生長の家の教化部として初めてのゼロ・エネルギー・ビル、茨城県教化部を背に。右から寺田さん、多田さん、澤田さん 多田茂樹さん│生長の家茨城教区地方講師会長、元教化部会館建設委員長 寺田哲子さん│生長の家白鳩会茨城教区連合会副会長、茨城県教化部職員、元教化部会館建設委員 聞き手:澤田麻衣さん(生長の家国際本部運動推進部青年会推進課、生長の家本部講師補) 写真/堀 隆弘

生長の家の教化部として初めてのゼロ・エネルギー・ビル、茨城県教化部を背に。右から寺田さん、多田さん、澤田さん
多田茂樹さん│生長の家茨城教区地方講師会長、元教化部会館建設委員長
寺田哲子さん│生長の家白鳩会茨城教区連合会副会長、茨城県教化部職員、元教化部会館建設委員
聞き手:澤田麻衣さん(生長の家国際本部運動推進部青年会推進課、生長の家本部講師補)
写真/堀 隆弘

 平成25年7月、日本初のゼロ・エネルギー・ビル(*1)である生長の家国際本部“森の中のオフィス”(山梨県北杜市)が落慶したのに続き、今年(2016)4月10日には、生長の家茨城県教化部(*2)会館が生長の家教化部初のゼロ・エネルギー・ビルとして誕生した。自然と共生する新しい文明の構築に向けて、大きな一歩を踏み出した同教化部会館を訪ね、「創エネ」「省エネ」の具体的な仕組み、建設に至るまでの経緯などについて、会館建設に携わった多田茂樹さん、寺田哲子さんに聞いた。

新教化部会館の建設地笠間市の土地柄

――茨城県笠間市にある生長の家茨城県教化部会館は、近くに愛宕山(あたごやま)という小高い山があるなど、自然豊かな所ですが、笠間市はどんな土地柄なんでしょうか。

多田 笠間市は、日本三大稲荷(いなり)にも数えられる笠間稲荷神社の門前町、鎌倉時代に造られた笠間城の城下町として栄えた、歴史ある町です。最近は、江戸時代の中期に興(おこ)った笠間焼の生産地としても知られるようになり、毎年春と秋に行われる陶器市には多くの観光客が訪れて、にぎわいを見せます。

上:八角形のフォルムの大道場の背後にあるのは、鐘転山(かねころばしやま)/下:入口には、生長の家国際本部“森の中のオフィス”のロゴマークとともに、「茨城県教化部」の真新しい文字が掲げられている

上:八角形のフォルムの大道場の背後にあるのは、鐘転山(かねころばしやま)/下:入口には、生長の家国際本部“森の中のオフィス”のロゴマークとともに、「茨城県教化部」の真新しい文字が掲げられている

寺田 教化部会館がある笠間市泉は、もともと西茨城郡(にしいばらきぐん)岩間町という所で、平成18年に笠間市と合併して、現在の地名になったんです。この地は、クリの生産量日本一を誇る茨城県の中でも特に有名なクリの生産地ですし、皇室にカキを献上する“柿の里”としても知られています。教化部周辺にもクリ畑がたくさんあり、ブドウ畑、ナシ畑もあって、自然、歴史、果物に恵まれた地ですね。

創エネの技術(電気、蓄電、熱)

――この教化部会館は、創エネ、省エネの技術により建物内の年間エネルギー使用量を実質ゼロにする「ゼロ・エネルギー・ビル」とのことですが、まず創エネに関して、どのような技術が使われているのか、❶電気、❷蓄電、❸熱それぞれについて教えてください。

寺田 設計にあたっては、生長の家国際本部からいただいた命題、「“森の中のオフィス”の継承と進化」を常に意識しながら行いました。特に「進化」については頭を悩ませましたが、随所に進化したシステムを盛り込むことができたと思います。その一つが❶の発電です。

