山梨県北杜(ほくと)市の障害福祉サービス事業所「春の陽・のはら楽団」が管理している社会福祉法人八ヶ岳名水会「はるのひ農場」は、3,000坪の水田と畑からなり、無農薬、無化学肥料で作物を育てている。多くのボランティアの手で支えられているこの農場は、地域の人々と障害者との交流の場ともなっている。

社会福祉法人八ヶ岳名水会「はるのひ農場」│山梨県北杜市 取材/原口真吾 写真/堀 隆弘 施設長の仁田坂洋子(ニタサカ・ヨウコ)さん。「どうやって地域に貢献するかを、いつも考えて活動しています」

社会福祉法人八ヶ岳名水会「はるのひ農場」│山梨県北杜市
取材/原口真吾 写真/堀 隆弘
施設長の仁田坂洋子(にたさか・ようこ)さん。「どうやって地域に貢献するかを、いつも考えて活動しています」

 障害者の一般就労を支援する障害福祉サービス事業所「春の陽・のはら楽団」は、平成17年、雄大な八ヶ岳を望む山梨県北杜市長坂町に開所し、「自分たちで作った安全でおいしいものを食べたい」という思いから「はるのひ農場」を始めた。

 農薬は使わず、田んぼには稲わらを、畑には収穫した野菜の茎などを土にすき込んでいる。これによって土壌の質が良好に保たれ、たとえ害虫が多く発生したりしても、ある程度の収穫が見込めるという。

 最初は小さな畑で、昼食の味噌汁の具となる野菜を利用者の手で育てていたが、施設の周りに耕作放棄地の田畑があったため、それらを借りて徐々に農地を広げていった。地元農家からのアドバイスを受けながら地域と二人三脚で稲と野菜の栽培を行い、現在は、利用者が農家に出向き、農作業を手伝うこともしている。

 はるのひ農場の特徴は、多くのボランティアに支えられていること。昨年(2016)10月の収穫祭では稲刈りと食事会が行われ、たくさんのボランティアが参加したが、6月の田植えから作業に加わっているというあるボランティアは、感慨深い面持ちで自分が植えた稲を刈り取っていた。また、オケラなど多くの虫が生息していることに感動する参加者もいた。

 収穫の作業が一段落した後は、食堂でおからコロッケや奴豆腐など、豆腐づくしのランチを味わった。食材のほとんどは、はるのひ農場で収穫した物だが、中でも、自家製の小麦粉を使った、もちもちした食感の生パスタが大好評だった。

上:子供たちは普段できない体験の連続に目を輝かせていた/下:昼食会に提供された、大豆と野菜が中心の素朴な料理

上:子供たちは普段できない体験の連続に目を輝かせていた/下:昼食会に提供された、大豆と野菜が中心の素朴な料理

 食堂では、ランチメニューだけでなく、大豆、トマト、タマネギなどを使い、豆腐、味噌、ドレッシング、パスタソースなどを販売している。

 のはら楽団施設長の仁田坂洋子(にたさか・ようこ)さんは、将来の展望を語る。

「パスタソースなどの原材料の一部は外部のものを使い、工場に加工を委託していますが、将来的には、材料も加工もすべてここで賄(まかな)いたいと考えています。利用者だけでなく、『地域の人たちにも体にいいものを届けたい』という気持ちで、これからも無農薬の作物を育てていきます」