鈴木邦夫さん│国際連合食糧計画WFP協会事務局長(2月1日、横浜市パシフィコ横浜、国連WFPにて) 聞き手:澤田伸史さん(生長の家国際本部運動推進部次長、生長の家参議、生長の家本部講師) 鈴木邦夫さんのプロフィール 1958年、名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。大手広告代理店に入社し、日系、外資系を問わずさまざまな業種・業界の営業担当を歴任。国内外のコミュニケーション、マーケティング計画、実施に携わる。その間、オランダ、中国に赴任し、国際広告にも従事。現在、国際連合食糧計画WFP協会事務局長。趣味は読書とバイク。家族は妻と子供2人。

鈴木邦夫さん│国際連合食糧計画WFP協会事務局長(2月1日、横浜市パシフィコ横浜、国連WFPにて)
聞き手:澤田伸史さん(生長の家国際本部運動推進部次長、生長の家参議、生長の家本部講師)
鈴木邦夫さんのプロフィール
1958年、名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。大手広告代理店に入社し、日系、外資系を問わずさまざまな業種・業界の営業担当を歴任。国内外のコミュニケーション、マーケティング計画、実施に携わる。その間、オランダ、中国に赴任し、国際広告にも従事。現在、国際連合食糧計画WFP協会事務局長。趣味は読書とバイク。家族は妻と子供2人。

世界に広く蔓延し、深刻の度を増していると言われる飢餓問題─。そうした飢餓の現状と、今、私たちがなすべきことは何かなどについて、国際連合食糧計画WFP協会事務局長・鈴木邦夫さんに伺った。

国連WFP─国の自立を目的に幅広い支援活動を展開

─WFP国際連合食糧計画 (以下、国連WFP)とは、どのような目的で、いつ創設され、現在、世界でどんな活動をしているのかについてお話しいただけますでしょうか。

鈴木 国連WFPは、1961年に国連唯一の食糧支援機関として設立され、本部はローマにあります。日本では、1996年に日本事務所が開設され、個人・企業・団体の皆様の支援窓口として当協会が1999年1月に設立されました。

 具体的な活動としては、世界の飢餓と貧困をなくすことを使命として、緊急食糧支援、学校給食支援や母子栄養支援、食糧支援を通じた社会経済発展のサポート、支援物資の輸送などを行っています。2014年の実績では、「世界の飢餓状況2015」ハンガーマップ(18頁)を見ると、栄養不足の人口の割合が「高い」「非常に高い」アフリカ及びアジアの開発途上国を中心に82カ国、8,000万人に対して、320万トンの食糧支援を実施しました。国連WFPの職員は約1万5千人ですが、そのうちの90%以上が、支援を実施している現地での活動に携わっています。

  補足しますと、国連WFPでは政府の自助能力が低い国を優先的に支援しており、基本的にはその国自身に力がある場合は支援を行いません。「その国の自立を支援すること」を第一の目的にしているからです。

─世界と日本とでは、活動の内容はどのように違うのでしょうか。

世界の飢餓状況を示すハンガーマップ。栄養不足人口の割合が高いエンジ色、オレンジ色は、アフリカやアジアに多い

世界の飢餓状況を示すハンガーマップ。栄養不足人口の割合が高いエンジ色、オレンジ色は、アフリカやアジアに多い

鈴木 支援を必要とする世界の国々では、現地に事務所をおいてさまざまな支援活動を行っています。日本においては、政府、民間との連携、募金活動、広報活動を行い、当該国の現地での活動を支えています。ちなみに、日本における国連WFPとは、国連機関である国連世界食糧計画(WFP)と、それを支援する認定NPO(非営利団体)法人である国連WFP協会、2団体の総称です。

緊急支援、学校給食支援、母子栄養支援、地域支援、輸送支援

─国連WFPの、具体的な活動内容について教えていただけますか。

鈴木 活動は大きく5つに分類されます。1つ目は緊急支援です。自然災害や紛争などにより食糧の入手が困難になった人々に食糧を届けることで、現在のシリアや南スーダンなどで行われているものです。

 2つ目は、母子栄養支援活動で、母親のお腹の中にいるときを含めて最初の1千日間の栄養が、子どもの心身の成長に非常に重要なため、妊娠・授乳中のお母さんから乳児に至るまでの栄養支援を行っています。

 3つ目は学校給食の支援。4つ目は地域支援で、公共設備や農地などを整備する際、働いた人に対し、労働の対価として食糧や現金を提供します。整備事業中は食べ物の心配がなく、完了すると地域全体の暮らしが良くなります。最後に、国連WFPは国連随一の輸送集団として、輸送支援を行っています。緊急時には世界における支援の「輸送のリーダー」の役割を担い、他の国連機関や支援団体が被災地や紛争地へ支援者や物資を輸送する手助けをします。