 下の平面図を見ていただくと分かるように、この教化部会館は大道場棟と事務棟に分かれていて、南向きの事務棟の屋根一面に、高効率の太陽光発電パネルを載せました。 これによって最大45キロワットの発電が可能となり、晴天であれば、会館内で使う電力のほとんどを賄(まかな)うことができます。

多田 小雨程度でも結構発電します。

寺田 次に❷の蓄電ですが、生長の家国際本部が設置しているリチウムイオン蓄電池のような、大きなバッテリーを置くことは、コスト的に難しいので、「V2Hシステム」を導入しています。これは、太陽光発電による電気を建物内に供給した後の余剰分を電気自動車に充電し、さらに余剰分を電力会社に売電するというものです。

 雨天や曇天(どんてん)、早朝、夜間など、あまり太陽光発電が見込めない場合は、24キロワットアワーを貯められる電気自動車(日産NV200)から電力を供給しています。――❸の熱についてはいかがですか。

寺田 日頃、キッチンで調理する時は、電気式のIHコンロを利用しています。通常の給湯システムとしては、電気温水器とエコキュート(*3)を組み合わせ、使用頻度(ひんど)が多く、使用量が少ない一般給湯は電気温水器にし、使用頻度が少なく使用量が多い入浴施設は設けず、シャワーにして、エコキュートで対応しています。薪(まき)ボイラーで風呂を沸(わ)かすということも検討したんですが、使用頻度が少ない上、費用対効果、メンテナンスの問題などを考えてシャワーのみにしました。

多田 シャワーだと、献労(*4)の時なども気軽に使えますし、清掃も楽なので使い勝手もいいですね。

省エネの技術(夏の場合、冬の場合)

――次に省エネの技術についてですが、まず夏には、どんな工夫をされているのか教えてください。

寺田 新教化部会館は、全体的にとても開放的な造りになっています。事務棟にしても部屋を区切らず、しかも冷暖房の際に無駄のないよう、必要に応じ、透明度のあるパーテーションで、見通しを確保しながら区切るようにしています。

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 ここは、“森の中のオフィス”がある八ヶ岳南麓のような寒冷地ではないので、夏は冷房が必要ですが、❶冷房期間の短縮、❷冷房負荷の低減に努めています。❶については、庇(ひさし)による日射の遮蔽(しゃへい)と自然通風が確保できる仕組みを取り入れ、❷では、地中熱を利用するジオパワーシステムを採用しました。これは、外気を地中5メートルのジオパイプに送り込み、地中熱で冷やして戻し、床下から吹き出させるというもので、地中の温度は年間を通して15度前後なので、冷房に適しています。これも、常時人がいる事務室のみに適用しています。

――冬の対策はどうでしょう?

寺田 八ヶ岳南麓ほどではありませんが、寒い時にはマイナス10度ぐらいになることもあるので、外壁と屋根に高性能の断熱材、グラスウールを入れ、事務棟の屋根にはOMソーラー(太陽熱利用システム)パネルを設置し、太陽熱を利用して室内を暖めています。これは、“森の中のオフィス”と同じシステムで、屋根面で暖められた空気をファンで床下に送り込み、そこから吹き出させるというものです。

 ただ、事務棟の屋根には、太陽光パネルも載っていますから、OMソーラーパネルを増やせば太陽光パネルが減るわけで、設計の段階でその比率を検討し、OMソーラーパネルは、事務室のみに対応する規模に抑えました。ただし、練成会(*5)などで人が多い場合を想定して、床下にダンパーを設け、暖気送風を事務室から食堂や大道場に切り替えられるようにしています。

多田 大道場に2台、食堂には1台、暖房用として薪ストーブを置きました。燃料の薪は、教化部の敷地内にある林を手入れして作れますし、笠間市は陶芸の町なので、窯に使う薪も豊富です。この薪を使うことは、地元貢献にもなりますね。

寺田 蓄熱は、“森の中のオフィス”で使っている破砕した石の蓄熱効果が実証されているので、笠間焼の過程でできる陶器のかけらを、窯元からいただいてきて細かく砕き、床下の一部に敷き詰めました。 

――採光面で工夫されたことは?

