KSさんは、長男(4歳)と、今年(2018)12月に出産予定の赤ちゃんのために、木製の玩具などを手作りしている。作っている最中は思わず夢中になり、手先を動かすことが楽しいと話すKさんの穏やかな眼差しからは、長男、そして生まれてくる赤ちゃんへの深い愛情が伝わってくる。

KSさん さいたま市・37歳 取材●中村 聖(本誌)撮影●遠藤昭彦

KSさん さいたま市・37歳
取材●中村 聖(本誌)撮影●遠藤昭彦

 さいたま市にある、Kさんの自宅を訪れると、長男が、無邪気な笑顔で出迎えてくれた。

 今年8月で4歳になった長男は、カメラの前でも元気いっぱいの表情をたくさん振りまいてくれる。Kさんが手作りの楽しさを知ったのは、そんな長男の出産準備をしているときだった。

「私を布おむつで育てたと、母がいつも楽しげに話しているのを聞いていたので、いらなくなった浴衣を祖母からもらい、私も布おむつを自分で縫ってみようと思ったんです。それまで、子育てとは縁のない生活を送っていたせいもあって、いま、ほとんどの人が紙おむつを使っていることを知らなかったんですが(笑)、作った布おむつを実際に子どもにしてあげたときは、心から幸せを感じましたね。そこから手作りへの興味が広がっていったんです」

「これ、作ってくれたんだよね」

 普段から、家族で緑の多い公園に出かけたり、近所の田んぼに蛙を見つけにいったりと、自然との触れ合いを大切にしているKさんは、子どもの玩具には、なるべく自然素材のものを与えたいと考えていたという。

「子どもと一緒に遊んでいるうちに、積み木などの木製の玩具に興味を持つようになりました。生長の家で、自然と人間が調和することの大切さを学んでいたこともあって、子どもが喜び、環境保護にもつながればと、自分で木の玩具を作ってみようと思ったんです。木製のものは修理がきくので、子どもの成長や興味に合わせて作り変えることもできますし、幸い、主人が桐箪笥(きりだんす)を修理する仕事をしていて、専門家の立場から、強度の高め方などのアドバイスもしてもらえたので、心強かったですね」

ボールを転がして遊ぶ、手作りの木製の玩具

ボールを転がして遊ぶ、手作りの木製の玩具

 実際にのこぎりなどを使い、木製の玩具を作ってみると、楽しさと同時に、難しさも強く実感した。

「作っている最中は、『もっとこうした方が喜ぶかな』とか、子どもの好みなどを色々考えながら取り組んでいます。子どもが口に入れても安全な塗料がなかなか見つからなかったり、木工用ボンドを乾かしながら、数日かけて作ったりと大変な面もありますが、子どもが喜んで遊んでくれているのを見ると、作って良かったなって思いますね。2年ほど前に、息子のために木製の椅子を主人と一緒に作ったことがありましたが、息子は印象に残っていたみたいで、『これ、作ってくれたんだよね』って、よく言ってくれるんです。成長しても、覚えていてくれるのがうれしいですね」

 自分で手作りすることは、“丁寧な暮らし”につながるとともに、ものを大切にする気持ちを、子どもの心に育むことができるのでは、とKさんは話す。

「掃除をしているときに、長男が木の端材を見つけてきて、これで扇風機が作りたいと言うので、一緒にのこぎりを使いながら作ったんですが、ものを作ることに興味を持ってくれているのがありがたいですね。木は温もりがあり、匂いもいいので、五感を高める上でも良いと感じていますが、子どもはミニカーなどの既製品の玩具も好きなので、あまり親の思いだけを押し付けるのではなく、バランスを取りながら、子どもの感受性を伸ばしていってあげたいなと思っています」

そのままの自分の素晴らしさに気づいて

 Kさんは、生長の家を信仰する両親のもとに生まれ、幼い頃から、教えに触れていた。

「『人間・神の子』という教えが、最初はよく理解できませんでした。また、青少年練成会(*1)などへ参加するたびに、繰り返し『親への感謝が大切』だと教えられました。でも、なぜ感謝しなければいけないのかが分からなかったので、両親に対して感謝の気持ちを持つことが、なかなかできなかったんです」

 大学を卒業後、医療機関に勤務したが、上司から厳しい叱責を受ける日々が続いた。

「精神的な負担が多く、仕事を続けるべきか悩んだことで、これは教えを学ぶ機会が与えられたのだと思いました。それで、24歳の時に仕事を辞めて、生長の家宇治別格本山(*2)の練成会に参加した際、講師から『両親への感謝というのは、現象に現れたすがたの奥にある実相(*3)に感謝すること』と教わりました。その後に受けた浄心行(*4)で、両親と私の関係をじっくり見つめ直したときに、今までどれほど愛されてきたのかが実感され、世界が一変しました」

 その1年後には、さらに教えを学ぶため、宇治別格本山で研修生となった。

「それまで、人間は不完全なものだからこそ、努力をして自分を成長させていかなければだめなんだと思い、いつも戦々恐々としていたんです。しかし、研修を通して、『人間は本来、そのままで素晴らしい神の子』なんだから、すべては良くなるしかないんだと分かったときに、初めて心がふっと軽くなり、生きているのが楽になりました」

 Kさんの心境が大きく変わった頃、宇治の練成会に参加していた、ご主人との出会いが待っていた。

「練成会の自己紹介で、『この人と結婚するんじゃないか』と直感的に思ったんです。主人は物静かな人ですが、『何があっても絶対大丈夫』と言って、いつも、ドンと構えてくれているので、すごく安心感があります」

自然豊かな世界を未来へ

 長男、そして12月に生まれる赤ちゃんのために、これからも楽しみながら手作りの玩具を作っていきたい、とKさんは話す。

「木工のほかに、子どもの洋服なども、余っている布地を使って作ったこともありますが、いつも新鮮な驚きや発見があり、作り上げたときには、達成感で心が満たされます。ドイツでは、木の玩具を何世代にもわたって引き継いでいくそうですが、そうした文化が、日本でも育まれていけばいいなと思いますね。手作りを始めたことで、環境に負荷をかけないものを選び、無駄なものは買わないなど、買い物に対する意識も変わりました。子どもたちが大きくなった頃の世界が、豊かな自然にあふれた、平和な世の中であって欲しいと願っています」

長男お気に入りの、ままごとセット

長男お気に入りの、ままごとセット

*1 合宿して教えを学び、実践するつどい
*2 京都府宇治市にある生長の家の施設。宝蔵神社や練成道場などがある
*3 神が創られたままの完全円満な世界
*4 過去に抱いた悪感情や悪想念を紙に書き、生長の家のお経『甘露の法雨』の読誦の中で、その紙を焼却し、心を浄める行