吉田俊道(よしだ・としみち)さん(「NPO法人大地といのちの会」理事長、「菌ちゃんふぁーむ」園主) 聞き手/川島美希さん(生長の家光明実践委員。熊本市在住。会社員・主婦) 吉田俊道さんのプロフィール 「NPO法人大地といのちの会」理事長、「菌ちゃんふぁーむ」園主(長崎県佐世保市)。長崎県環境アドバイザー。1959年、長崎市生まれ。九州大学農学部大学院修士課程修了後、長崎県庁の農業改良普及員となる。96年、県庁を辞め、有機農業を始める。99年、「大地といのちの会」を結成し、生ごみを堆肥として使う野菜作りを行っている。著書に『生ごみ先生が教える「元気野菜づくり」超入門』(東洋経済新報社)、『お野菜さんありがとう! 子どもと一緒に菌ちゃん野菜作り』(菌ちゃんふぁーむ)などがある。 写真/堀 隆弘

吉田俊道(よしだ・としみち)さん(「NPO法人大地といのちの会」理事長、「菌ちゃんふぁーむ」園主)
聞き手/川島美希さん(生長の家光明実践委員。熊本市在住。会社員・主婦)
安全でおいしく、しかも元気な野菜の作り方について語る吉田俊道さん。テーブルの上にあるのは、採れたばかりの甘くてみずみずしいアスパラガス。右は、聞き手の川島美希さん

吉田俊道さんのプロフィール
「NPO法人大地といのちの会」理事長、「菌ちゃんふぁーむ」園主(長崎県佐世保市)。長崎県環境アドバイザー。1959年、長崎市生まれ。九州大学農学部大学院修士課程修了後、長崎県庁の農業改良普及員となる。96年、県庁を辞め、有機農業を始める。99年、「大地といのちの会」を結成し、生ごみを堆肥として使う野菜作りを行っている。著書に『生ごみ先生が教える「元気野菜づくり」超入門』(東洋経済新報社)、『お野菜さんありがとう! 子どもと一緒に菌ちゃん野菜作り』(菌ちゃんふぁーむ)などがある。
写真/堀 隆弘

佐世保市潜木町の山間にある「菌ちゃんふぁーむ」

佐世保市潜木町の山間にある「菌ちゃんふぁーむ」

 吉田俊道さんは、「しっかりした中身のある元気な野菜は、農薬や化学肥料を使わない大地の力によってこそできる」という考え方に基づき、野菜くずや食べ残しなどの生ごみをリサイクルして土を作り、“菌ちゃん”(微生物)と共生した無農薬・有機農法の野菜作りを行うとともに、著作や講演会などを通して、その普及に努めている。「本当に元気な野菜には虫がつかない」「虫も菌も、この世に存在するすべてのものには意味があり、自然界の中で大切な役割を果たしている」と語る吉田さんに、こうした野菜を作るようになったきっかけ、元気な野菜の作り方などについて伺った。

農薬を使わなくても、もっとおいしい野菜が作れるのでは?

──私は以前、現在住んでいる熊本市の保育園で、吉田さんの講演会に参加したことがあります。「生ごみリサイクル菌ちゃん野菜作り」のお話を聞いて、大変感銘を受け、ご著書の『生ごみ先生が教える「元気野菜づくり」超入門』(東洋経済新報社)なども読ませていただきました。今日は、その吉田さんに直接お話を伺う機会をいただき、嬉しく思っております。

吉田 熊本から佐世保までわざわざ来ていただいたんですね。

inoti102_rupo_2──まず、生ごみリサイクル菌ちゃん野菜作りをされるようになったいきさつから、お話しいただけますか。

吉田 私は小学生の頃から、野菜を作っていた母親の見よう見まねで野菜を作るのが好きな子供でした。それが高じて、九州大学の農学部に進んで農業を学び、卒業後、長崎県庁に入り、農業改良普及員になりました。その仕事は、農家に作物の栽培方法などの情報を提供し、農業経営について助言、指導するというものでしたが、続けるうちにだんだん疑問を持つようになったんです。

 当時は、当然のように農薬を使った野菜作りを奨励し、効率的に農薬を使えば、農家にはそれなりの儲(もう)けがありました。しかし、そうして農薬を使って作った野菜は、本来の野菜が持っているはずのつやつやした色がない、中身の薄いものであることに気づいたんですね。「果たしてこれでいいんだろうか。農薬を使わず、有機農法で作れば、もっと味のよい野菜ができるのではないか」と思い、有機農法で野菜を作っている全国各地の農家を、休暇を使って自費で訪ねて回るようになったんです。

 すると、農薬など使わなくても、立派な野菜を育てている農家があることが分かりました。うるわしい色をした、元気いっぱいの野菜を見て感動し、「こんな野菜こそ、私が求める理想の野菜だ」と思い、今度は有機農法を研究している施設を訪ねました。

