報告者:生長の家国際本部広報・クロスメディア部 永井 暁(ながいあかつき)さん(生長の家本部講師補)写真/永井 暁 国立公園に残存する多様性のある森には、大小さまざまな樹木が自生している。左が永井さん

報告者:生長の家国際本部広報・クロスメディア部 永井 暁(ながいあかつき)さん(生長の家本部講師補)写真/永井 暁
国立公園に残存する多様性のある森には、大小さまざまな樹木が自生している。左が永井さん

 バリ、ジャワ、ボルネオ、スマトラなど約1万7,000もの大小の島々が、東西5,200キロにわって連なるインドネシア──。

 日本人には、海のリゾート地というイメージが強いインドネシアだが、実はアジアで最大規模の熱帯林を有し、世界で最も生物多様性が高い国として知られる。中でも、大きな面積を占めるボルネオ島、スマトラ島は、多種多様な樹種が混在する豊かな熱帯林に覆(おお)われ、トラ、ゾウ、サイ、オランウータンなど、島固有の希少価値の高い大型ほ乳類が生息する地である。

中:左奥はペカンバル市街、右奥から手前にかけてアブラヤシ農園が広がる/下:WWFスタッフや公園周辺でエコツアーを企画・運営している地元住民とともに

中:左奥はペカンバル市街、右奥から手前にかけてアブラヤシ農園が広がる/下:WWFスタッフや公園周辺でエコツアーを企画・運営している地元住民とともに

 しかし、その一方で、近年、伐採と開発による森林減少が進み、生物多様性に溢(あふ)れた本来の森が急速に失われるという危機に瀕(ひん)している。

 生長の家では、そうした状況が特に顕著なスマトラ島を支援するため、2015年、インドネシア各地で多様な森林保全を実施しているWWFジャパン(公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン)による「植林を含むWWFジャパンスマトラ森林保全プロジェクト」に対して、500万円を寄付した。

 この寄付金は、谷口雅宣・生長の家総裁の著書(谷口純子・生長の家白鳩会(*1)総裁の共著を含む)の益金から250万円と、生長の家月刊誌『いのちの環』(本誌)をはじめ、『白鳩』『日時計24』(*2)の1部につき1円の寄付金のプール分から拠出(きょしゅつ)した250万円によるもの。昨年(2016)1月から3月、同国スマトラ島中部にあるテッソ・ニロ国立公園の一角(約5ヘクタール)に約2,000本のシェアランなどの苗木が植樹されるとともに育林費用にも活用された。

 これを受け、生長の家国際本部では、昨年(2016)12月5日から7日、広報・クロスメディア部の記者(永井暁)をインドネシアに派遣し、苗木の生長ぶり、現地スタッフの活動の様子、スマトラ島の現状について取材した。

赤道直下の国、インドネシア ペカンバルからテッソ・ニロへ

 昨年(2016)12月5日の午前5時、記者は、東京・羽田空港を発(た)ち、インドネシアに向かった。経由地のジャカルタまで7時間、そこから2時間のフライトを経て、午後2時、スマトラ島リアウ州にあるぺカンバル空港に到着した(日本との時差は2時間)。

 空港のロビーから外に出ると、気温は28度。熱帯地方特有の熱い空気が体を包み込んだ。

 インドネシアは、赤道直下(ちょっか)の熱帯性気候のため、乾季(5月~10月)と雨季(11月~4月)がある。乾季はほとんど雨が降らず、湿度も低いので過ごしやすいが、今回訪れたのは雨季。しかし、その日は晴天に恵まれたこともあって、日本の梅雨(つゆ)のような蒸(む)し暑さはなく、長袖でも過ごせるほどのさわやかさだ。

 空港で、生長の家の植樹場所に案内してくれるWWFジャパンの橋本務太(むたい)さん(自然保護室、森林グループ長)を含む日本人スタッフ3人、WWFインドネシアのスタッフ7人と合流。空港から車で20分ほど離れたWWF事務所に出向き、打ち合わせを行った後、3台の車に分乗(ぶんじょう)して、午後5時、ペカンバルから直線距離で南東約150キロのところにあるテッソ・ニロ国立公園に向かった。

