小出裕章(こいで・ひろあき)さん(元京都大学原子炉実験所助教) 聞き手:金内崇幸さん(生長の家青年会会長、生長の家本部講師) 写真/堀 隆弘 小出裕章さんのプロフィール 1949年、東京生まれ。工学者(原子核工学)。元京都大学原子炉実験所助教。1968年、原子力の平和利用に夢を抱いて、東北大学工学部原子核工学科に入学。1970年、女川での反原発集会への参加を機に、原発を止めさせるため原子力の研究を続けることを決意。1974年、東北大学大学院研究科修士課程修了(原子核工学)。専門は、放射線計測、原子力安全。2015年4月、定年退官を機に、長野県松本市に移住。著書は、『原発のウソ』(扶桑社新書)、『原発はいらない』『この国は原発事故から何を学んだのか』『原発ゼロ』(いずれも幻冬舎ルネッサンス新書)、『騙されたあなたにも責任があ る 脱原発の真実』(幻冬舎)、『原発と戦争を推し進める愚かな国、日本』(毎日新聞出版)など多数。

小出裕章(こいで・ひろあき)さん(元京都大学原子炉実験所助教)
「福島第一原発事故発生直後、日本政府は原子力緊急事態宣言を出したわけですが、6年半経った今も解除されていません。ですから、“アンダーコントロール”どころか、まったく収束していないというのが実状です」と語る小出さん
聞き手:金内崇幸さん(生長の家青年会会長、生長の家本部講師)
写真/堀 隆弘
小出裕章さんのプロフィール
1949年、東京生まれ。工学者(原子核工学)。元京都大学原子炉実験所助教。1968年、原子力の平和利用に夢を抱いて、東北大学工学部原子核工学科に入学。1970年、女川での反原発集会への参加を機に、原発を止めさせるため原子力の研究を続けることを決意。1974年、東北大学大学院研究科修士課程修了(原子核工学)。専門は、放射線計測、原子力安全。2015年4月、定年退官を機に、長野県松本市に移住。著書は、『原発のウソ』(扶桑社新書)、『原発はいらない』『この国は原発事故から何を学んだのか』『原発ゼロ』(いずれも幻冬舎ルネッサンス新書)、『騙されたあなたにも責任がある 脱原発の真実』(幻冬舎)、『原発と戦争を推し進める愚かな国、日本』(毎日新聞出版)など多数。

 2011年3月11日、東日本大震災によって発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故は、1号機、2号機、3号機でメルトダウン(炉心熔解)が起き、大量の放射性物質が放出され、国際原子力事象評価尺度(INES)において最悪レベルの7に分類される重大なものだった。にもかかわらず、その真実が伝えられないまま6年半が経過し、次第に風化しようとしている。
 福島第一原発の事故とは、一体どのようなものだったのか、そして今後、事故の収束(しゅうそく)の見通しはあるのかなどについて、原子力の専門家であり、原発反対を唱え続けている、元京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんに聞いた。

ウランを核分裂させる原発は危険で効率の悪い蒸気機関

──はじめに、とても基本的なことですが、原発はどのようにして電気を作るのか、その仕組みを教えていただけますか。

小出 図1を見てください。ここにある原子炉でウランを核分裂させ、その熱で水を沸騰(ふっとう)させて蒸気にし、タービンを回して発電するのが原発の仕組みですが、図のタイトルにあるように、原発は大変効率の悪い蒸気機関なんです。inoti92_rupo_2
 今日標準となった原発は、100万キロワットと言われますが、100万キロワットというのは電気になる数字のことで、原子炉の中では、その3倍の300万キロワットの熱が出ているんです。ですから、3分の1しか電気として使えず、残りの200万キロワットの熱は捨てるしかない。日本の原発の場合、その熱をどこに捨てるのかというと、海に捨てる。そうすれば当然、海が温まりますから、原発とはつまり、海を温めることで維持されている、「海温め装置」とも言えるわけです。(図2参照)

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──原発を動かすには、どれだけのウランが必要なんでしょうか。

