佐々木寿美(ささき・ひさみ)さん│64歳│京都府綾部市 取材/多田茂樹 写真/中橋博文 「まだ古い衣類がたくさん出てきて、今も、“断捨離”途上です」と笑う佐々木さん。

佐々木寿美(ささき・ひさみ)さん│64歳│京都府綾部市
取材/多田茂樹 写真/中橋博文
「まだ古い衣類がたくさん出てきて、今も、“断捨離”途上です」と笑う佐々木さん。

持ち過ぎていませんか? 買い過ぎていませんか?

 9月初旬、京都府綾部市の佐々木寿美さん宅を訪ねた。佐々木さんは、子供の頃、母親から生長の家の教えを伝えられ、2度の脳梗塞(こうそく)、胃がんを信仰で乗り越えて、現在は、京都第二教区白鳩会(*1)の幹部として活躍している。

 佐々木さん宅は、築33年の家にもかかわらず、手入れが行き届いた気持ちの良い佇(たたずま)いで、周囲の家や環境とも調和している。中に入れてもらうと、お孫さんや家族の記念写真などが壁にかかっているものの、余計な物がなく、すっきりと片付いている印象を受ける。

 廊下の隅に置かれた花瓶(かびん)に入った季節の花々が、シンプルで落ち着いた雰囲気を醸(かも)し出す室内に、ほのかな彩(いろど)りを添えている。

 佐々木さんは、晴れやかに笑いながら語る。

「今でこそきれいになりましたが、ちょっと前までは、家の中が物だらけだったんですよ(笑)。押し入れや箪笥(たんす)、納戸から物が溢(あふ)れんばかりで、しかも、そのほとんどは、使わない物、要らない物ばかりでした。几帳面(きちょうめん)な性格の主人からは、いつも『いい加減整理して、捨てるべき物は早く捨ててくれ』と言われていたんですが、看護師の仕事をしているのをいいことに、ずっと先延ばしにしていました」

 ようやく少しずつ片付けを始めたのは、2年前、看護師の仕事を辞めた62歳の時だった。平成27年4月に参加した生長の家白鳩会全国幹部研鑽(けんさん)会(*2)で、谷口純子・白鳩会総裁が講話の中で、「要らないものをいっぱい持ち過ぎていませんか? 必要のないものを買い過ぎていませんか?」と話されたのを聞いたことがきっかけだった。

「まさに、自分のことを言われている気がして、その言葉が胸に突き刺さりました。『今やらなければ、10年後にはできるかどうか分からない』と思い、私なりの“断捨離(だんしゃり)”を始めようと思ったんです」

子供が処分に困らぬように、箪笥(たんす)の中身を片付ける

 まず初めに取りかかったのは、箪笥の中の整理だった。開けてみると久しく着用しなくなった自分の服はもちろん、長女、次女2人の子供が、昔使った部活用のバレーボールのユニフォームなど、不要になった衣料品が次々に出てきた。

きれいに片付いた食器棚の前で。「使わない食器ばかりで、ここの整理が一番大変でした」

きれいに片付いた食器棚の前で。「使わない食器ばかりで、ここの整理が一番大変でした」

「古い服であっても、いつかまた着られるんじゃないかと思って残し、ユニフォームも子供たちの思い出の品だからと取ってあったんですが、よく考えたらもう20年以上、箪笥の肥(こ)やしになっていたものばかりなんですね。ですから思い切って、そのほとんどをリサイクルや資源ゴミとして出してしまいました。おかげで箪笥の中がきれいに片付き、気持ちが晴れ晴れとしただけでなく、残した服を上手に組み合わせて着回す術(すべ)も身について、整理して本当によかったと思いました」

 厄介(やっかい)だったのは、納戸の中に山のように積み重ねられていた、娘2人の学校時代の品々。親としての思い出が詰まっているだけに、捨てるべきか、捨てざるべきか迷いながら、結局長い間、そのまま放置していたものだった。