「自分で実践するしかない」と有機農法による野菜作りに参入

──どんな所に行かれましたか。

吉田 その一つが、「自然農法国際研究開発センター(INFRC)」(長野県松本市)です。そこは、化学肥料や合成農薬に頼らず、自然界の仕組み、特に土の力を最大限に活用する自然農法の技術の確立と普及を目指した研究、教育研修を行い、国内外への普及活動に取り組んでいるところで、土作りの大切さを学ばせてもらいました。

inoti102_rupo_4 もう一つ学んだのは、「島本微生物農法」です。これは、「酵素の世界社」と「島本微生物工業」(共に滋賀県甲賀市)が行っている農法で、有用微生物や酵素の力によって地力(ちりょく)を高め、安全で栄養価の高い、おいしい農産物を作るという、自然の摂理(せつり)にかなった農法に基づく農業です。

──その結果、どのようなことが分かったんでしょうか。

吉田 「本当にしっかりした中身のある元気な野菜は、農薬や化学肥料を使わず、大地の力でこそできる」ということでした。早速、農業改良普及員として、農家の皆さんに、農薬や化学肥料を使わない野菜作りを提案して回ったんです。

 でも、すぐには理想的な野菜が育たず、試しにやってみようとした農家から、逆に「農薬を使うなと言われても、虫がついたらどうする。あんたは公務員で身分が保障されているから、そんなことが言えるんだ」と言われました。

 「これは、もう自分で実践するしかない」と心を決め、県庁の職員になって10年目の1996年、37歳の時に県庁を退職し、自ら有機農法による野菜作りを始めることにしました。

元気のない野菜に虫がたかり元気な野菜には虫がつかない

──始めてみていかがでしたか。

吉田 失敗と挫折(ざせつ)の連続でした(笑)。何分自分の農地を持っていないため、すべて借地で、しかもまとまった農地が借りられずにばらばらになってしまい、設備や環境を整える上で、大変効率の悪い農業になってしまったんです。

 とはいえ、いったん始めたからにはやるしかないので、朝から晩まで畑に行き、必死になって働きました。しかし、有機農法で丹精(たんせい)込めて作った野菜には虫が群がり、一向に売り物にならない。その頃、畑に行って最初にするのが何かと言えば、手で虫をつぶすことでした(笑)。

大きく葉を広げたズッキーニの花を手に取り、説明する吉田さん

大きく葉を広げたズッキーニの花を手に取り、説明する吉田さん

 そんな毎日が続いたある冬の日、一筋の希望の光を見出す発見がありました。早朝、いつものように畑に行くと、相も変わらずブロッコリーに虫がたかっていました。「なんでこんなに虫がいるんだろう? 無農薬で野菜を作るのは難しいんだろうか」とため息をつきながら、虫をつぶし始めた時、あることに気がついたんです。虫は、同じところのブロッコリーに集中していて、少し先のブロッコリーには虫がついておらず、虫がいるゾーンといないゾーンに、はっきり分かれていたんですね。これには驚きました。

──その違いは、どんなところにあったんですか。
 
吉田 不思議に思って、虫が密集しているブロッコリーを生で食べてみると、これ以上は食べ続けたくないようなまずい味なんです(笑)。一方、虫がいないブロッコリーは、えぐみもなく、甘くておいしい、私が求めていた究極の野菜の味がしました。その時、本当に元気ある野菜には虫が来ず、元気のない野菜に虫が寄ってくるということが分かったんです。

 多くの人が、「無農薬・有機栽培による野菜には虫がたかり、虫に食われるのが当たり前で、それこそが安全でおいしい証拠」と思い、私もその一人でしたが、それは“常識のウソ”だったのです。

虫がつく、つかないその根本原因は土にあった!

──私もてっきりそう思っていましたが、それは違うんですね。
 
吉田 ハエの生態を考えていただければ、よく分かります。例えば、古くなった魚の刺身と買ったばかりの新鮮な刺身があったとします。さて、ハエはどちらの刺身にたかるでしょうか。言うまでもなく、腐敗臭(ふはいしゅう)がするような古い刺身ですよね。それと同じで虫の場合も、人間が食べてもおいしくない野菜にたかる習性を持っているということなんです。


 さらに土を調べてみると、虫がたかっていたゾーンには未熟な堆肥(たいひ)を入れていたため、土が少し腐(くさ)った状態になっていて、ブロッコリーも弱った状態でした。反対に、虫が寄りつかないゾーンには、完熟した堆肥を使っていたことから、元気でおいしいブロッコリーが育っていたんです。「虫がたかるか、たからないの根本原因は土にあるんだ」ということを、虫から教えられたんです。

