宮原 學(みやはら・まなぶ)さん│71歳 聞き手:小池聖明(こいけ きよあき)さん・生長の家国際本部勤務。生長の家本部講師。家庭菜園作りに励んでいる。 写真/堀 隆弘 宮原 學さんのプロフィール 1944年、長野県生まれ。32歳から62歳まで食品関連、日用品、雑貨などの卸売会社を経営。桜美林大学の生涯学習養成講座に参加、また東京農業大学の教授等と遊びながら実験林、炭焼きなどの活動をし、自然との共生のあり方を学ぶ。現在、竹と炭を使ったバイオケミカル、農薬に頼らないコンパニオンプランツによる有機農法を実践し、生長の家国際本部をはじめ、各地でオーガニック野菜の作り方を教えている。 静岡県富士宮市在住。

宮原 學(みやはら・まなぶ)さん│71歳
聞き手:小池聖明(こいけ きよあき)さん・生長の家国際本部勤務。生長の家本部講師。家庭菜園作りに励んでいる。 写真/堀 隆弘
宮原 學さんのプロフィール
1944年、長野県生まれ。32歳から62歳まで食品関連、日用品、雑貨などの卸売会社を経営。桜美林大学の生涯学習養成講座に参加、また東京農業大学の教授等と遊びながら実験林、炭焼きなどの活動をし、自然との共生のあり方を学ぶ。現在、竹と炭を使ったバイオケミカル、農薬に頼らないコンパニオンプランツによる有機農法を実践し、生長の家国際本部をはじめ、各地でオーガニック野菜の作り方を教えている。
静岡県富士宮市在住。

化学肥料ではなく、竹と炭を肥料として使うバイオケミカル(生物化学=バイケミ)による農法、農薬の代わりに、互いに好影響を与え合う植物同士を混植し、病原菌や害虫を防ぐコンパニオンプランツによって、オーガニック野菜を栽培している宮原學さんに、オーガニック野菜の作り方などについて聞いた。

昔から知られていた竹肥料と竹炭の効能【理論編】

─竹を肥料として使うということですが、竹にはどのような効能があるんでしょうか。

宮原 竹は、皆さんご存じの通りタケノコが生長したものですが、一年で成木になる生長力のすごさから、不思議な力と効能があると信じられてきたんです。具体的に言いますと、竹の稈〈かん〉(*1)の組織、維管束〈いかんそく〉(*2)とその構成部(維管束鞘〈そくしょう〉、導管など)は、繊維質が多く、微生物が棲(す)むための格好のスペースになり、含まれている豊富なデンプンが微生物のエサになるんです。また竹は、鉄、マグネシウム、カルシウム、マンガンなどのミネラルにも富んでいるので、大変肥料効果が高いんですね。

─竹を肥料として使うというのは新しいことなんですか。

宮原 これは、古くから行われていたことです。岐阜県高山市と長野県松本市の県境に、『女工哀史』(*3)で知られる野麦峠がありますが、こうした雪深い山里では、昔、熊笹や小竹(シノダケ)を肥料にして米を作っていました。この米は、土壌の地気を生かして作った米ということで、「活地気米(かっちきまい)」と呼ばれる、非常に美味しい米だったそうです。冬の農閑期に、手を使って熊笹や小竹などを裁断器で短く切り、金槌(かなづち)で叩いて粉砕し、春先に田んぼに敷いたんですね。ほかにも、枯れた柴草や新芽の葉をそのまま使ったり、乾かしたりして肥料にしていたらしいです。しかし、こうしたことはすべて手作業で、しかも重労働だったため、自然に廃れていってしまったんですね。