 2人の娘が使っていた通学用のかばん、靴(くつ)、教科書や本、さらには、さまざまな書類などを前にして思ったのは、「親には思い入れがあっても、子供たちはそうでもない」ということだった。

「子供たちから、『どうしてこんなものを大事に取っておいたの?』と言われそうな、私たち夫婦が死んでしまったら、娘たちが処分に困るだろうと思うようなものばかりだったんです、それで娘たちのことを考え、本当に必要なものだけを残し、それ以外は処分しました。大量のアルバムも同じようにし、『看護総論』など、私が看護師だった頃に使ったたくさんの医療関係の書籍も、すべて資源ゴミとして処理しました」

余った食器は人に分け、和服はリフォームして活用

 次に手をつけたのが、食器棚の整理。これが一番大変だったという。

 食器棚の中には、似たようなものがあるにもかかわらず、「これ、可愛い」などと衝動(しょうどう)買いし、いつの間にか増えてしまった数々の食器が、使われないまま眠っていた。

「日常的に使う食器など、ごく限られているのに、たくさん持っていたことに驚きました。そこで、必要なだけの食器を選び、他のは漂白(ひょうはく)してきれいにし、友人・知人に声をかけて、必要な人にお分けするなどして整理しました。長年使っていない食器を入れていたため、汚れてしまった棚もきれいに掃除しました。見違えた食器棚を見て、さっぱりとした気持ちになりました」

 夫の茂さんが作ってくれた屋根裏の収納庫、物置も整理した。どこにどんな物が置かれているのかが分かるようになって、物を整理整頓することが、これほど気持ちよく、精神衛生にもよいことだと、初めて分かったという。

「それでもまだ6、7割程度の整理しかできていない」と謙遜(けんそん)する佐々木さんが、今、取りかかっているのが和服の整理だ。

庭先を手入れしてひと休み。高台にある家からは、里山が見渡せる

庭先を手入れしてひと休み。高台にある家からは、里山が見渡せる

「私のライフスタイルでは、和服はお葬式などの喪服以外は、まず着ることがないので、もともとあまり必要ないものなんですが、母や姉が心を込めて縫(ぬ)ってくれた和服が多いので、処分してしまうのは忍(しの)びない気がしていたんです。そこで、捨ててしまうのではなく、着物を生かすために、炬燵(こたつ)布団などにリフォームしてもらうことにしたんです。これなら、冬になれば、毎日、眺めて暮らせますから、早速、お願いしようと思っています」

 こうして物の整理に努め、物の少ない暮らしに変わった結果、「捨てろ。片付けろ」が口癖だった茂さんが、「最近は、きれいに片付いているね」と、とても喜んでくれるようになった。それが何より嬉しいと佐々木さんは言う。

物のいのちに感謝して拝んで使わせていただく

 そんな佐々木さんは、買い物をする際も、「必要のないものを買い過ぎていませんか?」という言葉を思い出し、必要最小限のものを買うように、「持ち過ぎない」「買い過ぎない」生活を心がけている。また、20年ほど前から、家の近くにある家庭菜園を借り、茂さんと力を合わせて、里芋、サツマイモ、ピーマン、シソ、シシトウ、オクラ、ナスなど、多くの野菜作りに精を出している。

「自分で作った野菜で料理をすると、一枚の葉っぱでも無駄にせず、そのいのちを活(い)かすということの深い意味が分かるようになった」という佐々木さんは、穏やかな笑顔を浮かべて語った。

「家の中を整理、整頓(せいとん)してみて気づいたのは、物を片付けたのに、本当に片付いたのは、“自分の心”だったように思います。物が片付くと、自分の心もきれいになるんですね。生長の家で、『物、物にあらず。神のいのちの現れである』『物が悪いのではない。物の過剰(かじょう)が悪いのだ』と教えられている通り、物のいのちに感謝し、拝んで使わせていただくのが、本当に豊かな生活なんだと分かりました。そして、そうした生活を続けることが、取りも直さず地球環境を守ることにつながっていることを、日々の暮らしの中で実感しています」

*1=生長の家の女性の組織
*2=白鳩会の幹部が集まる大会