過去30年間で森林面積が半減 日本人の暮らしと密接な関係

 スマトラ島は、47万3,500平方メートルの面積を持ち、日本国土の1.25倍。1985年時点での森林面積は、2,530万ヘクタールと島の57パーセントを占めていたが、2014年までに1,390万ヘクタール(日本の国土面積の約3分の1)が消失してしまい、過去30年間で、その半分以上の森林が失われたという。

 森林の消失は、取りも直さず、そこに暮らす動物たちもすみかを失ってしまうことを意味する。その結果、動物たちは人里に現れて農作物を荒らすなど、人間の利害と衝突し、害獣とみなされて駆除(くじょ)されてしまう。

 また、森林が失われることで動物が人目につきやすくなるため、トラの毛皮やゾウ牙(げ)などを目的とした密猟(みつりょう)が急増して、島固有の動物の個体数が減り、貴重な生物多様性が失われる。

 こうした森林減少の問題は、日本の私たちの暮らしと無縁ではない。日々の暮らしに欠かせないコピー用紙やパルプ、加工食品、洗剤の原料となるパーム油(植物油脂)などは、熱帯林を伐採し、単一作物を効率よく栽培するためのプランテーション(大規模な工場型農園)で生産されているからである。

森林減少の主な原因となるアブラヤシ農園の開発

 ペカンバルの都市部を抜け、走ること30分、記者の目に飛び込んできたのは、見渡す限り一面に広がるアブラヤシ農園。熱帯林が減少する主な原因となっているのが、このアブラヤシ農園の開発である。

 パーム油の原料となるアブラヤシはアフリカが原産で、20世紀初頭にインドネシアに入ってきて、1980年代以降、栽培が本格化したと言われる。発展途上のインドネシアにとってアブラヤシの栽培は、経済成長を促す重要な輸出品であり、国の振興政策の下、開発が進められてきた。

上:アブラヤシの果実/下:地平線まで広がるアブラヤシのプランテーション。かつて生物多様性の森だった場所につくられている

上:アブラヤシの果実/下:地平線まで広がるアブラヤシのプランテーション。かつて生物多様性の森だった場所につくられている

 アブラヤシは、植栽から3年で実の収穫ができる成木となる。小さな実がたくさん集まった果実(果房)は、20~40キロの重さになり、1本の木から年間約10~12個の果実が収穫できる。実からは、オレンジ色の果肉から採取されるパーム油と、種子内の白い部分からパーム核油が採れる。

 パーム油と言っても、日本では馴染(なじ)みが薄いかもしれない。しかし、「植物油脂」と表示されて、私たちの身の回りの日用品にさまざまな形で利用されているのである。例えば、「自然にやさしい植物性」などと宣伝される洗剤やシャンプーをはじめ、マーガリン、ポテトチップス、アイスクリームなどの加工食品がそうだ。

 特定非営利活動法人「ボルネオ保全トラスト・ジャパン」によれば、2015年の日本の食用パーム油の輸入量は約66万トンで、1人あたりの年間消費量は約5キログラムという。私たちは、パーム油が入っているとは知らないまま、実はかなりの量のパーム油を消費しているのである。

コピー用紙の原料の7割をインドネシアから輸入する日本

 ペカンバルを出発して1時間が経過したころ、アスファルト舗装(ほそう)されていない、幅10メートルほどの砂地の道路に差し掛かった。一直線に南に伸び、地平線まで続くかのように見えるその道路を走ると、紙の原料となるアカシアの伐採木を満載したトラックが、砂塵(さじん)を立てて頻繁(ひんぱん)に通り過ぎて行った。

 この道路は、インドネシアの製紙会社が、プランテーションで生産した木を運搬するために、熱帯林を切り開いて造ったものだという。

 日本は国土の7割が森林で覆われているにもかかわらず、国内で消費される木材や紙の原料の多くは輸入に頼っている。中でもインドネシアからは、中国に次いで2番目に多い林産物(木材を含む)を輸入しており、特にコピー用紙の原料は、輸入量の約7割がインドネシアからと言われている。

紙の原料になるアカシアの木を満載して走るトラック

紙の原料になるアカシアの木を満載して走るトラック

 紙の原料となるアカシアは広葉樹で、植樹後、5年から7年で収穫できるため、植林木として利用されることが多い。「植林木を使うなら問題ないのでは?」と思われるかもしれないが、インドネシアでは、生物多様性の森を伐採した後、アカシアなどの単一の樹種を植えていくため、アカシアの栽培が豊かな生態系を壊してしまっているのである。