上/オーガニック野菜の作り方を指導する宮原さん。左はインタビュアーの小池さん 下/宮原さんの軽トラックには、竹酢液、木酢液、竹炭が常備されている

上/オーガニック野菜の作り方を指導する宮原さん。左はインタビュアーの小池さん
下/宮原さんの軽トラックには、竹酢液、木酢液、竹炭が常備されている

─それが見直されるようになったのには、何かきっかけがあったんでしょうか。

宮原 阪神淡路大震災で被害を受けた淡路島の仁井村(にいむら)では、地震で溜池が崩壊し、灌漑(かんがい)用水も使えなくなったため、米作りをあきらめてサツマイモへの転作が図られたんですが、その中に稲作に挑戦した農家がありました。水を運び、竹肥料を使って米を栽培したところ、サツマイモは、日照り続きの干魃(かんばつ)で収穫できなかったのに、米は一部被害を受けただけで収穫でき、「竹肥料で作った米はうまい」と評判を呼んだんですね。 
 竹肥料の効果は、米に留まらず、山梨県塩山市(えんざんし)のモモ園でも確認されています。1998年のことですが、紋羽病〈もんぱびょう〉(*4)、腐乱病(*5)といった土壌の病気で廃園に追い込まれていた農地を蘇生させるため、竹の肥料を使って土壌改良に取り組んだところ、翌年には回復の兆しが現れたんです。その2年後に、小ぶりながらもモモが収穫でき、2001年には、本格的にモモを販売できるまでになりました。そうしたことから、米、モモに限らず、野菜作りにおいても、竹肥料を導入する機運が高まったということが言えると思います。

竹チップを畝(うね)にすき込み野菜の根元に竹炭を【実践編】

─竹林の放置が全国的に問題になっている今、竹を有効利用できるのは朗報だと思いますが、竹はどのようにして肥料にするのか、教えてください。

宮原 竹は繊維質に富んでいますが、内側は草質的、外側は木質的で、外皮は一般の樹木より強固です。また、外部からの病害虫や環境条件の影響をほとんど受けることがないため、地中に差してもなかなか腐食しない。その特徴こそが、竹を肥料として使う場合のネックになるんです。削ったり、砕いたりといった通常の処理法ではダメで、すりつぶし、加圧、加熱して、そこから一気に減圧して爆砕し、強固な繊維をほどく植繊機を使い、竹チップにする。先ほど紹介した阪神淡路大震災の被災地での米作り、塩山市のモモ園の再生も、この植繊機で作った竹チップが使われました。

─宮原さんはご自分の畑で、オーガニック野菜を作っているわけですが、そこでは竹チップをどう使っているんでしょうか。

宮原 自宅近くの約400坪の畑では、レタス、キャベツ、トマト、キュウリ、グリーンピース、エンドウ豆、ソラ豆、ニンニク、ダイコンなど70〜80種類の野菜を栽培しています。竹チップは、12月頃に野菜を植える畝(うね)の間の通路に広げてすき込み、野菜の根元には竹炭を入れるんです。炭は無理して粉にする必要はなく、よく空気が入って長持ちするよう大きいまま使い、約200キロの竹炭を入れています。竹炭には、カルシウム、カリウム、ナトリウムなどの天然ミネラルが豊富に含まれ、ばい菌に対する抗菌作用、消臭作用、調湿作用があって、土壌改良にも有効なんですね。

キャベツにレタスとネギを一緒に植えて、害虫の発生を防ぐコンパニオンプランツ

キャベツにレタスとネギを一緒に植えて、害虫の発生を防ぐコンパニオンプランツ

生態系の仕組みに習ったコンパニオンプランツ

─農薬を使わず、害虫を寄せ付けない方法として行っているコンパニオンプランツについて教えていただけますか。私も家庭菜園をしているので、大変興味があります。

宮原 これは、共栄・共存作物とも言い、近くで栽培することで、お互いの生長によい影響を与え合う植物を組み合わせて育てることです。コンパニオンプランツを利用し、野菜類とハーブ類などをうまく組み合わせて一緒に植えてあげると、病害虫を防ぐだけでなく、お互いの生長を促進し、収穫量も増えるなどさまざまな効果を生み出すと言われているものです。こう言うと、何か新しいもののように聞こえますが、実はこれも、竹肥料と同様、古い農法なんですね。人間と同じように、植物の場合も、単一で繁殖することはほとんどなく、何種類かの植物が群落を成し、お互いに助け合い、共存・共栄しているのが自然の姿です。コンパニオンプランツの原点は、こうした自然生態系の仕組みに習うところにあるんです。

─具体的には、どんな組み合わせが考えられるのでしょう?

