hidokei102_rupo_1 2018年6月10日に、栃木県との県境に近い福島県西郷村(にしごうむら)で、生長の家福島教区のSNI自転車部(*1)が中心となって、「西郷ソーラー発電所ヒルクライム(*2)」が行われた。ヒルクライムとは、タイムや順位を競い合うものだが、それに加えて、今回は特別な思いが込められている。

 生長の家では、「汝(なんじ)ら天地一切(てんちいっさい)のものと和解せよ」との教えに基づき、「大自然の恩恵に感謝し、山も川も草も木も鉱物もエネルギーもすべて神の生命(いのち)、仏の生命の現れである」と拝み、「神のいのちにおいてすべては一体」との自覚を深めながら、「人と自然との共生」をめざす運動を展開している。 

 東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故によって、被害を受けた福島県の震災復興支援と脱原発のため、生長の家国際本部では寄付を募り、2015年12月、福島県西郷村に「生長の家福島・西郷ソーラー発電所」を建設した。ソーラー発電は、原子力発電所のように生物にとって有害な放射性廃棄物を生み出さず、また石油・石炭などを利用した火力発電所のように二酸化炭素を排出せずに、太陽光からクリーンなエネルギーを得ることができる。そのため、地球温暖化対策の一つとして、原発や火力発電から、太陽光や風力などの自然エネルギーによる発電への切り替えが、世界で進んでいる。

 さらに生長の家では、二酸化炭素を排出せず、できるだけ自然を破壊しない低炭素のライフスタイルに転換するため、自転車の活用を呼びかけている。今回のイベントは、国道4号から県道沿いに発電所までの8キロ余りを、自転車で踏破(とうは)するというもので、自然の恵みへの感謝の思いが込められているのだ。

ライフスタイルの転換へ 願いを込めて

 当日は、弱い雨が降る生憎(あいにく)の天候にもかかわらず、ヒルクライムに出走したのは、福島県だけでなく栃木県からの参加者も含めて18人、その他に応援や運営に13人と、SNI自転車部事務局からの2人も加わり、合計33人が集まった。

 川上忠志郎・生長の家福島教区教化部長(*3)は、西郷ソーラー発電所ヒルクライムに集まった参加者らを前に、開催の思いをこう語る。

hidokei102_rupo_2「生長の家の西郷ソーラー発電所は、福島第一原発の事故の後、この地域では比較的早い時期に作られたソーラー発電所の一つとして、地元の方々にとっても復興のシンボルになりました。『脱原発』への願いが込められたこのソーラー発電所まで、神様から与えられた神性(しんせい)表現の道具である肉体を使い、二酸化炭素を排出しない自転車で登っていくことは、自然環境を守り、自然と共存するライフスタイルの実践(じっせん)の一つです。福島の素晴らしい自然を感じて、次の世代に豊かな自然を残すことの大切さを、楽しみながら実感して欲しいと思います」

日常と違う感覚

 スタート地点からゴールとなる西郷ソーラー発電所までは7.6キロ。低所から高所までの最大標高差は157メートルで、道路の両脇は、緑豊かな自然に囲まれている。SNI自転車部事務局の松井雅永さんは、スタート前の参加者に、ヒルクライムのルートの状態について説明した。

hidokei102_rupo_3「ゴールまでの道程(みちのり)には、緩やかな坂が多いですが、車幅が広く、車の往来も少ないので走りやすいですね。初めてヒルクライムをする人にとっては、とても走りごたえがあるルートだと思います。今日は雨に濡れて路面が滑りやすくなっています。割れたガラスの破片など、パンクの原因となる物が落ちていたりしますので、足元には気をつけて走ってください」

 開始時刻の11時になり、スタートの声を合図に参加者は一斉に走りだす。まずは200メートルほどの緩(ゆる)やかな坂道で、4人の青年たちが飛び出して加速していく。

 今回のヒルクライムに福島県から参加した管野(かんの)兄弟の、弟・大雅(たいが)さん(高校2年)は、バドミントン部に所属、毎日5キロの距離を自転車で通学し、体力には自信があると話す。

hidokei102_rupo_4「自転車でしか味わえない達成感があると思ったので、ヒルクライム前日の夜に参加することを決めました。最初はママチャリ(シティサイクル)で参加するつもりだったんですが、参加予定だった方から、クロスバイクを貸してもらいました。ペダルを漕(こ)ぐたびに、ママチャリでは得られない加速感やスピード感を味わいました。兄と走れたのも嬉しくて、特別な達成感を味わうことができました」(管野大雅さん)