 砂地の道路を走り続けて4時間あまり。夜10時過ぎ、ようやく目的地テッソ・ニロ国立公園内の宿泊施設に到着した。

死滅したはずのアカシアが再生 生命力の強さに驚く

 一夜明けた6日の朝、宿泊施設から車で10分あまりの生長の家の植樹地に案内してもらった。

 到着して驚いたのは、木々が既(すで)に4、5メートルほどの高さに生い茂り、密林状態になっていたこと。「素晴らしい成長ぶりだ」と喜んだのも束(つか)の間、その木は、実は今回の植樹したものではなく、死滅したはずのアカシアが再生したものだと知って、なお驚いた。

 WWFジャパンの橋本務太さんによると、この植樹地は、もともと訳ありの植樹地だという。生物多様性のあった熱帯林を製紙会社が伐採し、長年、アカシアの植林地として利用してきたため、生物多様性が失われていた所だったが、数年前、製紙会社が土地の所有権を国立公園に譲(ゆず)ったことから、WWFが森林再生に乗り出した。しかし、なかなか手をつけられないでいた一昨年、不法侵入者の放火によって、アカシア林が焼け野原となった。

「そのまま放置しておくと、また不法侵入者が侵入してきて土地を占拠(せんきょ)する恐れがあるため、今回は、生長の家さんからのご寄付を活用させていただき、昨年(2016)1月、焼け野原にシェアランなどの苗木を植えました。ところが、その中から、放火で死滅していたと思っていたアカシアが再生してきたんです。根っこが残っていたのだと思いますが、その生命力の強さに驚きます」(橋本さん)

生物多様性の回復に欠かせない継続的なメンテナンス

 20メートルほど道路からアカシア林の中に入ると、昨年(2016)1月に植えた「バラム」という木が見えてきた。植樹時は20センチほどの苗木だったというが、1年も経たないうちに、成人の腰の高さまでに生長している。

2016年1月に植樹された「バラム」は、成人の腰の高さにまで生長していた。「苗木と添え木を結びつける紐は、周囲に生えた蔓を代用している様子を見て、苗木に対するスタッフの優しい心遣いと丁寧な育林活動に感動しました」と永井さん

2016年1月に植樹された「バラム」は、成人の腰の高さにまで生長していた。「苗木と添え木を結びつける紐は、周囲に生えた蔓を代用している様子を見て、苗木に対するスタッフの優しい心遣いと丁寧な育林活動に感動しました」と永井さん

 今回、植樹された苗木は、バラムをはじめ全部で8種類。その中の一つ「シェアラン」は、スマトラの代表的な植生種で、オオミツバチが営巣するため、将来ハチミツが収穫できれば住民の生活にも役立つという。

 また、「ドリアン」は、植樹後、5年ほどで果実が収穫でき、地元の人が収穫して食べることを見込んで植えられた。

 しかし、これらの苗木が生い茂るアカシアに覆われている様子を見ると、「こんな日陰で本当に大きくなるのだろうか?」と不安になった。橋本さんに尋ねると、「日陰があったほうが、枯れずに育ちます」という力強い言葉が返ってきた。

 赤道直下の熱帯地方では、苗木に直射日光が当たって枯れてしまう。したがって、苗木が約2メートルまで成長し、直射日光に耐えられるようになったところで、周囲のアカシアを伐採する予定になっている。

「経済的価値はあっても、アカシアはこの土地の本来の植生にはなかったものですから、伐らずに残せば、生物多様性のバランスが崩れてしまう。植樹の最大の目的は、土地本来の生物多様性のある森に回復させることなんです」(橋本さん)

 とはいえ、苗木を生長させ、アカシアを伐採すれば、生物多様性のある豊かな森が回復するかと言えば、そんな簡単なものではない。アカシアは焼け野原からも再生したように、伐採後も再生を繰り返す可能性があるため、いつ本来の森に戻るのかは未知数であり、今後も継続的なメンテナンスが欠かせないという。

不法侵入、野生動物との衝突を防ぐゾウパトロールを実施

 アカシアの伐採後、もう一つ警戒しなければならないのが、不法侵入者による放火だ。アブラヤシから多くの収入を得られるようになった今、アブラヤシを栽培する土地を求めて、未開墾地に移民などの不法侵入者が流入。アカシア伐採後の森に放火し、その土地を不法占拠してしまうからである。

