黒田清輝(きよてる)さん、利穂子(りほこ)さん夫妻│47歳・44歳│岐阜県 取材/多田茂樹 写真/野澤 廣

黒田清輝(きよてる)さん、利穂子(りほこ)さん夫妻│47歳・44歳│岐阜県
取材/多田茂樹 写真/野澤 廣

機能的で遊び心満載のユニークな家に住む

 美濃焼の産地として知られる岐阜県。その自然豊かな山里の一角に、アーチ状の形をしたユニークな家がある。それが、黒田清輝さん、利穂子さん夫妻の住まいだ。清輝さんは、この家に施術室を設けて、マッサージによる整体リラクゼーションの仕事をしている。

 笑顔を浮かべて清輝さんが語る。

「この家は、『ザ・ヨロイ(鎧)』というコンセプトで、友人の建築デザイナーに設計してもらったものです。形が変わっているだけでなく、断熱効果が高い、魔法瓶のようなかまぼこ形の屋根のおかげで、室内は、夏涼しく冬温かいため、自然に省エネになっていますし、地震や強風にも強い造りになっています」

 無駄な照明を使わずにすむよう、天窓を付けて自然採光に配慮し、ほとんどの照明をLEDにしているため使用電力も少ない。パソコンで電気代を管理しているが、同じサイズの家と比較すると、その半分ぐらいですむという。

ユニークな外観の住宅。止まっているのは、夫妻の愛車、ミニクーパー

ユニークな外観の住宅。止まっているのは、夫妻の愛車、ミニクーパー

 単に機能的というだけではない。玄関先に飾られた黒田家の五三桐の家紋を染め抜いた布、屋根の上には、ヨロイを象徴する兜(かぶと)のモチーフ、玄関のステップにある日本刀をイメージした手すり、リユースした二メートルを超える部屋の扉、潜水艦の丸窓を使ったトイレなど、遊び心も施されている。

「主人も私もとても気に入っています。訪れたお客様も居心地がいいらしく、皆さん、長居するのが常ですね」と利穂子さん。

 清輝さんも、「『くろだや』というような看板は出していないんですが、『川に沿ってちょっと上ると変わった形の家があるから』などと、お客さんが口コミで紹介してくれるので、少しも困りません」と語る。

「古くてもいい物はいい」がポリシーの生き方

 黒田さん宅を訪問して気づくのは、ユニークな家の外観だけでなく、内部のシンプルさ。全体的に物が少ないが、要所要所にアンティークな家具や小物などが置かれ、落ち着いた雰囲気を醸し出している。

上:天窓のよしず張りを通して光が入るため、日が落ちるまで照明はいらない/下:テレビ台として使っている骨董箪笥。室内の雰囲気にぴったりと調和している

上:天窓のよしず張りを通して光が入るため、日が落ちるまで照明はいらない/下:テレビ台として使っている骨董箪笥。室内の雰囲気にぴったりと調和している

 室内のインテリアを担当している利穂子さんは、「買った物も少しはありますが、ほとんど周りの人たちからもらった物ばかりなんです。物のいのちを大切にしたいという思いで、ちょっと直したり、磨いたり、置き場所を考えたりして使うと、どんな古い物でも、しっくりと家に馴染(なじ)んでくるから不思議ですね」

 その一部を紹介してみると―。

 玄関先に置かれた雨水を貯める石臼、玄関の下駄箱、ホールのテーブル代わりの火鉢(ひばち)、オブジェとして飾られている黒電話、古いミシン台を脚として使ったダイニングテーブル、テレビ棚に使われている明治時代の家具、解体した古民家の天井板を利用したベンチ、昭和初期のランプシェードなど……。

 いずれも利穂子さんのセンスの良さが光るものばかりで、そんな家具や小物たちが、黒田さん夫妻の日々の生活に彩(いろど)りを与えている。

「流行を追わず、古くてもいい物を長く使うというのが、主人と私の考え方なので、皆さんが持っている物を自分たちも欲しいとは、全く思いません。私たちは今もって、携帯電話はガラケーなんですよ(笑)」(利穂子さん)