─学校給食支援について、詳しくお話しいただけますか。

鈴木 現在、世界には、学校に行けない子どもが5,800万人、学校に行けたとしても給食がなく、お腹が空いたまま授業を受けている子どもが6,600万人いると言われています。そういう子どもたちに対し、学校で給食を提供するのが、学校給食支援ですが、なぜ、そうするのかと言いますと、給食を提供することで、親が子どもを学校に行かせるようになるからなんですね。貧困状況では、親が子どもを働かせることが多いため、「必要がない」と子どもを学校に行かせない。ところが、学校に行けば子どもたちがご飯を食べられるとなると、親が子どもを学校に行かせるようになるんです。

 学校給食を提供することで、就学率が上がり、就学率が上がると、就職の機会も増え、収入も増え、長い目で見ると、富の不均衡の改善、経済的な自立に繋がる。教育の普及は国の発展にも寄与するため、社会全体がそうした流れになるように学校給食の支援を行っているんです。

世界の9人に1人が飢餓に直面している現実

─現在、世界の飢餓人口はどれくらいあるのか、具体的な数値を挙げていただけますか。

鈴木 今、世界の人口は72億9,400万人で、そのうちの7億9,500万人が飢餓に苦しんでいます。世界では、実に9人に1人が飢餓に直面していることになります。

─大変な数ですね。その一方で、国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)、国連WFPが年に一度発行している「世界の食料不安と現状 2014年報告」によると、世界の飢餓人口は、過去10年間で1億人以上、1990~92年以降では2億人が減少していると言われていますが……。

鈴木 そうですね。人口で言えば、アジアが顕著で、2億人以上が減少しています。また比率で言えば、アフリカ、特にサハラ以南のアフリカ(サブサハラ)では、33.3%から23.8%と約10ポイント改善されています。しかし、忘れていけないのは、まだまだ取り残されているエリアが多いということです。

─減少したのは、支援が行き届いて飢餓が改善されてきたということなのでしょうか。

鈴木 もちろん支援もありますが、一番の要因は経済発展です。その国の経済が発展して、食べられるようになったということなんですね。ただその一方で、先ほど申し上げましたように、飢餓が悪化している国もあるということを見逃してはなりません。特に自然災害、紛争が起こっている地域については、状況は悪化していて、より深刻になっているという現状があるのです。

─現在、特に飢餓が深刻なのは、どの地域、どの国になるのですか。

鈴木 先ほどのハンガーマップ(上図)を見ていただくと、アフリカや一部中東に、飢餓人口の割合が最も高いエンジ色、あるいはデータが取れないグレー色の国が多いことが分かると思います。特にアフリカのサハラ砂漠以南では、およそ4人に1人が慢性的な飢餓に苦しんでおり、世界で最も人口が多いアジアも、5億1,200万人の飢餓人口を抱えています。

 今、発生している紛争、自然災害以外にも、今年(2016)は、エルニーニョ(*1)によって、アフリカや中米などで干ばつが発生するという警告が出ていますので、エチオピア、マラウイ(*2)、マダガスカル、ジンバブエ(*3)などでは、深刻な事態になることが予想されます。

─データが取れない、グレー色の国とは、どういう所なんですか。

鈴木 その中のシリアに関して言いますと、ご存じのように紛争地域で、国連が十分中に入れないという状態です。首都ダマスカス近郊のマダヤ、北部イドリブ県のフアとケフラヤの3つの町では、6万人近くの人々が包囲作戦により閉じ込められているとされ、昨年(2015)10月以来、食糧やその他の支援物資の搬入が途絶えていましたが、今年(2016)1月11日に、国連WFPが4万人の1カ月分の食糧をマダヤに、2万人の1カ月分の食糧をフア、ケフラヤにそれぞれ届けました。国連WFPが届けた食糧には、米、小麦粉、油、塩、砂糖、缶詰、豆が含まれていました。特に、調理が不要ですぐに食べられる缶詰を優先して配布しています。

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 国連WFPは、毎月シリア国内で400万人以上に対して食糧支援を行っていますが、包囲下にある地域など立ち入りの難しい地域に住む人々へ人道支援物資を届けるために、すべての紛争当事者に対して、これらの地域への無制限のアクセスを継続して求めてきました。
 現地の人たちは、国連WFPが去り、二度と戻ってこないことを一番恐れています。これらの地域へ自由に立ち入り、定期的に人道支援物資を届けられるようにすることが、最重要課題なんです。

生産量の3分の1を廃棄。飢餓を促進させる食料廃棄と食品ロス

─食糧自給率が先進国で最低(26%)の日本では、年間5,500万トンの食糧を輸入しながら世界の食料援助総量470万トンをはるかに上回る1,800万トンもの食糧を廃棄しています。こうした現状をどう思われますか。

