NKさんは大学4年生のとき、卒論と内定先の企業から与えられた課題をこなす忙しさから、睡眠障害(すいみんしょうがい)になった。それが原因で留年と内定取り消しが決まり、人生が真っ暗に。そんな自分自身を責めつづけていたが、生長の家の練成会(*1)に参加し、マイナスの感情が浄化(じょうか)されたとき、立ち直る意欲がわいてきた。

NKさん 大阪市鶴見区・25歳・会社員 取材●長谷部匡彦(本誌)撮影●中橋博文

NKさん
大阪市鶴見区・25歳・会社員
取材●長谷部匡彦(本誌)撮影●中橋博文

陰極は陽転する

 もともと明るく快活な性格だったというNさんだが、思春期の最中(さなか)の中学2年生頃から人間関係に悩むようになり、とくに女子生徒との接し方が分からなくなったと振り返る。

 平成20年に高校に進学すると、無理して派手な髪型でイメージチェンジをはかり、やんちゃなグループに入った。だが、根がまじめだったので徐々にグループから孤立し、同級生からも無視されるようになってしまった。

「そのときに、スクールカウンセリングを受けたのですが、状況があまり良くならなくて、学校をやめたいと母に話すと、『生長の家宇治別格本山(*2)の練成会に参加した後なら、好きにしなさい』と言われたんです」

 小学校の頃、生長の家の信徒である母親に連れられて小学生練成会に参加したことのあるNさんは、そこで「人間は神の子で、本来素晴らしい」という教えに触れていた。母親の勧めで参加した宇治別格本山の練成会で、もっとも印象に残ったのは、講師から聞いた「陰極は陽転する」という話だった。目の前に起った問題は、自分に何か大切なことを教えてくれていて、そのことに気づき、感謝して受け止められたときに問題は解決するというものだった。

「自分を良く見せようとしていたことや、周りから孤立してしまった自分を責めつづけていたのは間違いだったんだと、気がつきました。それで高校を続けようと決心したんです」

 高校2年生になると、自分をよく見せようとするのはやめて、そのままの自分を肯定しようと心がけた。すると、本来の快活な面が出てきて友達もできた。その体験から、心理カウンセリングに興味を持ったNさんは、大学では心理コースを選択した。

何かに気づくための「問題」

 平成27年、大学4年生になったNさんは、6月に老人介護施設のベンチャー企業から内定をもらい、その企業のインターン制度を利用して9月から働きはじめた。

 ところが、企業から指示されたレポートの課題と、大学の卒業論文の両方をこなそうとしているうちに心の余裕を失い、不安感がとれず、よく眠れなくなってしまった。さらに11月の頃には体調を崩して、ベッドから起き上がれなくなり、卒論が提出できなかった。翌年には留年が決まり、内定も取り消しになった。

「人生のレールから外(はず)れたという感覚に陥(おちい)って、将来の展望が見えなくなってしまったんです。声が出なくなって、過呼吸も起すようになりました。自殺願望を抱くようになり、外を歩いている時に、走っている車に飛び込みたいとふと思ったりしました」

 病院で精神科の診察を受けると、睡眠障害(すいみんしょうがい)と診断され、処方(しょほう)された睡眠薬でなんとか眠れるようになった。少しずつ生きる意欲が戻ってはきたものの、留年や内定取り消しの挫折(ざせつ)から立ち直れず、自身を責める気持ちが消えなかった。そこで心身ともに元気になりたいと思い、平成28年の3月に、再び宇治別格本山の練成会を受けることにした。

「職場までは、自転車で通勤してます」

「職場までは、自転車で通勤してます」

「練成会4日目の夜に、不意に他の参加者から話しかけられました。自分の苦しい胸のうちを話しているうちに、気づいたら号泣(ごうきゅう)していました。その方が『今回起ったことは、あなたにとっては良いことだった。明日行なわれる浄心行(じょうしんぎょう)(*3)で、自分のマイナスの想いのすべてを用紙に書いて燃やしたら、その想いは消えてしまう』と言ってくれたのが本当に嬉(うれ)しかったです」

 翌日の浄心行で、Nさんは、自分を責める気持ちを用紙に書き続けた。すると、なぜか母親への思いが出てきて自分でも驚いた。

「昔から母に、自分の行動について、細かく注意されて、不満をもっていたのを思い出したんです。思い出せる限りの不満の気持ちを用紙に書き出しました」

 その後、その用紙を聖経(*4)『甘露の法雨(かんろのほうう)』の読誦(どくじゅ)のなかで焼却(しょうきゃく)し、先導者に続いて両親への感謝の言葉を唱(とな)え続けた。

 浄心行を終えたその夜、布団(ふとん)に入り、目を閉じると、瞼(まぶた)の裏に、幼い頃の母親との記憶がよみがえってきた。体調を崩(くず)して寝ていると、必ずそばで聖経を読誦してくれたことや、共働きだったことで、小学校から帰ってきたNさんがひとり寂しくないようにと、玄関にたくさんのキャラクター人形を置いて、気持ちを和(なご)ませてくれていたことなどが浮かんできた。

「『ああ、自分は愛されていたんだ』と、涙が溢(あふ)れてきました。これまで母に注意されてきたのは、人と違うことをして、周りからいじめられないようにするための、母なりの愛情だったと気がついたんです。自分が抱えていた問題は、母に対する不満を解消して、感謝することの大切さを気づかせてくれるためだったんだと感じて、心が一気に明るくなりました」

必ずよくなると信じること

 練成会に感動したNさんは、生長の家の教えをもっと深く学びたいと思い、そのまま研修生として残った。研修生活では、早朝の神想観(*5)や講話、先祖供養などを通して生長の家の教えを実践しながら学んだ。研修生を終える頃には、心もすっきりした。

 その後、大学も無事に卒業し、平成28年の7月には、現在のネットワーク関連の会社に就職。カスタマーサービスの仕事にやりがいを感じているという。

 最後にNさんは自分の体験をもとに、こんな話をしてくれた。

「いろんな問題が起こりましたが、それらは自分に何かを教えてくれるものだったんだと思います。自分を責め続けているうちは決して状況はよくなりません。自分を許すことで初めて心の緊張がなくなっていき、暗かった心に光が差し込むようになります。心に明るいものが溢(あふ)れてくると、見える世界が一変しました。どんな問題が起こっても、必ずよくなると信じていれば、正しい道に進んでいけるのだと思います」

自宅で、祖母と

自宅で、祖母と

*1 合宿して教えを学び、実践するつどい
*2 京都府宇治市にある生長の家の施設。宝蔵神社や練成道場などがある
*3 過去に抱いた悪感情や悪想念を紙に書き、生長の家のお経『甘露の法雨』の読誦の中で、その紙を焼却し、心を浄める行
*4 生長の家のお経の総称
*5 生長の家独得の座禅的瞑想法︎︎