 「虫と闘う必要はない。農薬を使わなくても、本当に元気な野菜には虫は寄りつかない。その元気な野菜は、健康な土から生まれるんだ」ということを分からせてもらった、“目から鱗(うろこ)が落ちる体験”でした。

 それを機に、何よりも完熟した堆肥を使った健康な土作りを心がけることで、徐々(じょじょ)に虫が寄りつかない元気な野菜を作ることができるようになりました。そして、始めて3年経った頃、「吉田さんの野菜が欲しい」と言ってくれる人が少しずつ増えて、やっと農業で生計を立てられるようになったんですね。

草ぼうぼうの耕作放棄地には途方もないパワーがある

──「虫と闘う必要はない」とは、とても深いお話です。ところで、ご著書の『生ごみ先生が教える「元気野菜づくり」超入門』には、「耕作放棄地は宝の山」と書いてありますが、これはどういうことなんでしょう?

吉田 今、お話しした体験に基づいて、最初は、整地された畑に完熟した堆肥を入れて野菜を作れば一番手っ取り早いと考えていたんですが、続けるうちに、それは逆だということが分かったんです。

 長い間、放ったらかしにされて、草や木や竹などがぼうぼうに生え、ジャングルのようになっている耕作放棄地は、太陽エネルギーをたっぷり浴びているため、草が枯(か)れると、それを虫や微生物が食べて分解し、腐植(ふしょく)が生じます。腐植には、さまざまなミネラルが含まれており、野菜に最高のパワーを与えてくれる。その意味で、耕作放棄地は、途方もなく滋味(じみ)豊かな土地と言っていいんですね。

ニンニクの収穫を体験した川島さんと長女。大きく実ったニンニクを引き抜き、母娘2人の笑顔が弾けた

ニンニクの収穫を体験した川島さんと長女。大きく実ったニンニクを引き抜き、母娘2人の笑顔が弾けた

 それが分かってから、私はそうした微生物のことを愛情を込めて“菌ちゃん”と呼ぶようになったんです。この菌ちゃんこそが植物の栄養源であり、菌ちゃんが多ければ多いほどパワーが溢(あふ)れた土になり、そんな土で野菜を作れば、農薬など使わなくても、虫がつきにくい元気な野菜が作れる。だから、「耕作放棄地は宝の山」ということなんです。

──「菌ちゃんふぁーむ」という名前の由来も、ここにあるんですね。

吉田 はい、そうです。いい名前でしょう(笑)。

 国は、耕作放棄地の対策に頭を痛めていて、何も作る予定がなくてもともかく耕すよう奨励し、そのための補助金も出しています。しかし、耕して畑の草をとってしまうと、太陽エネルギーが有機物として蓄積されない上、何年もかかって土壌に蓄えられた腐植によるミネラル分も雨が降る度に流失し、だんだん畑が砂漠のような状態になってしまう。なんとももったいない話です。

生ごみのエッセンスで育つ素晴らしい元気野菜

──「耕作放棄地が宝の山」とは、それこそ目から鱗が落ちる話ですが、生ごみを使った野菜作りに着目(ちゃくもく)されたのは、どのような理由からだったんでしょうか。

吉田 農業でなんとか生活できるようになった頃、野菜屑(くず)などの生ごみが大量に廃棄(はいき)されている現実を目にする機会があって、「この生ごみをなんとかできないものか」と頭を悩ますようになりました。そんな時、完熟した堆肥、菌ちゃんの働きによって野菜作りをしていた私は、「そうだ。生ごみこそ菌ちゃんの絶好のエサになる。これが利用できれば、生ごみも減らせて一石二鳥(いっせきにちょう)ではないか」と思いついたんです。


 「ごみ=やっかいもの」という発想を変え、生ごみを肥料にリサイクルして、野菜を作るようになったのは、「NPO法人 大地といのちの会」を設立した1999年のことでした。

──なぜ、生ごみがいいんですか。

吉田 一つは、生ごみが名前の通り、“生”だからです。生のまま土に入れることで、それを食べた微生物が増えて土が発酵(はっこう)し、微生物でいっぱいになると、土の中に炭酸ガスが発生して、土がふかふかの状態になります。もう一つは、生ごみに含まれている皮や芯(しん)、根など、調理の際に取り除かれる野菜屑(くず)には、ビタミン、ミネラル、ファイトケミカル(*1)などの栄養素が凝縮(ぎょうしゅく)されているんですね。

 ですから、生ごみは他の堆肥より強いパワーを持っており、“生ごみのエッセンス”によって、素晴らしい元気野菜が育つんです。ということは逆に考えれば、私たちは、皮や芯、根など一番栄養素があるところを生ごみとして捨て、栄養素の少ない部分を食べているわけです。野菜を食べるということは、“野菜のいのち”をいただくことですから、皮や芯、根などを捨てるのは、“いのちを捨てている”ことに他ならないと思います。