寺田 事務棟に大きな窓、北側には、部屋の天井高を高くして高い位置に窓をつけるハイサイドウィンドウを設けて、できるだけ自然の光を取り入れるよう心がけ、八角形の大道場には、周囲の壁に窓を設けるとともに、天井の中心部をハイサイドウィンドウにしました。

茨城県産の合法木材供給事業者認定木材を使用

――茨城県教化部会館は、延べ床面積678平方メートル(約205坪)の木造建築で、建設にあたっては木材の地産地消を目指したと聞いています。何かご苦労はありましたか。

多田 “森の中のオフィス”では、環境に配慮した木材調達を徹底し、FSC全体プロジェクト認証(*6)を取得したので、当然、茨城教区でも同様の主旨で計画を始めました。でも、残念なことに茨城県においては、FSC認証林がなく、福島県から取り寄せる必要があると分かって、一から考え直しました。

寺田 調べてみたら、FSC認証林ではないけれども、同様の主旨である合法木材供給事業者認定制度というものがあることが分かったため、構造材、外壁、建具はスギ、床のフローリングはヒノキ、家具はスギとヒノキと、100パーセント合法木材供給事業者認定木材を使い、そのうちの約90パーセントが茨城県産材です。

多田 とにかくウッドマイレージ(*7)の観点から、福島県からFSC認証材を取り寄せるのではなく、県産材の利用を優先して選択しました。

――“森の中のオフィス”では集成材を使っていますが、こちらでは使用していますか。

寺田 基本的には、普通の製材を使っていますが、大道場の梁(はり)の一部には集成材を使っています。大道場は柱が一本もない広いドーム型の空間なので、普通の製材より強度のある集成材が採用されたものです。

多田 設計施工を担当した清水建設が、コンピューターシミュレーションをし、時間をかけて強度計算を行い、設計してくれました。

一本の木も切らずに建設できた新しい教化部会館

――次に、新教化部会館が誕生するまでの経緯についてお話しいただけますか。

多田 2011年、3月11日に発生した東日本大震災によって、旧教化部会館が損壊したことがきっかけになりました。改築か、新築かということで計算してみると、どちらもほとんどコストが変わらなかったため、「それなら新しい教化部を造ろう」ということになって、2011年の秋、深江明治・茨城教区地方講師(*8)会長(当時)が建設委員長となり、2014年から私が引き継いだんです。 

木の肌の温もりが感じられる明るい雰囲気の食堂。皆さんの楽しい語り合いの場になっている

木の肌の温もりが感じられる明るい雰囲気の食堂。皆さんの楽しい語り合いの場になっている

寺田 土地探しを始めたのは、翌2012年の1月からで、あちこち70カ所ぐらい見て回りました。しかし、市街化調整区域には、宗教的な施設を建てられないなどの制約があって適当な場所がなく、「やっぱり旧教化部会館を壊して建てようか」という話になりかけた8月、生長の家国際本部から「自然度の高い所に建ててください」という要請がきたんです。それで再び土地探しを始め、11月になって現在の土地を見つけることができました。

多田 一番よかったのは、この土地がもともと資材置き場だったので、一本の木も切らずに建物を造ることができることでした。この土地を見た時、「ああ、ここしかないな」とピンとくるものがありましたね。

――設計施工を清水建設に決めたのは、どういう理由からだったんでしょうか。

寺田 2014年の春、建設業者を決めるためのプロポーザル方式(*9)の説明会を開き、4社から自然と調和した建物の提案をしていただきました。その中で、もっとも私たちの考えに近かったのが、“森の中のオフィス”を担当した清水建設だったので、5月、正式に設計施工をお願いしました。