宮原 組み合わせ方の基本は、植物同士の栄養の競合、根圏〈こんけん〉(*6)、光の競合などが生じにくいもので、例えば、高栄養素を好むムギには、栄養を作り出すクローバー、浅根の葉ネギには、深根のホウレンソウ、好光性(*7)のトウモロコシには、耐陰性(*8)のエダマメなど、対極になる植物が考えられます。また、植物同士は必ずしも良好な関係にならなくても、病害虫を防除してくれる関係も、コンパニオンプランツになります。

ミミズが出て来れば最高の土になった証拠

─コンパニオンプランツについては、自分の菜園にもすぐ応用できるので、ありがたいです。では、オーガニック野菜を家庭菜園で作ろうとする場合、何から始めればいいんでしょうか。

宮原 大切なのは土です。ですから最初に行うべきことは、野菜を作ろうとする土地の土壌検査をすることです。酸性なのか、アルカリ性なのか、黒ボク土(*9)なのか、粘土質なのか、チッ素、リン酸、カリの3要素の何が足りないのか。それによってどんな野菜を作ればいいのか、土壌を改良するにはどうすればいいかなどのことが分かります。
 例えばチッ素が多いと野菜を作ってもある程度は育ちますが、苦みが出たりして、体に余り良くない野菜ができるんです。そうしたことをJA(全国農業協同組合連合会)などの検査機関に頼んで調べてもらったらいいと思います。費用は2万円ぐらいから、細かい検査をしても5万円ほどでやってもらえると思います。

畑の道路沿いに植えてある赤ソバ。実はとらずに刈り取り、そのまま土にすき込んで、土壌改良として使う

畑の道路沿いに植えてある赤ソバ。実はとらずに刈り取り、そのまま土にすき込んで、土壌改良として使う

─私も野菜づくりをしていますので、土が大切ということは知っていますが、実際に土作りはどうやればいいんでしょう?

宮原 まず、油かすなどの肥料を使い、野菜の生長具合を見て土の状態を探り、それからだんだん牛糞(ぎゅうふん)とか、鶏糞(けいふん)とかを混ぜていくようにしたらいいですね。竹を肥料として使うまでには何年かかかりますが、その間に土に落葉などを入れるようにすると、やがて化学肥料を使わずにすむ土ができあがります。土の中からミミズ、しかもまるまる太ったミミズが出て来るようになれば、最高の土になった証拠です。しかし、理論通りにはなかなかいかないものですから、失敗しながら、いろいろなことを覚えていくのが一番いいと思います。

高い種や苗を買い育てる時は放っておくのが基本

─野菜の種や苗を購入する時、いろんな種類があって迷ってしまいます。気をつけなければならないことはありますか。

宮原 できるだけ高い物を買うということです。その方が間違いが少ない。ダイコンの種一つとっても1袋120円くらいから、高いものだと500円くらいしますが、安い物は、遺伝子組み換えはもちろん、ゲノム編集(*10)まで行っているものがあるんです。ですから、安い種を植えると、アオクビダイコンを植えたはずが、3代前、4代前の赤いダイコンや黒いダイコンが出てきたりするんです。こうしたことを“先祖返り”と言うんですけどね。

─誰でも育てやすい野菜には、どのようなものがありますか。

宮原 ホウレンソウ、コマツナですね。比較的育てやすい上、これらを植えると、その育ち具合から、土壌がどうなっているかも分かります。ホウレンソウの種を植えた場合、芽が出ても育たず、黄色くなって枯れてしまったら、その土壌は酸性が強いから、改良が必要だと分かるんです。先ほど申し上げた土壌検査が億劫(おっくう)だという方には、まず、ホウレンソウかコマツナを作ってみることをお勧めします。

