西田宗敬(にしだ・むねたか)さん(一燈園「燈影新エネルギー開発株式会社」代表取締役社長) 聞き手/編集部(遠藤勝彦・生長の家本部講師補) 写真/堀 隆弘 西田宗敬さんのプロフィール 1965年、京都市生まれ。一燈園生活の創始者、西田天香師の曾孫で、現在、一燈園の当番(理事長)を務める西田多戈止(たかし)さんの長男。「一般財団法人 懺悔奉仕光泉林」に所属。その一方、自然との共生を目指し、2012年に設立された「燈影新エネルギー開発(株)」代表取締役社長として、大分県由布市湯布院町で、「OTE大分温泉熱バイナリーサイクル発電所」を展開し、持続可能なエネルギーの開発と温泉熱を利用した農業ハウスの設計など、発電後の余剰熱水の2次利用による事業に取り組んでいる。

西田宗敬(にしだ・むねたか)さん(一燈園「燈影新エネルギー開発株式会社」代表取締役社長)
聞き手/編集部(遠藤勝彦・生長の家本部講師補) 写真/堀 隆弘

一燈園の歴史と、その教えに基づいて展開されている地熱発電について語る西田宗敬さん
西田宗敬さんのプロフィール
1965年、京都市生まれ。一燈園生活の創始者、西田天香師の曾孫で、現在、一燈園の当番(理事長)を務める西田多戈止(たかし)さんの長男。「一般財団法人 懺悔奉仕光泉林」に所属。その一方、自然との共生を目指し、2012年に設立された「燈影新エネルギー開発(株)」代表取締役社長として、大分県由布市湯布院町で、「OTE大分温泉熱バイナリーサイクル発電所」を展開し、持続可能なエネルギーの開発と温泉熱を利用した農業ハウスの設計など、発電後の余剰熱水の2次利用による事業に取り組んでいる。

 多くの火山を有し、地熱資源量が世界第3位と言われる日本。しかし、現在、日本全体の総発電量に占める地熱発電量はわずか0.2%に過ぎない。そんな中、「自然が与えてくれる力をお借りする」という宗教的信念の下(もと)、地熱発電に乗り出した一燈園(いっとうえん)「燈影(とうえい)新エネルギー開発株式会社」代表取締役社長の西田宗敬さんと、同副社長の中路ススムさんに、一燈園の歴史、地熱発電所の現状、地熱発電にかける思いや今後の抱負などについて伺った。

生長の家とも縁が深い一燈園の歴史とその教え

──私ども生長の家の創始者であります谷口雅春は、一燈園さんと大変ご縁が深く、生長の家の年史を見ますと、大正10年、一燈園を始められた西田天香(てんこう)先生のご著書『懺悔(ざんげ)の生活』を読んで感動し、当時、京都・鹿々谷(ししがたに)にあった一燈園を訪問して、“同人(どうじん)”の皆さんと共に托鉢(たくはつ)をしたと書かれています。また、一燈園さんの機関誌に多数の論文を発表させていただいてもいます。地熱発電について伺う前に、まず、一燈園さんの歴史を教えていただけますか。

inoti101_rupo_2西田 一燈園(本部・京都市山科区)は、1904年(明治37年)、西田天香が創設した懺悔奉仕団体のことで、宗教法人ではないんですね。法人格としての正式名称は、「一般財団法人 懺悔奉仕光泉林(こうせんりん)」と言い、現在の当番(理事長)は、天香の孫、西田多戈止(たかし)が務めており、私はその長男で、天香の曾孫(ひまご)になります。

 1893年(明治26年)、天香は21歳の時に、北海道に農民100戸を引率(いんそつ)して500町歩(ちょうぶ)の開拓事業に従事しましたが、不作のため、出資者と農民の間で激しい対立が始まりました。

 どちらも悪くはないのに、なぜ争わねばならぬのかと考えた天香は、争いの根源は食べること、あるいは食の求め方にあると思い至りました。一切を捨て、無一物(むいちぶつ)の路頭の中で、争いの種(たね)を持たぬ食があるかを求め、3日間断食(だんじき)した後、今度は、母親と母乳を吸う赤子(あかご)の関係に気づいたのです。

 母親は無償(むしょう)の愛で乳を赤子に与えます。赤子は泣いて乳を求めます。赤子が乳を飲まなければ母親は苦しみます。その乳は、赤子が生まれたら母親の乳房から出ます。それは自然の摂理(せつり)です。すなわち、一つの生命が誕生したら、大自然はその新しい命のために食物を用意してくれているということです。