3つの地方道場を結ぶ布教のネットワーク拠点として活用

――新教化部会館は、県内の地方道場を結ぶネットワークの中心拠点として活用されていくと思いますが、今後の構想を聞かせてください。

寺田 茨城教区には、旧教化部会館を改めた勝田道場(ひたちなか市)、東日本大震災の前、2009年に完成したつくば道場(つくば市)、2014年にできた鹿行(ろっこう)道場(鹿嶋市)、それに新教化部会館と4つの拠点があるので、それぞれをテレビ会議システムで結び、信徒の皆さんが地元の道場で、教化部の行事が見られるようにしました。茨城県も広いので、各地にいる人たちが、一斉にこの新教化部会館を目指して来るということになると、時間的にも大変だし、CO2も発生しますから、皆さんが地元で伝道しながら、しかも教化部で行われている行事なども共有できる仕組みとして、テレビ会議システムを大いに活用していきたいですね。

多田 ネットワーク型教化部会館として全国にもアピールしていければいいと思います。

――茨城県教化部会館の誕生を皮切りに、今後も続々とゼロ・エネルギー・ビルの教化部会館が実現していくものと思います。そのトップを切った茨城教区からエールをお願いします。

寺田 新教化部会館は、これまでのように、相愛会(*10)、白鳩会(*11)、青年会(*12)という縦割りの意識でいたらできていなかったと思います。自然と調和したゼロ・エネルギー・ビルである教化部会館を建てるということで、皆さんの心が一つにまとまり、調和したからこそできたんですね。ですから、ゼロ・エネルギー・ビルを建てるにあたっては、「こうでなくてはならない」という既成概念を取り払う決意を持って臨んでいただければいいかなと思います。

多田 「ゼロ・エネルギー・ビルの教化部会館を造って本当に良かった」というのが実感です。信徒の皆さんも、ここに来ると「心が洗われる」とおっしゃるんですが、それは、この建物の造りに限らず、使っている電気が原発ではなく、太陽からいただいた自然のエネルギーによるものだという安心感と、その誇りから生まれるものだと思います。茨城教区の信徒の皆さんには、「私たちは、生長の家が進めている『神・自然・人間の大調和』実現を目指す運動の最先端を走る教化部を持っている」という喜びがあるんですね。そういう意味でも、一つでも多くのゼロ・エネルギー・ビルの教化部が誕生することを心から願っています。

――本日はありがとうございました。

茨城県教化部会館
設計施工 清水建設株式会社
建設地 茨城県笠間市泉字山本
敷地面積 5,725.28㎡(開発面積) 
10,869.23㎡(全体面積)
規模、構造 地上1階、木造
建築面積 711.84㎡(215.33坪)
延床面積 678.73㎡(205.32坪)
総工費 約5億1千万円(土地の取得含む)

 

*1=創エネ、省エネの技術により建物内の年間エネルギー使用量を実質ゼロにするビルのこと
*2=生長の家の布教・伝道の拠点
*3=ヒートポンプ技術を利用し、空気の熱で沸かすことができる電気給湯器のうち冷媒として、フロンではなく二酸化炭素を使用している機種の総称
*4=感謝の気持ちで行う労働奉仕
*5=合宿形式で生長の家の教えを学び、実践するつどい
*6=環境、社会、経済の観点から森林管理が適正に行われているかどうかを審査・認証する制度
*7=国内及び地方で生産された木材を国内で消費することにより、木材を輸送するエネルギーを削減して、地球温暖化を防ぎ循環型社会の構築を目指すこと
*8=生長の家の教えを居住地で伝えるボランティアの講師
*9=主に業務の委託先や建築物の設計者を選定する際に、複数の者に目的物に対する企画を提案してもらい、その中から優れた提案を行った者を選定すること
*10=生長の家の男性の組織
*11=生長の家の女性の組織
*12=12歳以上40歳未満の生長の家の青年男女の組織