─市民農園やマンションのベランダなど、狭い所でもオーガニック野菜を作ることはできますか。

宮原 充分可能です。野菜屑(くず)などの生ゴミを小さなポリペールに入れ、匂いがするようなら、竹酢液や木酢液をかけて発酵させ、それを土に混ぜてプランターで育てるのもいいですし、苦土石灰〈くどせっかい〉(*11)の袋を買い、底に穴を開けて、ジャガイモやスイカなどを作ることもできますしね。

─野菜を育てる時、どんなことに注意すればいいのか、何かアドバイスがありましたら。

宮原 水や肥料を与えすぎて、かわいがりすぎちゃうと根腐(ねぐさ)れしてしまったりしてダメなんです。私たちがやるべきことは、野菜が本来持っている生命力をいかに引き出してあげるかということですから、ある程度手をかけたら、あとは放っておいたほうがいいんです。

「親試実験」をモットーにオーガニック野菜を広めたい

─宮原さんは、生長の家国際本部が行っている「自然を伸ばす活動」でも指導してくださっていますが、生長の家が運営する「原宿“いのちの樹林”」「赤坂“いのちの樹林”」(*12)にも携わってくださっているそうですね。

宮原 そうなんです。「原宿“いのちの樹林”」のビオトープ(*13)には、炭を入れたため、水がきれいになり、メダカなどが育つようになりました。また、この樹林では農薬を使わず、木酢液を使っているんですが、これについても厳密を期しています。一口に木酢液と言っても、中国製やその辺の住宅を壊して作った、かなり化学物質が入っているのもあるんです。私は現在、竹酢液の認証を受けるよう準備していますが、この竹酢液は、害獣対策にも効果があると言われています。

─生長の家の“森の中のオフィス”をご覧になって、どんな感想をお持ちか、聞かせてください。

宮原 ゼロ・エネルギー・ビル(*14)の施設が素晴らしいのはもちろんですが、周囲の半原生林はぜひ恒久的に残してもらいたいと思います。そのためには、手入れが必要なんです。今は熊笹がかなり繁殖し、荒れている状態ですから、もうちょっと熊笹をきれいに刈って、サクラソウなどの貴重な植物を大事にしていかなければならないと思います。“森の中のオフィス”の周辺が、手入れされた森になったら最高ですね。

─最後になりますが、今後の抱負をお願いします。

宮原 私のモットーは、本草学(*15)にある「親試(しんし)実験」ということで、これは「分かりきったことでも、一つ一つ自らの手で試し、明らかになった事実を積み上げる」という意味です。これからもこの言葉を胸に、あまり気張ることなく、遊び感覚で、オーガニック野菜を育てることの大切や、それが環境のためになり、人のためになるということを伝えていきたいです。環境に人に優しい生き方をすれば、すべて丸く収まりますからね(笑)。

参考資料 
■橋本清文・高木康之著『竹肥料農法 バイケミ農業の実際』(農文協) 
■木嶋利男著『農薬に頼らない家庭菜園 コンパニオンプランツ』(家の光協会)

*1=稲・竹などの中空になっている茎 
*2=植物の茎の中を縦に走る柱状の組織の集まり
*3=岩波文庫。1925年、改造社から刊行された細井和喜蔵のルポルタージュ
*4=真正菌の一種が根に寄生する植物の病気
*5=果樹などの幹・枝に湿疹状のはれができ、病変部から上が枯れてしまう病気
*6=土壌で直接根の作用を受ける部分
*7=光を好む性質のこと
*8=日照不足、日光の少ない日陰でも生育する性質のこと
*9=火山灰を母材とし、良好な排水条件における母材の風化と平行して有機物が集積したことによる黒い表層をもつ土壌
*10=部位特異的なヌクレアーゼ(核酸分解酵素の総称)を利用して、思い通りに標的遺伝子を改変する技術
*11=マグネシウムを含む石灰肥料
*12=本誌No.65(2015年8月号)参照 
*13=生物空間、生物生息空間 
*14=創エネ・省エネ技術により、建物内の年間エネルギー使用量を実質ゼロにするビルのこと
*15=薬用に重点をおいて、植物やその他の自然物を研究した、中国古来の学問