亀井光久(かめい・みつひさ)さん│69歳│宮崎県小林市 真剣な眼差しでキャンバスに向かう亀井さん。「絵を描くことで心が癒やされ、仕事の疲れもなくなります」 取材/磯部和寛(本誌) 写真/近藤陽介

亀井光久(かめい・みつひさ)さん│69歳│宮崎県小林市
真剣な眼差しでキャンバスに向かう亀井さん。「絵を描くことで心が癒やされ、仕事の疲れもなくなります」
取材/磯部和寛(本誌) 写真/近藤陽介

 亀井光久さんは、地元の宮崎県小林市や、県内の美しい風景をモチーフにした油絵を描いている。緑の山や森を背にした湖、桜咲く古城の門、古い街並みを縫って流れる川など、何気ない一コマを切り取った作品が多い。

「実際に訪れて、心に残った風景を写真に撮り、それを元に絵を制作しています。特に表現が難しく、奥深い水に強く惹かれるので、川や湖などを好んで描いています」

旅行で訪れた函館の町並みを描いた作品

旅行で訪れた函館の町並みを描いた作品

 子どもの頃から絵を描くことが好きだった亀井さんが、水彩画を描き始めたのは、40歳を過ぎた頃。二男一女の子供たちの姿を残したいと思ったのがきっかけだった。ところが、しばらく経って、2歳の次男が小児喘息の発作を起こして亡くなった。

「本当に辛い気持ちでしたが、絵を描いている時だけは、悲しみを忘れることができたので、それまで以上に絵に没頭するようになりました。続けるうちに、油彩を使って、もっと本格的に風景画を描いてみたいと思うようになったんです」

 早速、書店で油絵の入門書を購入して風景画を描き始めた。独学だったので最初は拙かった絵も、本を熟読して奥行きの描き方などを学ぶうちに上達し、次第に油絵にのめり込んでいった。

亀井さんが廃材を利用して作った花器や灯篭などの竹細工

亀井さんが廃材を利用して作った花器や灯篭などの竹細工

「絵を描くことだけでなく、『人間のいのちは永遠生き通し』という生長の家の教えにも救われました。仏前で聖経(*1)を読み、次男の供養をすると心が安らぎました」

 土木工事や造園を手がける会社に勤めていた亀井さんは、20代の頃、連日の残業などによる過労とストレスから胃腸を壊し、不眠にも悩まされていた。そんな時、知人から勧められて参加した誌友会(*2)で生長の家の教えに触れたのが、健康を回復する契機になったという。

「心に思い描いたことが実現するという『心の法則(*3)』を知って感動しました。それから、いつも心を明るく保ち、前向きに生きるように努めると、2、3年ですっかり元気になることができたんです」

 9年前、約40年勤めた会社を定年退職し、現在は、シルバー人材センターから依頼される庭木の手入れなどの仕事を請け負い、長年培った造園の腕を振るっている。

「剪定して、きれいに形が整った植木を見ると、絵が美しく描けた時と同じような満足感を覚えます。心に留まった宮崎の風景を絵に表現することが、生まれ育った故郷へのささやかな恩返しになると思っています」

 穏やかにそう言いながら、亀井さんは、手作りしたイーゼルに載せたキャンバスに絵筆を走らせた。

*1=生長の家のお経の総称
*2=生長の家の教えを学ぶ小集会
*3=物質界に法則があるように、心にも法則がある。心で想うことは、善いことでも悪いことでも、それが形となって現れてくるという法則