内田雅史(うちだ・まさふみ)さん 名古屋市中川区・25歳・会社員 取材●長谷部匡彦(本誌) 撮影●永谷正樹

内田雅史(うちだ・まさふみ)さん
名古屋市中川区・25歳・会社員
取材●長谷部匡彦(本誌)
撮影●永谷正樹

 愛知県のSNI自転車部(*1)のメンバーは、ミニイベントとして、平成30年7月16日に岐阜県のJR下呂駅まで輪行(*2)で移動し、下呂温泉周辺のポタリング(*3)を企画していた。だが、6月28日から7月8日にかけて、西日本地域を中心に記録的な集中豪雨が発生し、各地に甚大な被害をもたらした。そのため急遽、ミニイベントは中止となり、同自転車部のメンバーで、生長の家青年会の内田雅史さんは、仲間と共にボランティア活動のため被災地へと向かった。

 昨年(2018)6月28日から7月8日にかけて、西日本を中心に発生した記録的な集中豪雨で、岐阜県の一部地域でも、総雨量が1,000ミリを超えた。愛知県のSNI自転車部員が中心となってポタリングを企画していた下呂市でも、8日未明には1時間に108ミリを記録する豪雨が発生し、その被害状況が報道されるようになった。

 そのため、16日に予定していたポタリングは無理と判断し、代わりに青年会として被災地でのボランティア活動に参加することになった。

「じつは僕らの中には、災害ボランティアの経験者はいたのですが、被災直後にボランティア活動をした人はいなかったんです。日頃から、人のために役に立ちたいという思いで色々な活動をしていましたが、被災直後の地域は危険が伴うと聞いていたので、すぐには決められませんでした」

 最終的にボランティア活動に行くことを決めたのは、生長の家青年会ヴィジョン(*4)に掲げられている「他者に愛を与える実際活動に積極的に取り組む」という方針に後押しされたから、という。

岐阜県関市で、土砂を運び出す内田さん

岐阜県関市で、土砂を運び出す内田さん

「被災地域は混乱していて、被災した方々に余分な負担をかけないためにも、ボランティア活動は自己責任、自己完結で行うことが基本だと聞いていました。そんなとき、普段から岐阜県の魅力をフェイスブックで発信していた方が、すぐに岐阜県でボランティア活動に入られたのを知って、その方に被災地の状況や、ボランティアに必要な道具などをフェイスブック上で教えてもらい、仲間とネットを通じて何度もやり取りしながら準備を進めました」

 愛知教区青年会の委員長である内田さんは、責任感から、仲間の安全が確保できるかを自分の目で確かめるため、予定日の前日である15日に、先に被災地に入ることにした。青年会の仲間にその旨を伝えると、9人の協力者が集まった。

人の役に立ちたい

 7月15日、名古屋市内から自動車2台に分乗して岐阜県関市に入ると、市内を流れる津保川(つぼがわ)が堤防を越えて氾濫し、広範囲に土砂が住宅街に流入していた。また川岸の木々には、ビニールハウスの残骸などが引っかかっていた。

「ボランティアセンターに行くと、高齢者が住んでいる住宅に流れ込んだ土砂を掻き出す作業を割り当てられました。みんなで協力してバケツリレーで土砂を外へ運び出しましたが、土砂には割れた窓ガラスなどが混ざっていて危険を感じました。重労働なので、被災された方達だけでは出来ない作業だと思いましたね。復旧には多くの人々の協力が必要だと実感しました」  

 関市での日帰りのボランティア活動を終えた後、当初は県外からのボランティアを受け入れていなかった下呂市で人手が足りていないことを知り、翌日16日の活動を下呂市で行うことに決めた。

 下呂市では、愛知教区と富山教区の生長の家青年会の仲間17人に加え、生長の家国際本部の職員2人や、フェイスブックで被災状況を教えてくれた人も合流し、総勢21人でボランティア活動を行った。

 下呂市内は、関市ほど広範囲にわたって被災してはいなかったものの、所々で土砂が側溝や家屋に入り込んでいた。内田さんたちは、側溝に積もった土砂を掻き出すグループと、学校の校庭に持ち込まれた災害ゴミを分別するグループ、川沿いのマス釣り施設に流入した土砂を撤去するグループの3つに分れて作業を行った。

「ボランティアに来ている人たちは、それぞれ自分の信念に基づいて行動されていて素晴らしいと思いました。そうした人々に、『人間と自然は本来一つである』という生長の家の教えを知ってもらい、地球温暖化の原因が、人間の活動によって排出される二酸化炭素にあり、経済優先で大量消費、大量廃棄のライフスタイルから、二酸化炭素をあまり出さない低炭素なライフスタイルへと転換する必要がある、ということを伝えることができればと思いました」

「私たちのライフスタイルを変えていくことが重要なんです」

「私たちのライフスタイルを変えていくことが重要なんです」

 下呂市でのボランティア活動を終えた内田さんたちは、土砂などで汚れた体を洗うために温泉に行った。その際、一緒に活動した生長の家の信徒ではない人たちに、生長の家が取り組んでいることについて話をする機会があった。