 赤子は無邪気(むじゃき)なものです。元気であれば運動をし、空腹(くうふく)や困った時があれば泣いて知らせ、疲れたら寝ます。無邪気そのものであることが人に愛されるのです。

 32歳の天香は、「赤子のように元気があれば、手に箒(ほうき)や雑巾(ぞうきん)を持って運動し、空腹になったら人に知らせよう。食を与えられなければ、赤子は人を恨(うら)むこともなく死んでいく。自分も死んだらよい。それが自然にかなった生活であり、それが争いの種を持たない生活だ」と決心し、托鉢(たくはつ)をして、そこで生かされていくという一燈園生活が始まったのでした。

 すると、そうした信条に賛同した人たちが、天香のもとに集まってくるようになりました。谷口雅春先生もその一人だったわけで、そのように人が集まってきたため、銀閣寺の近くにある鹿ヶ谷(ししがたに)に、「一燈園の拠点として使用して欲しい」と建物が寄付されました。しかし、やがてそこも手狭(てぜま)になって山科の地を捧(ささ)げられ、現在に至っているというわけです。

無所有奉仕と便所掃除の下座(げざ)の行(ぎょう)

──長い歴史を持っておられる一燈園さんですが、現在は、どのような活動をしているんですか。

西田 光泉林では、家族を持ちながら共同生活を営んでいる人たちを「同人」と呼んでいます。この中には、大工、編集者、農業就労者などさまざまなスキルを持った人がいるので、そうした人たちが、建築、出版、農業などの部門に分かれて、奉仕として就労しています。そして、同人の皆さんが働いて得た収入は、自分のものとせず(無所有奉仕)、「おひかり」(神や仏)に捧(ささ)げられ、積み立てられます。それは、「すべては預(あず)かりもので“私のもの”というものはなく、必要なものは必要に応じて、おひかりから与えられる」という一燈園の教えに基づくものなんですね。

──他にはどんな活動を?

西田 一例を挙げますと、京都府や滋賀県を中心に、全国各地の家庭や学校、事業所などをアポなしで訪問し、無償(むしょう)で便所掃除をさせていただく“行願(ぎょうがん)”という活動を行っています。昨今(さっこん)は治安が悪くなったせいか、警戒されて活動しにくくなってはいますが、報酬(ほうしゅう)を得ずに、人が嫌がる便所掃除をすることに対して、感謝の意を表してくださる家も少なくありません。

大分県に50キロワットの地熱発電2基を設置

──生活の中で下座(げざ)の行(ぎょう)を実践される一燈園さんが、なぜ、自然エネルギーの利用、中でも地熱発電に取り組まれたのかをお聞かせください。

西田さんと共に、地熱発電に取り組んでいる中路ススムさん 中路(なかじ)ススムさん(同社代表取締役副社長)

中路(なかじ)ススムさん(同社代表取締役副社長)
西田さんと共に、地熱発電に取り組んでいる中路ススムさん

西田 なんと言っても、2011年に起きた福島第一原発の事故が大きかったですね。その悲惨な様子を目(ま)の当たりにして、これからは原発に頼らず、自然エネルギーを利用するというもう一つの道を具現化することが、持続可能な社会の実現に繋(つな)がると思ったわけです。そんな時、中路が別府市で温泉の独占的(どくせんてき)使用権を持っていることを知り、それを利用して地熱発電ができないかということで、翌2012年、燈影新エネルギー開発を設立し、地熱発電を始めるに至ったのです。

──御社(おんしゃ)が開設した地熱発電所(大分県由布市湯布院町)とは、どのようなものなんでしょうか。

中路 正式名称は、「OTE大分温泉熱バイナリーサイクル発電所」と言います。OTEとは、合同出資している「おおいた自然エネルギーファンド投資事業有限責任組合」(ファンドGP:大分ベンチャーキャピタル株式会社)のO、「燈影新エネルギー開発(株)」のT、メンテナンスなどを行う「江藤産業株式会社」のEの頭文字をとったものです。 

 温泉井(おんせんせい)のポテンシャルとしては、200キロワットぐらいの発電能力があるんですが、1本の温泉井の蒸気を2つに分けて、九州電力の規制に基づき、地権者の日野朝光(ともみつ)さん(湯布院フォレストエナジー(株)代表取締役)と50キロワットずつ発電しています。inoti101_rupo_4

──発電の方法は、どのようなものか教えてください。

西田 地熱発電の技術方式には、主に「バイナリーサイクル」「ドライスチーム」「フラッシュサイクル」の三つがあり、私たちの地熱発電所は、バイナリーサイクル方式で行っています。これは、地下の温度や圧力が低く、他の方式で発電を行うことが不可能な場合、代替フロンなど水より低沸点(ていふってん)の熱媒体を、蒸気や熱水で沸騰させてタービンを回し、発電させる方式のことです。

 発電能力は小さいんですが、発電所の占有面積が比較的小規模で済み、既存(きぞん)の温泉井を使用することも可能で、確実性が高いというメリットがあります。日本では、このバイナリーサイクル発電に適した地域が多いと言われています。

──発電した電気は、売電されているんですか?