私たちの生き方は正しかったんだ

「余計なものを買わない、持たない」という黒田さん夫妻の生活ぶりは、食物や衣服においても同様だ。

 近所のスーパーのフードコートで働いているという利穂子さんは、特売日などの情報をいち早く入手できるため、もっとも安く買えるタイミングで旬の食材を購入するよう心がけている。だからといって、無闇に買い過ぎたりすることは決してしない。

「わが家は主人との2人家族なので、買いだめしても食べ切れないんですね。白菜などもどんなに安くても一個でなく、4分の1などにカットされたものを買うようにしています。ですから、わが家では、余った食べ物を捨ててしまうフードロスは絶対にありません」(利穂子さん)

 献立も、「あれが食べたい、これが食べたい」と決めるのではなく、魚、野菜を中心に、その日、購入した旬の食材を基にして考える。また、人から野菜などをいただくこともあり、ダイコンなら煮物、ジャガイモならポテトサラダといった具合に献立に加える。しかも、余ったら翌日の二人のお昼の弁当のおかずにし、翌日にはすべて食べ切ってしまうという。

 冷蔵庫の中を見せてもらうと、その言葉通り、すっきりきれいに片付いていて、余計な買い置きは見当らない。これなら古い食材が残り、賞味期限切れとなって廃棄することもないだろう。

 また、衣類についても、「いいものを買い、できるだけ長く使う」ことに徹している。利穂子さんは、「主人も私も、もう20年以上着ている服があります」と笑う。

「私たちは前から、こうした生活を当たり前のようにしてきましたが、生長の家白鳩会総裁(*1)の谷口純子先生が『平和のレシピ』(*2)の中で、『平和のライフスタイル』の一つとして、『買い過ぎない、持ち過ぎない』生活を提唱してくださったので、『私たちの生き方は正しかったんだ』と自信が深まりました」(黒田さん夫妻)

すべての物には神のいのちが宿る

 岐阜県出身で、26歳の時に知り合いから生長の家の教えを伝えられた清輝さんと、愛媛県出身で、親、祖母から生長の家の教えを伝えられた利穂子さんは、共に青年会(*3)の活動をしてきたが、出会ったのは平成12年。青年会で企画された「ブラジル研修訪問団」に参加したのが縁だった。

 2人は、同年8月31日から9月7日まで一週間、ブラジルを訪れ、サンパウロで開かれた青年会全国大会に参加。イビウーナにある生長の家の練成道場も訪問する中、お互いの誠実な人柄とともに同じ信仰を持っていたことから惹かれ合った。そして、帰国後も交際を続けて、平成15年4月に結婚した。

骨董品のミシンを使ったダイニングテーブルで語り合う。窓のカーテンから柔らかな光が室内に入る

骨董品のミシンを使ったダイニングテーブルで語り合う。窓のカーテンから柔らかな光が室内に入る

「あの時の研修は、帰国直後の9月11日に、アメリカで同時多発テロが起きたことも重なりあって、忘れられない思い出になっています」(清輝さん)

 自然に今のような物のいのちを生かした、シンプルな生活をするようになったという黒田さん夫妻だが、その根底にあるのは、やはり生長の家の教えだという。

「生長の家で『物は単なる物ではない。すべて神のいのちの現れである』と教えられているので、普通に生活していると、今のような生き方になるんですね。これからも、夫婦で尊敬し合い、物を大切に使いながら、自然体で生きていけたらいいなと思っています」(黒田さん夫妻)

「ケンカなどしたことがない」と、さらりと語った2人の笑顔が印象的だった。

*1=生長の家の女性の組織
*2=生長の家刊、日本教文社発行
*3=12歳以上40歳未満の生長の家の青年男女の組織