 いつかお金を貯めて、スポーツタイプの自転車を買ってみたいと大雅さんは話す。

 兄の稜大(たかひろ)さん(専門学校生)は、じつはヒルクライムの数日前に、自転車が盗まれるというアクシデントがあった。

hidokei102_rupo_6「盗まれた翌日、父が『必ず見つかるから。人が多く来るような場所にあるかもしれない』と助言をしてくれたので、弟にも協力してもらって探し回っていたら、幸運にも、商業施設の駐輪場に乗り捨ててありました。どうしてもヒルクライムに参加したいと思っていたので、神様のお導きかなと思いました。普段から通学や出掛ける際に乗っている自転車で、無事に完走ができて良かったです」(管野稜大さん)
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 稜大さんは、雨の中の走行で路面の状態に気をつけて走るうちに、自分の意識が広がって、自分と路面が一体化したような不思議な感じがした、とも語ってくれた。

自然との距離が縮まる

 スタート地点から2キロほど進むと、また緩やかな登り坂が見え始め、道の両脇の木々が途切(とぎ)れてきた。その先には、緑の稲穂をたたえる田園風景が広がり、さらにその先には、山々の尾根があらわれてくる。

 栃木県から参加した三宅淳一さん(団体職員)は、ヒルクライムで味わった感動をこう話す。

hidokei102_rupo_8「普段から通勤で3キロほどの距離を自転車で走っていますが、雨の日に走ったのは久しぶりでした。その途中で霧雨(きりさめ)になったときには、丘の上や山の稜線(りょうせん)を霧がゆっくりと静かに登っていく景色が、とても幻想的で綺麗でした。冷たい雨に濡(ぬ)れながらも、走っている他の参加者との一体感で、心が温かくなりました」

 同じく、栃木県から参加した橋本知幸さん(会社員)は、メガネに水滴をしたたらせながら笑顔で語ってくれた。

hidokei102_rupo_9「普段、雨の日は傘をさしたり、車で移動したりするので、直接雨を感じることがありません。でも雨つぶの一滴(いってき)一滴を肌で感じると、人間の都合で考えるのではなく、そのままの自然を受け入れることも大切なのだと、実感しました。福島の美しい自然と同様、雨もまた豊かな自然の恵みの一部なのだと、自然との距離が縮まった気がしました」

hidokei102_rupo_10 日常生活のなかでは、雨の日は不快だと感じてしまうこともあるが、参加者らは、雨の中でしか感じられない自然を体感したことで、逆に新鮮な感覚が得られたと話す。

 ゴールへの道程では、雨脚が強くなったり霧雨になったりと、天候が刻々と変化していく。

ゴール地点では、地元のお米や野菜を使った食事が提供された

ゴール地点では、地元のお米や野菜を使った食事が提供された

 残り1キロを切った辺りで、T字路にぶつかり、左折して最後の下り坂に差しかかる。路面が雨に濡れているため、スリップしないようにゆっくりとブレーキを掛けて減速していく。やがて、西郷ソーラー発電所に設けられたゴール地点が現れた。

 ゴールした参加者は、皆、雨に濡れながらも満面の笑顔を浮かべ、達成した喜びがこちらにも伝わってくる。

 雨の中、行われたヒルクライムだったが、参加者同士の、さらには自然との一体感が深まった特別なイベントとなった。

輪行で行動範囲が広がる!

中根敏也 SNI自転車部事務局 愛知県出身。生長の家国際本部勤務。趣味はギターを弾いて歌うこと

中根敏也
SNI自転車部事務局
愛知県出身。生長の家国際本部勤務。趣味はギターを弾いて歌うこと

自転車を輪行袋に入れて運ぶ

自転車を輪行袋に入れて運ぶ

 自転車を輪行袋(りんこうぶくろ)に入れることで、電車などの公共交通機関を利用することができます。本来、自転車は徒歩よりも遠くまで行くことができ、小回りも利きますが、自宅から自転車で出かけた場合には、距離や時間の制約を受けてしまいます。でも、自転車を輪行袋に入れて電車で移動し、目的地に着いてから自転車に乗れば、自由度が格段に上がります。車で移動するよりも二酸化炭素の排出が少ないので、地球環境にもよい移動手段になります。また輪行をしていると、サイクリストや見知らぬ人ともコミュニケーションが生まれ、まるで心の壁が取り払われたように話が盛り上がります。今回のヒルクライムにも、山梨県北杜市から、福島県西白河郡までの約320キロを輪行で移動し、運営に参加しました。輪行は生活の楽しみを広げてくれます。

*1 SNI自転車部の「SNI」は、生長の家(Seicho-No-Ie)の略称
*2 自転車による登坂レースのこと
*3 生長の家の各教区の責任者