 アカシアを伐採せずにそのまま生長させれば、不法侵入者が森の中に入りにくいという利点があるため、アカシアを伐採するか否かの見極めが非常に難しいという。

「日本では考えられないことですが、国立公園内に不法侵入者が住み込み、アブラヤシで生計を立てたりするんです。こういう人たちに退去してもらうよう、長年、国に要請しているものの、遅々(ちち)として進まないのが現状です」(橋本さん)

 そのため、WWFでは、不法侵入者による違法な土地の占拠を防ぐとともに、密猟、森林破壊による生息地の減少によってゾウやトラなどの野生動物が人里に現れ、人間と衝突するのを回避しようと、地域住民と協力し、訓練されたゾウとともに森のパトロールを実施している。

 野生ゾウに遭遇した場合などは、生物多様性が機能している森まで誘導し、苗木の場所や人里には寄せ付けないようにする。具体的には、まず火薬が入ったパイプに火を付けて大きな音を出し、その音に驚いて引き返していく野生ゾウを、パトロールゾウと一緒に追いかけるような形で森へと誘導するという。

 ある男性スタッフは、「身の危険を感じることもありますが、苗木を守り、生物多様性の森の回復に貢献できると思うとやり甲斐(がい)があります」と語ってくれた。

便利で快適な生活の裏にある森林減少などの深刻な問題

 テッソ・ニロ国立公園には、生長の家の植樹地5ヘクタールを含む100ヘクタールの植樹地があり、ここで植樹活動、下草刈りなどのメンテナンス作業を行っているのが、WWFの活動に従事している20~30代の5人の若者だ。

上:長年、地元でゾウ遣いをしてきたというスタッフ/下:朝食の準備風景。地元の女性が作ってくれた料理は、たっぷりの野菜と麺などに手作りピーナッツソースをかけたもの。おかわりしたいほどの味だった

上:長年、地元でゾウ遣いをしてきたというスタッフ/下:朝食の準備風景。地元の女性が作ってくれた料理は、たっぷりの野菜と麺などに手作りピーナッツソースをかけたもの。おかわりしたいほどの味だった

 その一人、虫の音(ね)が大好きというリーダーのマルパオン・エディさん(31歳)は、7年前から公園内の森の中に高床式の木造住宅を構え、一人で住むほど森を愛しており、「強い日差しを浴びながら、屋外で作業するのは大変ですが、生長していく苗木を見るとうれしい」と語る。

 また、近くの村で天然ゴムを収穫する仕事をした後、公園内でのメンテナンス作業に携わっているという青年(21歳)は、「働ける場所があってありがたい。地元の森を再生する仕事なので励みになります」と語るなど、誰もが森林の保全活動に誇りを持っている様子が窺(うかが)えた。

 生長の家からの寄付金が、地元の森林を愛するこうした人々の地道な森のメンテナンス作業にも活用されていることを知って、うれしくなった。

*** 

 わずか3日間のインドネシアでの取材だったが、コピー用紙を大量に消費したり、“自然に優しい”という謳(うた)い文句を鵜呑(うの)みにして植物性油脂(パーム油)由来の石けん、シャンプーを選択したり、マーガリン、ポテトチップス、アイスクリームなどの加工食品を気軽に食べることが、実は、インドネシアの生物多様性の豊かな森林を破壊していることに繋がっていると知って、愕然(がくぜん)とした思いを味わった旅でもあった。

 生長の家では、今、消費を含む毎日の生活行動の中で、人道的立場から貧しい人々など社会的弱者のことを思いやるとともに、世代間倫理、環境倫理に基づいた選択をする「倫理的な生活者」となることを訴えている。インドネシアの森林と日本人の生活の密接な関係を知った私たちは、森林を破壊しない倫理的な観点から紙の使用を削減したり、洗剤や食品を選択しなければならないことを改めて痛感させられた。

*1=生長の家の女性の集まり
*2=本誌の姉妹誌

今回の取材を記念して、「メラワン」という苗木1本を植樹(2016年12月6日)

今回の取材を記念して、「メラワン」という苗木1本を植樹(2016年12月6日)