葉っピイ向島園株式会社│静岡県藤枝市 「お茶も人間と同じ命」と語る園主の向島和詞さん 取材/原口真吾(本誌) 写真/堀 隆弘

葉っピイ向島園株式会社│静岡県藤枝市
「お茶も人間と同じ命」と語る園主の向島和詞さん
取材/原口真吾(本誌) 写真/堀 隆弘

 静岡県藤枝市で、30年以上無農薬、無化学肥料のお茶作りを行っている「葉っピイ向島園(株)」。その栽培の仕方は、お茶の苗と苗の間を十分に離して定植し、それによって、しっかりと根を張った強い木を育てるというもので、間隔が空いた木々の下には日が差し、植物や昆虫が共生している。同園は、お茶も人間と同じ命として捉える考え方に基づいてお茶を作っている。

 藤枝市は、瀬戸川などの清流と、昼夜の寒暖差が大きい山間の気候が香り豊かなお茶を育てる、銘茶の産地として知られている。

 10ヘクタール強の茶畑を持つ向島園では、昭和57年、いち早く無農薬、無化学肥料による栽培に切り換えた。当時、周辺の茶農家ではどこも行っていなかった栽培法に踏み切ったのは、お茶という命に対する先代の敬意の現れからだったと、現園主の向島和詞(むこうじまかずと)さんは話す。

上:お茶の葉の上で羽を休めるヤマトシジミ。茶畑には、植物や昆虫が共生する環境がある/中:大地にしっかり根を張り、たくましく育ったお茶の木/下:葉っピイ向島園の工場

上:お茶の葉の上で羽を休めるヤマトシジミ。茶畑には、植物や昆虫が共生する環境がある/中:大地にしっかり根を張り、たくましく育ったお茶の木/下:葉っピイ向島園の工場

「自分が作るお茶は、薬剤を用いて生長を強いるのではなく、無農薬、無化学肥料でのびのびと育て、お客様に安心・安全なおいしいお茶を提供したいと思ったからなんです」

 通常、お茶の苗は15〜30センチ間隔で植え、収穫量が増えるように密集させるが、向島園では苗の間を50センチから1メートル以上離す「一本仕立て」という独自の方法を確立した。また、自家受粉ができないお茶は挿し木で増やし、枝の先から2枚目の葉までの「一節二葉(いっせつによう)」をポットで育て、畑に植えるのが普通だが、向島園では「一節一葉」を採用し、直接畑に植えて外の環境で生長させる。人間の都合だけを考えない、そうした栽培法によって強くて健全なお茶の木が育つという。

 それだけでなく、ゆとりのあるお茶の木と木の間には光が差して風が通り、さまざまな植物や昆虫が共生する環境も整っている。

 肥料としては、ゴマの絞りかすなどの植物性の有機肥料の他、刈り取った雑草を畑に戻したりしているが、畑をできるだけ自然な状態に保ち、土壌のバランスを崩さないために、極力施肥を少なくしている。

 向島園の基本となっている理念は、お茶も人間と同じ命とする考え方だと、向島さんは語る。

「お茶も、人間と同じ命として接し、畑に生きる植物、昆虫など全ての命との繋がりを大切にしたお茶作りを続けていきたいと思います」

問い合わせ先
http://www.mukoujimaen.jp
TEL/054-639-0514