)の趣味として始めた木彫りの仏像彫刻に魅(み)せられ、日々創作に打ち込んでいる。

 農業用倉庫の一角に作られた小部屋の棚には、これまでに制作した観音菩薩(かんのんぼさつ)や大日如来(だいにちにょらい)、不動明王(ふどうみょうおう)などの仏像がずらりと並ぶ。どの仏像も、どこか人間味があり、親しみを覚える表情をしている。

「本や写真を基に、下図(したず)を書いて彫っていくんですが、一つとして同じものにならないのが面白いですね。『仏像の顔や形は彫る人に似る』とよく言われますから、穏やかな表情が出せたら嬉しいです」

 木彫りを始めたのは62歳の時。38年間勤めた伊那市役所を定年退職後、楽しめる趣味を探していたところ、中学校の同級生から彫刻教室に誘われた。元々彫刻に興味があったこともあり、すぐに夢中になった。

 木の皿や簡単な模様のレリーフを彫ることから始め、2年目からはレベルアップを目指して、仏像の創作に取り組むようになった。すると、技術が向上しただけでなく、精神的にも大きな影響を受けたという。

「集中して彫っていると、仏様の表情や手のポーズから、何か語りかけられているように感じる瞬間があります」

「集中して彫っていると、仏様の表情や手のポーズから、何か語りかけられているように感じる瞬間があります」

「木の温(ぬく)もりを感じながら仏像を彫っていると、“仏様のいのちに触れている”という気がして、心が安らぐんです。一塊(いっかい)の木から少しずつ仏様の姿が現れ、仕上がった時には、『やっとお会いできた』と感動します」

 大学時代に、父親の勧めで富士河口湖練成道場(*1)の練成会(*2)に参加して、生長の家の教えに触れていたが、自ら求めて教えを学び始めたのは40代になってから。多忙な市役所の仕事のストレスで心身に不調を来(きた)していた時、ある雑誌で生長の家が紹介されているのを知り、大学時代のことを思い出したという。

「この際、生長の家の教えを学んでみようと思い立って、『生命の實相』(生長の家創始者・谷口雅春著、全40巻。日本教文社刊)などを読むようになったんです。自分の力で、心身の不調を治さなければと思っていたのは間違いだった。人間は既に完全円満な神の子なんだと思えるようになって、心が楽になりました」

 いつしか心も身体(からだ)も健康を取り戻し、60歳の定年まで無事勤め上げた齊藤さんは、農業の傍(かたわ)ら、相愛会(*3)の一員として生長の家の活動と、彫刻に勤(いそ)しむ、充実した毎日を送っている。
「なんの音も聞こえない、静寂(せいじゃく)に包まれた小部屋で、無心に手を動かし、仏像を彫っていると、神想観(*4)をしている時のように心が澄(す)んで、仏様と自分が一体になったような気持ちになります。そんな心境を、仏像に表すことができるよう精進(しょうじん)したいですね」

これまでに制作した右から観音菩薩、大日如来、不動明王などの仏像。「寺社や博物館を訪れ、優れた作品を見ることも大事にしています」

これまでに制作した右から観音菩薩、大日如来、不動明王などの仏像。「寺社や博物館を訪れ、優れた作品を見ることも大事にしています」

*1=山梨県南都留郡富士河口湖町にある生長の家の施設
*2=合宿形式で生長の家の教えを学び、実践するつどい 
*3=生長の家の男性の集まり
*4=生長の家独得の座禅的瞑想法