海野妙子(うんの・たえこ)さん│68歳│静岡県富士宮市 取材/久門遥香(本誌) 写真/堀 隆弘

海野妙子(うんの・たえこ)さん│68歳│静岡県富士宮市
取材/久門遥香(本誌) 写真/堀 隆弘

 静岡県富士宮市の北部、富士山西麓に広がる朝霧高原。海野妙子さんは、この一画、上井出(かみいで)地区に居を構え、四季折々の花や植物の日本画を描いている。

鮮やかな発色の水干(すいひ)絵の具と、絵の具を接着させるために使う膠(にかわ)

鮮やかな発色の水干(すいひ)絵の具と、絵の具を接着させるために使う膠(にかわ)

「森や牧草地に囲まれた、自然豊かな環境ですから、絵の題材には事欠きません。庭で育てた花や家の周りで見つけた山野草など、身近な植物を描くことが多いですね」

 現在制作中の作品も、自宅近くの野に咲いていたヒガンバナの、燃えるような赤にインスピレーションを得て描き始めたもの。制作の様子を見せてもらうと、下図(したず)に白色の顔料(*1)胡粉(ごふん)を乗せ、さらに色を加えていく最中だった。

 鎌倉朱(かまくらしゅ)、岩緋(いわひ)といった、同じ赤色でも微妙に異なる絵の具を使い分けながら、彩色を施(ほどこ)していく。

「日本画では、色同士を混ぜ合わせず、色を塗り重ねることで、奥行き、透明感を表現します。下に塗った色は隠れてしまいますが、全体を美しい色彩にするために、なくてはならないものなんです」

自ら育てたエンドウを題材とした『生』は、「第33回生長の家芸術家連盟美術展」で優秀賞を受賞した

自ら育てたエンドウを題材とした『生』は、「第33回生長の家芸術家連盟美術展」で優秀賞を受賞した

 日本画と出合ったのは、「何か趣味を見つけたい」と思っていた平成19年、公民館の絵画教室に参加したのがきっかけだった。子供の頃から絵が好きで、京都造形芸術大学で染織(せんしょく)を学んだこともある海野さんは、日本画独特の技法と優美な色遣(いろづか)いに惹(ひ)かれ、それから創作に励むようになった。

「植物が持つ、複雑で繊細(せんさい)な色合いに感動する気持ち、それが創作の原動力ですね。自然界の美しさを、どう表現しようかと頭を悩ませますが、それがまた楽しいんです」

 生長の家の教えは、中学生の頃、母親から伝えられ、高校1年の時には青少年練成会(*2)に参加したが、真剣に信仰するようになったのは、27歳で離婚してから。長女を連れ、先の不安を抱えていた海野さんは、母親教室(*3)や練成会に参加して教えを学んだ。

「それまでなんとなく続けていた信仰でしたが、『人生に無駄なことは何一つない』との教えが心に響き、それから信仰を支えに生きるようになったんです」

 平成12年には、信仰を共にする夫、仁(ひとし)さんと再婚し、幸せな第二の人生を送っている。

「人生に紆余曲折(うよきょくせつ)があっても、そうした経験があってこそ、今の自分があるんですね。いくつもの色を重ねて、一枚の絵になる日本画を描いていると、そのことを強く感じます。ただ綺麗(きれい)というだけでなく、内面的な美しさを絵に表現していきたいと思います」

 そんな海野さんから、どんな日本画が生まれるのか楽しみだ。

*1=着色に用いる粉末で、水や油に不溶のものの総称
*2=合宿形式で生長の家の教えを学び、実践するつどい
*3=母親のための生長の家の勉強会