「今回のボランティア活動は、低炭素のライフスタイルを実践する自転車によるイベントの予定を切り替えたことを伝えました。また、生長の家では、動物や植物、鉱物、エネルギーもすべて神の生命、仏の生命として拝むことや、畜産には多くの飼料用穀物が必要なので、世界の飢餓問題を解決するためにも肉食を控えたり、二酸化炭素を排出せず、環境に優しい自転車の活用などを進めていることを話しました。彼らは共感をしてくれていたので、心に届いたと思います」

広島でのボランティア活動

 岐阜県でのボランティア活動を終えた内田さんは、青年会の仲間達の声を受けて、「もっとボランティア活動を継続しなければ」という思いを強くした。

 そんなとき、生長の家広島教区の寺川昌志教化部長(*5)のフェイスブックの投稿で、「平成30年7月豪雨」によって被災した広島県の厳しい状況を知った。さらに、ボランティア活動に参加する信徒への宿泊所として、広島県教化部(*6)を提供するという投稿を読み、内田さんは、次のボランティア活動を広島で行うことに決めた。

 8月13日に、内田さんを含めて7人の生長の家の信徒が、愛知県から広島県に向かった。新幹線で広島駅まで行き、広島県教化部の送迎車で、海沿いの国道31号線を南南東に呉市方面に走ると、途中から山側の斜面がところどころ崩れ落ち、大きな石が散乱する光景が現れた。

 目的地である被災した信徒宅近くの、幅の広い水路は完全に土砂で覆われ、住宅の玄関前は扉の半分位まで土砂で埋もれて、住宅内の浸水跡は、場所によって1階部分の天井近くに残っていた。

自然災害の一言で片付けてはいけない

「岐阜県の時とは比較にならないほどの惨状を目の当たりにして、頭に浮かんだのは、この災害は“人災”なんだということでした。生長の家総裁・谷口雅宣先生が『平成30年7月豪雨』の直後に、ブログ『唐松模様』のなかで、『人間の活動による地球温暖化の影響であって、“自然災害”というよりは、年々“人災”の要素が濃くなっている。そして、この“人災”がどこでも起きうる可能性がある』といったことを、警告されていたからです。自分が住む愛知県で同じことが起ったら、どうなるのだろうと想像していました」

被災した家屋の床下には、約30センチの土砂が堆積していた。広島県坂町で

被災した家屋の床下には、約30センチの土砂が堆積していた。広島県坂町で

 内田さんたちは、広島県坂町にある被災した信徒宅と付近の2軒で、グループ毎に別れてボランティア活動を行った。気温36度を超え、屋内でも長時間の作業は出来ず、熱中症にならないよう15分作業したら10分間休むというローテーションが組まれた。それでも体調が悪くなった場合には、寺川教化部長の判断で軽作業に切り替えることになった。

 13日から14日のボランティア活動には、愛知教区以外からも、生長の家国際本部から4人、富山教区から1人、大阪教区から6人、地元広島教区から9人が参加した。また広島県教化部の職員や、広島教区の信徒らから多大な支援があった。

 この日程以外にも、生長の家国際本部をはじめ、生長の家総本山(*7)、生長の家宇治別格本山(*8)の職員や福岡教区、大阪教区、山口教区、東京第一教区、千葉教区、そして地元広島教区からの多数の信徒が、ボランティア活動に参加した。

地域のつながりを広げるために

 広島県でのボランティア活動を通して、内田さんは新たな視点が加わったと言う。

「日頃のライフスタイルを変えていくだけでなく、これからは防災に対しても意識を高めなければいけないと感じました。防災の準備をするだけでなく、いかに周りの人たちと協力し合い、助け合うことができるかということです。そのためには、日頃からの地域での人間関係が大切なのだと思います。それと、電力を自給できるようになりたいですね。残念ながら私の自宅は高い建物に囲まれているので、太陽光発電パネルを設置しても、十分な発電が見込めないんですが、それでも手作りで簡単な太陽光発電パネルとバッテリー装置を設置する方法を模索中です。停電になったときに非常用電源として利用できれば、被災したときに周りの人たちとも、電気を分かち合えると思うんです」

 内田さんは、普段から人や事に対して丁寧に接することで、人とのつながりが広がり、自然と共生するための「低炭素のライフスタイルへの転換」の大切さを伝えていくことが出来ると、ひたむきな眼差しで語ってくれた。

*1 生長の家が行っているPBS(プロジェクト型組織)の一つ。他にSNIオーガニック菜園部、SNIクラフト俱楽部がある
*2 自転車を輪行袋に入れ、公共交通機関を利用し移動すること
*3 自転車による散策
*4 「自然と人間が共存する新たな文明」の構築にむけて、青年が「どのように行動すべきか」を明確に示したヴィジョンのこと
5 生長の家の各教区の責任者
6 生長の家の布教・伝道の拠点
7 長崎県西海市にある生長の家の施設。龍宮住吉本宮や練成道場などがある
8 京都府宇治市にある生長の家の施設。宝蔵神社や練成道場などがある