中路 現在は、2017年に改正されたFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)に基づき、1キロワットアワーあたり40円(消費税別)で、九州電力に売電しています。

発電に利用した熱水を再利用し、ハウスでキクラゲを栽培

──発電に利用した後の熱水は、捨てているのでしょうか?

上/「OTE大分温泉熱バイナリーサイクル発電所」の全貌。左が発電所、右の白い建物が、発電に使った熱水を再利用し、キクラゲを栽培しているハウス 下/熱水による蒸気が上がる地熱発電所で

上/「OTE大分温泉熱バイナリーサイクル発電所」の全貌。左が発電所、右の白い建物が、発電に使った熱水を再利用し、キクラゲを栽培しているハウス 下/熱水による蒸気が上がる地熱発電所で

西田 いいえ。弊社(へいしゃ)が設計した「湯布院フォレストエナジー(株)」所有の農業ハウス(写真右端の白い建物)に熱水を戻して温室にし、キクラゲを栽培しています。ちょっと前に収穫が終わってしまっているので、残念ながら現物をお見せすることはできませんが。

 この辺(あた)りは、冬の平均最低気温がマイナス7度と寒い地域ですが、熱水を回すことで、ハウス内は20度から25度に保(たも)たれるようコンピュータで管理されています。所有者が常駐しているわけではないので、急激な温度変化が起きたり、換気(かんき)や水やりの必要性が生じた場合は、スマートフォンに連絡がきて、スマートフォンから対処できるシステムになっています。

中路 一燈園は、食を見出す農業を一番大事なものと考えているので、熱水を再利用してキクラゲを育てるというのも、その活動の一環なんですね。

西田 一燈園では、「報恩感謝の気持ちで、何か社会の役に立つことをさせていただく」という教えの下(もと)、事業奉仕活動として、劇団、印刷業、工務の他、種苗(しゅびょう)の斡旋(あっせん)、生産、販売、関連資材などを扱う「(株)のうけん(農事研究所)」(京都市山科区。代表取締役・谷野寅蔵(とらぞう))という事業も行っています。「のうけん」は、食の源である種苗・農業分野で農業技術を普及し、優良種苗の情報を提供することで、農家に貢献しようというものです。

キクラゲを栽培しているハウスの内部。室内は、熱水で常時20~25度に保たれている

キクラゲを栽培しているハウスの内部。室内は、熱水で常時20~25度に保たれている

中路 彼(西田)は、「のうけん」で修養していた経験があり、椎茸(しいたけ)栽培指導員でもあるんです。ですから、地熱発電所を造る際も、熱水を利用してどんな農作物を育てるかを、まず考えてから始めました。土地をお借りして地熱発電所を造らせてもらうのですから、「私たちは小作人」という意識で農業ハウスを造ることを提案し、彼が持っているノウハウを生かして、キクラゲを栽培するハウスを設計したんです。

さまざまなトラブルを乗り越え一歩一歩前に進んで

──お話を聞いて、資源を無駄にせず、有効活用されている様子がよく分かりました。ところで、地熱発電所ができて6年が経つわけですが、そのメンテナンスは、どうされているんでしょう?

中路 フルメンテナンスは、4年に1回です。通常は、この発電所の地権者である日野さんが、別に125キロワットの地熱発電所を持っておられるので、日野さんにお願いし、何かトラブルが起きたら連絡をもらい、地熱発電所の共同出資者である江藤産業に対処してもらっています。

──始めた当初は、トラブルもありましたか。

中路 もうトラブル続きで(笑)、トラブルと向き合いながら、一歩一歩前に進んできたという感じです。もちろん、そうしたことが起きないように設計して着手するわけですが、やってみないと分からないことがたくさんありますね。

西田 気温の変化による発電量の増減や、発電量の増加による九州電力からの強制停止という規制への対処など、安定した発電を行うためには細(こま)かな制御(せいぎょ)が必要なんですね。こうしたことも、実際やってみて初めて分かったことで、生長の家さんも、別府市において地熱発電を行われるに当たっては、最初はトラブルがつきものだと考えて取り組まれたらいいと思います。