──本当にその通りですね。

子供たちに伝えたい地球のいのちの循環

──吉田さんは、著作や講演会などを通して、生ごみリサイクル菌ちゃん野菜づくりの普及に励まれていますが、中でも特に幼児たちに、生ごみリサイクル菌ちゃん野菜づくりを体験させることに力を入れていると聞いています。それは、どうしてなんでしょうか。

吉田 私たちが生きる上で、最も基本的なことは、「食べる」ということです。しかし現在は、その一番大事な「食」を自分たちの手で作れない人がほとんどです。私が考えるに、それこそが、子供たちが生きる実感を失ってしまう一因になっているのではないかと思うのです。

 そんな子供たちに、生ごみリサイクル菌ちゃん野菜づくりを通して、食べる物を自分で作るという体験をしてもらうと、汚(きたな)いと思っていた生ごみから、きれいでおいしい野菜ができ、地球上のすべてのものは土から生まれ、土に還(かえ)るということが実感として分かるようになるんですね。こうした生きた知識を子供たちに持ってもらうことが、とっても大切な情操(じょうそう)教育になると考えています。

──ご著書の『お野菜さんありがとう! 子どもと一緒に菌ちゃん野菜作り』(菌ちゃんふぁーむ)には、野菜作りに取り組んだ子供たちの感動的なエピソードが載(の)っています。特に印象に残っている話を紹介していただけますか。

吉田 いっぱいありますよ(笑)。ある保育園での話ですが、夏、プールで水浴びしていた園児が、終わった後、「ピーマンさんも暑いだろうから、水をあげたい」と言ったことがありました。この園児は自分で土を入れ、菌ちゃんを増やした畑でピーマンを育てていたから、ピーマンのことが気になって仕方がなかったんですね。それで、「水浴びしながら、ピーマンのことを考えていたなんて、君はとっても優しいね」と褒(ほ)めた後で、こう説明したんです。

「でも、君とピーマンでは違うところがあるよね。君は水浴びをした後、日が差さない家の中に入れるけど、ピーマンは、その場所から動くことができないから、カンカン照(で)りの時に水をあげたら、水がお湯になっちゃうよね。ピーマンがいくら強くても、お湯の中じゃ耐えられないでしょう。だから、ピーマンに水をあげるなら、気温が高くない朝か、夕方がいいんだよ」

inoti102_rupo_6 そしたら本当に納得した顔をしていました。子供たちは、こうして自分で野菜を作ることによって、地球のいのちの循環を体感し、ひいては、大地や食べ物を心からありがたいと思えるようになるんですね。そして、「この世界はみんな一つにつながっている」「無駄なものは一つもない」ということも分かってきます。

 そんな子供が増えれば、きっと世の中が変わっていくと思うので、これからも幼児や小学生の子供たちを対象に、生ごみリサイクル菌ちゃん野菜づくりの普及に努めていきたいと、強く念願しています。

今の活動に生きている生長の家の教え

──生長の家でも、オーガニック菜園部(*2)を設け、肉を控えるノーミートの食生活を心がけ、有機無農薬農法によって野菜や果物を栽培することに挑戦し、それらを収穫し食(しょく)すことで、地域と季節に即(そく)した自然の恵みのありがたさを味わい、地域の人々と共有する運動を展開しています。今日学ばせていただいたことを、今後の自分の活動に生かすとともに、私も生ごみリサイクル菌ちゃん野菜づくりに挑戦したいと思っています。

吉田 実は私、中学生の頃、いろいろ悩んでいた時、たまたま本屋で『生命の實相』(生長の家創始者・谷口雅春著、全40巻。日本教文社刊)を見かけて、買って貪(むさぼ)るように読んだことがあるんです。すごく感動して、練成会(*3)にも参加しようとしたんですが、宗教と聞いて心配した親に反対されて、残念ながら実現しませんでした。しかし、私の考え方、今の活動には、生長の家の教えが生きていると思っています。

──生長の家とご縁ある方の貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。 (2018年5月18日、佐世保市の「菌ちゃんふぁーむ」にて)

*1=植物が紫外線や昆虫など、植物にとって有害なものから体を守るために作りだされた色素や香り、辛味、ネバネバなどの成分のこと。必須栄養素ではないものの、健康維持のため、摂取したい重要な成分と言われている
*2=生長の家が進めているプロジェクト型組織(PBS)「SNIオーガニック菜園部」のこと。
他に「SNI自転車部」「SNIクラフト倶楽部」がある
*3=合宿形式で生長の家の教えを学び、実践する会