小出 図3の左下に、1945年の広島原爆で核分裂したウランの重量を四角の大きさで示したものがあります。800グラムです。これだけで広島の街が一瞬にして壊滅してしまいました。
 若い頃、この事実を知った私は、「たった800グラムで街を破壊してしまう力がある原子力とはすごいものだ。核兵器を使ってはいけないけれども、原子力を平和利用し、人類のために使えば役に立つ」と思い、原子力研究の道に足を踏み入れたんです。
 しかし、図3を見れば分かるように、100万キロワットの原発1基を1年間運転するごとに、広島原爆の1,000発分を超える、1トンのウランを燃やさなければいけないわけです。こんなふうに地球上のウランを使っていたらすぐになくなってしまう。だから原子力とは、未来のエネルギー源などではなく、石油や石炭が枯渇(こかつ)する前にウランが枯渇してしまう、馬鹿げたものだということに気がついたんですね。inoti92_rupo_4
 それに、800グラムのウランが核分裂したということは、800グラムの“死の灰”を生んだということです。同様に1トンのウランを燃やすとは、1トンの“死の灰”を生み出すことになる。広島原爆の生み出した“死の灰”の1,000発分以上を、1年ごとに生み出し、それを原子炉の中に溜(た)め込んでいく。そんな原発を動かしては絶対いけないと思い、原発に反対するようになったんです。

崩壊熱を止められず1号機から3号機がメルトダウン

──では、福島第一原発の事故とはどんなものだったのかについて、お話しいただけますか。

小出 先ほど、原発で電気になるのは300万キロワットのうちの100キロワットで、その他の200万キロワットの熱は海に捨てているという話をしました。しかし、この300万キロワットというのは、すべてウランが核分裂してできたものかというと、そうではないんです(図4参照)。ウランが核分裂して出しているのは279万キロワット分だけで、あとの21万キロワットは「崩壊熱」と呼ばれるものなんです。inoti92_rupo_5-2
 原発を動かすと、炉心に核分裂生成物あるいは放射性物質と呼ばれている、放射線を出す大量の“死の灰”を溜め込んでいきます。放射線というのはエネルギーの塊(かたまり)、熱なんですね。ですから炉心に溜まってしまった“死の灰”が膨大(ぼうだい)な熱を出し続け、それが21万キロワットの崩壊熱になるんです。
 原発の事故が起きた場合、制御(せいぎょ)棒を原子炉に挿入することで、核分裂の連鎖反応を止めることは、比較的容易にできるのです。福島第一原発の1号機も2号機も3号機も、地震の発生に伴い、核分裂の連鎖反応を止めることはできたんですが、崩壊熱の発生が止まらなかった。原子炉の中に膨大な死の灰がある限り、崩壊熱の発生を止めることはできないわけです。
 皆さん、今日は車で来てくださったと思いますが、道路を走っていて、車の調子が悪くなったら、ブレーキをかけるか、エンジンを切れば、車は容易に止まりますよね。でも原発は、調子が悪くなっても、事故になっても止めることができない。そのまま走り続けなければならないという、なんとも厄介(やっかい)な機械なんです。

──福島第一原発では、この崩壊熱に対して、どのような処置が施(ほどこ)されたんですか。

小出 本来ならば、ポンプで水を送り続ける非常用の炉心冷却装置を動かして、崩壊熱を冷やし続けなければならないわけです。しかし、福島第一原発の場合には、地震が起きた時点で原子炉の運転を止め、自分で発電できなくなりました。その上、送電線の鉄塔も倒壊し、外部からの電気を受け取ることができなくなり、ポンプが動かせなくなりました。
 そんな場合には、非常用の発電機があるはずだったんですが、津波で流されて使えず、すべての電気がストップしてしまった。崩壊熱を冷やすための水が送れなくなり、炉心の温度がどんどん上がってしまい、メルトダウンに至ったというのが福島第一原発の事故です。それによって、大量の放射能が吹き出し、言葉に言い表せないほどの悲惨(ひさん)な被害が出て、6年半経っても一向に収束(しゅうそく)しないというのが実状です。