助成の幅が広がり、地熱発電の機運が高まる

──今後の地熱発電の展望について、どうお考えですか。

西田 地熱発電には、事業促進のためのいくつかの助成制度があります。その一つが「地熱開発促進調査」です。これは、地熱資源の可能性のある地域の中から、探査リスクなどによって開発調査が進んでいない有望地域について、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が先導的な調査を行い、民間地熱開発事業者等による地熱発電の開発を促進することを目的としています。

 また、調査井(ちょうさせい)や生産井(せいさんせい)・還元井(かんげんせい)の掘削(くっさく)、発電機や配管などの設置に対し、補助金が支給されるのが「地熱発電開発事業」で、これは、NEDOを通して行われていましたが、2012年からJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)が実施するようになりました。

 このJOGMECからの助成のうち、2016年に始まった「地熱資源開発調査事業」では、従来の促進調査と同様、地熱資源調査の助成を行うとともに、地表調査に関連する費用や、噴気(ふんき)テストを伴(ともな)わない坑井(こうせい)調査について、掘削並びに付帯する工事費を2分の1を上限として補助されます。

 他にも助成制度があるので、今後、地熱発電への機運が高まっていくのではないかと感じています。

国立・国定公園内の規制緩和が地熱発電促進の追い風に

──日本では地熱発電が進んでいませんが、その要因として、「地熱発電の適地のほとんどが国立・国定公園内にある」ことが挙げられています。これについては、規制緩和が行われたと聞いていますが……。

西田 そうですね。環境省は、国立・国定公園内での地熱発電を厳しく規制してきましたが、2012年、CO2を排出しない再生可能エネルギー拡大のため、「国立・国定公園内における地熱発電の取り扱いについて」を改正し、2つの規制緩和が実現しました。

 1つ目は、これまで13メートルとしてきた国立・国定公園内の発電設備を格納(かくのう)する建屋(たてや)などの高さを、周辺の景観に支障(ししょう)を及ぼさないよう配慮することを条件に撤廃(てっぱい)したこと。2つ目は、地熱資源を開発する上で必要な掘削の対象範囲を拡大したことです。

inoti101_rupo_7 国立・国定公園は、「特別保護地区」「特別地域」「普通地域」に分けられ、さらに特別地域には、第1種から第3種の段階があり、従来は、地熱資源を開発するための掘削は、第2種、第3種の特別地域と普通地域にしか認められていませんでしたが、第1種特別地域の地熱資源も開発できるようになったんです。こうしたことも、地熱発電を促進していく上で、追い風になると思っています。

第2、第3の地熱発電所建設へ自然エネルギーテーマパークの構想も

──今後、新しく地熱発電所を建設する予定はありますか。

西田 大分県玖珠郡九重町(くすぐんここのえちょう)で建設の話が進んでいまして、現在、調査のための温泉井戸の掘削が終わった段階です。さらに、鹿児島県指宿(いぶすき)市でも、実現に向けて調査中といったところです。

中路 「地熱発電は、原発に代わる安定したベースロード電源になり得る可能性を秘めている」と言ったら言い過ぎかもしれませんが、ともかく太陽光、風力、地熱などの自然エネルギーを活用することで、エネルギー問題は解決できる、原発ではない選択肢(せんたくし)もあるんだということを、地熱発電を通して未来の人たちにも提示したいと念願しています。

──最後に、今後の抱負をお聞かせください。

西田 弊社(へいしゃ)では、地熱発電を基盤に、温泉熱を利用した養殖プラント、樹上生活ツリーハウス、水素・酸素製造プラント、商業・企業施設などを造り、自然エネルギーのテーマパーク「冒険体験型エネルギー製造複合観光施設」にしたいという構想を持っています。そうした施設で、今生かされていることに感謝し、報恩感謝の気持ちで社会の役に立つことをして生きる─これが、自然が与えてくれる力をお借りしている私たちの務めではないかと思っています。

──私ども生長の家でも、環境問題の解決が喫緊(きっきん)の課題と考え、「神・自然・人間は本来一体である」という信仰に基づいて、人間を含む自然界全体を破壊する原子力には頼らず、再生可能な太陽光発電などの自然エネルギーの利用を促進しています。その一環として、現在大分県別府市での地熱発電所建設にも取り組んでいますが、この分野で先行されている一燈園さんの知見(ちけん)やアドバイスが、大変参考になったと承知しています。
 今後も引き続き情報交換をさせていただきながら、自然エネルギーの拡大ということで連携(れんけい)できればと考えています。

西田 中路 地熱発電に関してお尋(たず)ねがあれば、喜んで協力させていただきます。

──本日は、誠にありがとうございました。 (2018年4月10日、大分県由布市湯布院町「奧湯の郷」にて)inoti101_rupo_8