AHさん 東京都江東区・30歳・会社員 取材●長谷部匡彦(本誌)撮影●遠藤昭彦

AHさん 東京都・30歳・会社員
取材●長谷部匡彦(本誌)撮影●遠藤昭彦

学生時代、「試験に合格したい」といった希望を叶(かな)えるために、生長の家独得の座禅的瞑想法である神想観を実修していた。いま、社会人となって、仕事に行き詰まったときなどに神想観をするようになり、瞑想とは「問題に振り回されない、本来の自分を取りもどすための時間」だと気づいた。

 AHさんの一日は、午前5時からの神想観の実修から始まる。都内の人材紹介会社に勤め、転職希望者の再就職をサポートする仕事をしているAさんは、神想観の中で転職希望者の幸せも祈っている。

「自分の紹介した人が、再就職先で活躍している姿を思い描くようにしています」

 転職希望者は、職場の人間関係の悩みなどを抱えていることもあり、必ずしも前向きな気持ちで転職を希望しているとは限らない。そんな相手の固まった心をほぐすために、話を聞いて前向きな言葉で勇気づけるのも仕事の一つという。

 人材紹介会社では、転職希望者が紹介先の企業に就職してはじめて成果となるが、Aさんは自分の成績にこだわらず、再就職が成功することを祈っている。そんな対応が口コミで広がり、転職した人から、転職希望者の紹介を受けるようになり、成績は右肩上がりで昇進も果たしたという。

「神想観を深めていくうちに、身の回りで起きる悪いと思えるようなことも、じつはそれが良くなるきかっけの一歩なのだと思えるようになり、一喜一憂(いっきいちゆう)しなくなりました」 

夢を叶える神想観

 沖縄県で生まれ育ったAさんは、生長の家信徒の母親に連れられ、幼い頃から生命学園(*1)に通い、小学生になると練成会(*2)に参加するようになった。そこで、「人間は神の子で、無限の力がある」と教えられ、神想観の実修法も学んだ。

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 中学時代、高校受験をめざしていた頃に、母親から「神想観の中で、希望がすでに実現したすがたを描いて祈ると叶えられる」と教えられた。

「第一志望の進学校の制服を着ている自分の姿を思い描き、『すでに高校に受かりました。ありがとうございます』と、神想観のなかで祈るようになりました」

 試験当日は、不安もなく落ち着いて試験を受けることができ、見事第一志望の高校に合格することができた。

 しかし高校に入ってからは、神想観をする習慣から遠ざかったためか、東京の国立大学を目指して受験に臨(のぞ)んだものの合格できず、浪人して地元の予備校に通いはじめた。

 そんな8月に上京し、早稲田大学に通っていた友達と会ったときに、個性豊かな早稲田大学の学生たちの姿に魅力を感じ、志望大学を国立大学から早稲田大学に変えることにした。

 受験まで半年を切った段階での志望校変更に、周りからは「絶対無理、あきらめた方がいい」と言われたが、神想観を続けて高校受験が上手(うま)くいったときのことを思い出し、勉強を始める前と終わった後、寝る前に神想観をするようになった。しかし、なかなかその効果は現れず、受験直前に受けた模擬試験でも合格判定は芳(かんば)しくなかったという。

「それでも入試の当日、試験会場にいる人たちはライバルではなく、一緒に入る仲間だと思えて不思議と落ち着いていました。また試験問題は、似たような問題をやった記憶が残っていて気持ちに余裕があり、合格することができました」

 一番大事な時に、神想観を続けた成果が出せたと、Aさんは振り返る。

自分が出せなくなる

 平成17年に早稲田大学英文科に入学したAさんは、大学3年生の時に1年間休学した。その間、アメリカ・シアトルにあるベルビュー大学で学びながら、現地のIT関連企業で、インターンとして働ける制度を利用して留学。帰国後、早稲田大学に復学し、就職活動では留学の経験をアピールして、大手ITコンサルティング企業に就職した。

 与えられた仕事は、大企業向けのITコンサルティングを、プロジェクトを組んで行うもので、多忙を極め、帰宅が深夜になることもしばしばだった。

「さらに上司は、社内でも厳しいことで評判の女性で、常に緊張した状態が続きました。学生までは努力すればなんとかなっていたんですが、イレギュラーな仕事には対応しきれなくて、上司から叱られることがたびたびありました」

 そんな状況を脱したくて神想観を実修するようになったが、学生時代のようには上手くいかなかった。やがて同僚といることさえ苦痛で、昼食は一人で食べるようになり、よく寝られなくなった。

 それが半年間ほど続き、暗い気持ちをなんとか変えたいという思いから、朝の通勤電車の中で、生長の家の本を読み始めた。

今、あることに感謝して

「あるとき、『あらゆる人間の不幸は、当り前で喜べない為に起るものであることを知れ。当り前で喜べるようになったとき、その人の一切の不幸は拭(ぬぐ)いとられる』という、『自然流通(じねんるつう)の神示(*3)』の一節を読んで、悪い状況を変えたいと思いながら神想観をしていたのは、間違っていたと思ったんです。困った状況を強く思い描いていたから、逆にその状況を呼び寄せていたんですね。神が創造された本当にある世界を、心の眼で観る神想観ではなかったんです」

 自分を振り返ってみると、いつも暗い表情をし、上司からいろいろと指導されても苦痛に感じるだけで、少しも感謝していなかったことに気付いた。

「生長の家の本をいつも携帯して、時間があれば読んでいます」

「生長の家の本をいつも携帯して、時間があれば読んでいます」

「すぐに心から納得できたわけではないのですが、神想観の中で、上司は私の能力を磨いてくださる、ありがたい存在なのだと、祈り始めました」

 3カ月ほどすると、上司に対する感謝の気持ちが芽生えてきた。やがて明るく前向きな気持ちで仕事に取り組めるようになり、これまでの状況が嘘のように、上司との関係が改善された。

 仕事が一段落ついた頃、ITコンサルティングで経験を積み、自らの希望する職場へと転職していく先輩たちの姿に刺激を受け、4年前に現在の人材紹介会社に転職した。

 そんなAさんが、神想観を習慣化するようになって気付いたことがある。

「神想観は『当り前の自分に戻るためのもの』だと思えるようになりました。『そのままのありがたさ』を自覚する瞑想に変わると、何か問題が起きても、それに左右されない自分があるということが、わかるようになったんです」

*1 幼児や小学児童のための、生長の家の学びの場
*2 合宿して教えを学び、実践する集い
*3 生長の家創始者・谷口雅春先生に下された言葉