広島原爆168発分のセシウム137が大気中に放出

──メルトダウンとは、炉心がどういう状態になることをいうんですか。

inoti92_rupo_7小出 図5の上を見てください。この原子炉圧力容器は、鋼鉄製の圧力釜で、福島第一原発の場合は厚さが16センチあります。その中に水が張ってあり、真ん中の辺りに「炉心」と呼ばれる、ウランを入れる場所がある。ここにある格納容器は、放射能を閉じ込めるための最後の防壁で、「原子炉の中で何か事故が起きても、格納容器が健全なら放射能は外に出てこない」ということになっていたわけです。
 炉心にあるウランは、瀬戸物状に焼き固めてあるんですが、メルトダウンとは、この炉心が熔(と)けてしまった状態です。たとえば茶碗や皿は、ガスコンロの上に乗せても、たき火に放り込んでも熔けないですよね。瀬戸物状のウランも、2,800度にならないと熔けないんですが、先ほど話したように、電気がストップしてポンプから水を送れず、崩壊熱が冷(さ)まされなかったために、原子炉圧力容器にあった、約100トンの瀬戸物状に焼き固めたウランが熔けてしまったということです。

──聞くところでは、メルトダウンよりさらにひどい状況になっているということですが……。

小出 その通りです。ウランが熔けてしまうと、原子炉圧力容器という鋼鉄製の圧力釜の底に落ちるわけですが、鋼鉄も、1,400度から1,500度くらいで熔けてしまう。福島第一原発の場合、2,800度を超えた100トンもの、どろどろの瀬戸物が熔けて落ちたため、この鋼鉄製の圧力釜の底も抜け、外側にある格納容器の床に落ちて、最後の砦(とりで)である格納容器の健全性を破壊しました。

──この事故は、INES(国際原子力事象評価尺度)でもっとも深刻なレベル7に分類されるものでしたね。具体的に、どれだけの放射性物質が放出されたのでしょうか。

小出 ウランが核分裂をすると、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素131など、200種類くらいの放射性物質ができますが、そのうち、一番人間に害を与えるのがセシウム137です。日本国政府がIAEA(国際原子力機関)に提出した報告書(図6参照)に基づき、福島第一原発事故によって大気中に放出されたセシウム137を見てみましょう。inoti92_rupo_8
 黄色い小さな四角が、広島原爆の際、大気中にばらまかれたセシウム137の量で、8.9×10の13乗ベクレルとなっています。ベクレルとは、放射性物質の量を表す単位ですが、この数値では、ピンとこないと思います。この広島原爆と比較すると、1号機から3号機合わせて放出された放射性物質は、セシウム137だけでも1.5×10の16乗ベクレルで、広島原爆の168発分という驚くべき数値になるんです。

100年を目処(めど)にとりあえず石棺(せきかん)で覆(おお)うしかない

──メルトダウンを起こした1号機から3号機の廃炉は可能なのでしょうか。

小出 先ほど見ていただいた図5(*1)、「国と東電が示した廃炉へのロードマップ」は破綻(はたん)していて、国や東電が言うような形での廃炉、事故の収束は決してできないと思っています。ではどうしたらいいのかというと、私は、1986年に旧ソ連のチェルノブイリで起きた原発事故に倣(なら)い、石棺で覆(おお)うしかないと考えています。 
 チェルノブイリの場合、どうにも手のつけようがないため、巨大な石棺でもって、事故が起きた原発を閉じ込め、30年後の昨年、石棺がボロボロになったことに伴い、さらに巨大な新しい石棺を作って覆いました。その第二石棺の寿命は100年とされていますが、100年経(た)てば、放射能汚染の主成分であるセシウム137という放射性物質が10分の1に減っているということもあり、福島第一原発も、とりあえず石棺で覆い、時間を稼(かせ)ぐしかないと思っています。

──“とりあえず”という手段しかないわけですね。

小出 残念ながらそういうことです。しかし、福島第一原発は、チェルノブイリより深刻です。チェルノブイリ原発の事故はたった1基で、地上部分で爆発して原子炉建屋(たてや)が壊(こわ)れてしまったものの、懸命な作業によって地下部分は健全性を保ったんです。だから、地上部分を石棺で封じ込めれば放射能を閉じ込めることができたんですが、福島第一原発の場合は、地上の原子炉建屋が吹き飛んだだけでなく、地震で地下も割れ、破壊されてしまっている。ですから、チェルノブイリと違い、地下も石棺で覆わなければならない。それも1号機、2号機、3号機と3基もあるわけですから、どれだけ大変なことか想像もつきません。