鈴木 2011年のFAOの発表によると、世界では、生産量の約3分の1にあたる年間13億トンもの食料が失われたり廃棄されたりしていますから、確かに食品ロスや廃棄は、全世界で取り組むべき大きな課題だと言えます。実は、飢餓が深刻なアフリカでも、食品ロスの問題があるんです。これは、農作物を生産しても、マーケットまでのアクセスがないため、売りに行けない、備蓄や輸送の正しいノウハウがないことなどが原因で無駄になってしまうというもので、先進国の食糧廃棄とはまったく異なります。

 国連WFPは、支援活動に使う食糧の多くを支援を行う地元で購入していますが、小規模農家から余っている作物を適正価格で買い取り、学校給食の材料にするなどの工夫をしながら、支援活動を行っています。

飢餓問題解決へ私たちが貢献できること

─飢餓の現状とその解決に向けて、国連WFPの皆さんが活発な活動を展開されていることがよく分かりました。では、今、私たちが飢餓問題解決に向けて貢献できることとはなんでしょうか。

鈴木 まずは世界の飢餓の現状を知っていただくこと、そして、その解決に取り組む私たちの活動にご理解をいただき、ご寄付の形で貢献していただければありがたいと思います。国連WFPの活動はすべて、各国政府からの拠出金と民間(個人、企業)からの寄付の上に成り立っています。ご寄付については、使途を指定してのご寄付、毎月定額をご寄付いただく形など、皆さまのお気持ちに合わせて貢献していただけるようになっています。

 また、私たちの活動は、ボランティアの方々の協力抜きには行えません。随時登録を受け付けておりますので、イベントや日常業務まで、さまざまな形でご協力いただければと思います。

─寄付しても、具体的にどう飢餓救済に役立つのか分からないという人もいると思いますが……。

鈴木 下図の「寄付でできること」を見ていただくと分かりますが、3,000円で緊急事態に命をつなぐ栄養強化ビスケットを20人に届けられ、5,000円だと子ども1人に栄養たっぷりの学校給食を1年間も届けることができます。さらに1万円だと、1カ月もの間、1家族を緊急食糧支援で支えることができます。ですからランチを何回かセーブすれば、子ども1人に1年間、夢と希望を与えることができ、それがまた、子どもたちが住む国の将来の発展に繋がっていくと考えていただくと、具体的なイメージが湧いていいかと思います。

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「ゼロハンガー」実現に向け世界の人々と手を取り合って

─生長の家では、「自他一体」という教えに基づき、飢餓問題を身近に感じるために、生長の家国際本部の職員食堂で月に一回、「一汁一飯の日」(*4)を設けて、食費の一部を募金し、信徒にも実践を促しているほか、ウェブサイト上で、飢餓救済のワンクリック募金も奨励しています。鈴木事務局長には、昨年、生長の家が寄付した「ネパール大地震緊急募金」への感謝状授与のため、生長の家国際本部をご訪問いただきましたが、その際の印象などをお聞かせください。

鈴木 昨年(2015)11月に生長の家国際本部を訪問させていただき、大塚和富・参議長をはじめ皆さまからお話を伺い、貴教団の真摯な姿勢と誠実なお考えに大変感銘を受けました。国際本部の建物は、ゼロ・エネルギー・ビル(*5)と聞いて驚くとともに、お考えになっていることをちゃんと形にされているということがよく分かり、素晴らしい活動をされていると思いました。食堂でノーミート料理もいただきましたが、「一汁一飯」の日も設けて、食の大切さ、ありがたさを実感されているということで、実践に重きを置かれているということを実感させていただきました。

 生長の家の皆さまには、これまでにも飢餓募金に、ご支援、ご協力をいただいていますが、今回、『いのちの環』に国連WFPの取り組みが掲載されることで、さらに支援の輪が広がると思います。今後も、生長の家の皆さまをはじめ、世界の人々と力を合わせて、「ゼロハンガー」、すなわち飢餓をゼロにするための支援活動に取り組んでいきたいと思っています。

─私どもも一層、飢餓救済の啓発活動に力を入れてまいります。本日はありがとうございました。

*1=太平洋赤道域の日付変更線付近から南米のペルー沿岸にかけての広い海域で海面水温が平年に比べて高くなり、その状態が1年程度続く現象のこと
*2=アフリカ大陸南東部に位置する国
*3=アフリカ大陸南部に位置する国
*4=食事を通した四無量心(慈・悲・喜・捨)の実践として、月1回の昼食または夕食を、ご飯と汁物だけにする日
*5=創エネ、省エネ技術により、建物内の年間エネルギー使用量を実質ゼロにするビルのこと