国、東電はもとより自民党にも大きな責任が

──福島第一原発事故がいかに悲惨なものかがよく分かりました。ところで東電は、「津波による事故は想定外だった」と言っていますが、それについてはどうでしょうか。

小出 この事故によって、何十万人もの人が家を失い、生活を根こそぎ破壊され、1,100平方キロメートルという土地に人が住めなくなってしまいました。日本は、先の戦争に負けても、「国破れて山河(さんが)あり」で、大地があれば人々は、そこで生きていくことができたわけです。しかし、あの事故のおかげで、大地そのものがもう使えなくなってしまった上、何百万人もの人たちが、汚染(おせん)されて本来なら立ち入ることすら許されない場所に置き去りにされている。そんな言葉では言い尽くせないほどの甚大(じんだい)な被害が出ているというのに誰も処罰(しょばつ)されない。「予見できなかったから俺たちには罪がない」と東電は言うわけですが、「冗談じゃないよ」ということです。

小出さんは、京都大学原子炉実験所助教を退官後、長野県松本市に転居。ここを拠点に、反原発の活動に取り組んでいる。後に見えるのは松本城

小出さんは、京都大学原子炉実験所助教を退官後、長野県松本市に転居。ここを拠点に、反原発の活動に取り組んでいる。後に見えるのは松本城


 私は、これまで話してきた通り、原発というのは、膨大な“死の灰”を生み出すものであり、必ずいつか故障し、事故が起きるから、なんとしてでも原発を止めなければいけないと言ってきました。にもかかわらず、国や東電は、「事故なんて起こさない」と言い続けて原発を作ってきたんです。ですから、事故の原因がどんなものであろうとも、私は彼らに責任を取らせ、処罰するべきだと思います。
「津波が予見できたか、できなかったか」というようなことは、実に些末(さまつ)な話だとは思いますが、実は、福島第一原発には、15メートルを超える津波が来るだろうと予測されていた。でも、東電は、何も対策を取らないまま事故を起こしてしまったわけです。

──当然ながら、国にも責任がありますよね。

小出 もちろんです。日本では、57基の原発が国の安全審査に合格して稼働(かどう)してきました。今は、その多くが運転を停止していますが、それらの原発に安全のお墨付(すみつ)きを与えたのは、時の政権を握っていた自由民主党なんです。ですから私は、自由民主党にも、原発に関係した歴代の総理大臣にも重大な責任があると言っているわけです。

自然からの収奪(しゅうだつ)を止め、太陽光エネルギーの時代へ

──私ども生長の家では、谷口雅宣・総裁が『次世代への決断 宗教者が“脱原発”を決めた理由』(2012年、生長の家刊)を上梓(じょうし)し、脱原発の姿勢を明確に打ち出すとともに、危険な原発や地域を独占する電力会社(東電)に頼らないため、「電力自給」を目指して、山梨県北杜市の“森の中のオフィス”を、ゼロ・エネルギー・ビル(*2)として建設しました。私たちは、エネルギー供給を原発や化石燃料などの地下資源にできるだけ頼らず、太陽光発電やバイオマスなどの再生可能な地上資源に切り換えていくべきだと考えていますが、今後の日本のエネルギーのあり方はどうあるべきだとお考えでしょうか。

小出 生長の家の皆さんが、太陽光発電などの再生可能エネルギーにシフトされたというのは、実に真っ当な考え方をされていると思います。
 これまで人間は、薪(まき)、石炭、石油、天然ガス、そして原子力においても、自然から収奪してエネルギーにしてきたんです。みんな人間が作ったものではない。地球が長い年月をかけて蓄(たくわ)えてきてくれた貴重な資源を、人間が勝手に使ってきたわけです。inoti92_rupo_9
 図7は、それら再生不能エネルギーの埋蔵量と世界の年間エネルギーの消費量を示したものです。これを見ると、太陽は地球が46億年という途方もない歴史をかけて蓄えてきた再生不能エネルギーの、実に10倍以上のエネルギーを、一年毎に地球に提供してくれているわけです。
 ですからこれからは、危険きわまりない原発と一日も早く手を切り、太陽エネルギーに頼るしかないんです。ただし、太陽が地球に与えてくれているエネルギーは、人間だけのものではありません。人間なんて地球上の一つの生物種にすぎず、その他、無数の生物が山ほど、この地球でそれぞれの命を生きているのであり、人間が好き放題に使っていいわけではない──それを肝(きも)に銘(めい)じておかなければならないと思います。

──本日は、大変貴重なお話を伺(うかが)い、ありがとうございました。 (2017年8月2日、長野県松本市にて)

※本文中の図、福島第一原発の写真は、小出さんの提供によるものです。