俵 裕子(たわら・ゆうこ)さん(図工作家) 聞き手:源 明子さん(生長の家国際本部、生長の家本部講師補) 写真/堀 隆弘 俵 裕子さんのプロフィール 1972年生まれ。東京・八王子出身。武蔵野美術大学油絵科卒業。図工作家。18年余り、幼稚園生などを対象にした図工教室で指導。その傍ら、児童、幼児向けのイラストを描く。2013年、山梨県韮崎市に移住。現在、北杜市高根町に住み、消しゴムを使ったハンコ、ウッドガスストーブ、葛(くず)による筆づくり、段ボールアート、落葉のパステル画、ペーパークラフトなど、多岐にわたるワークショップを開催している。

俵 裕子(たわら・ゆうこ)さん(図工作家)
聞き手:源 明子さん(生長の家国際本部、生長の家本部講師補)
写真/堀 隆弘

身近にある素材を使って、さまざまなクラフト作品を作り、手間暇をかけて物を作ることの楽しさを教えている俵さん。ワークショップには、子供から大人までたくさんの人が集まる

俵 裕子さんのプロフィール
1972年生まれ。東京・八王子出身。武蔵野美術大学油絵科卒業。図工作家。18年余り、幼稚園生などを対象にした図工教室で指導。その傍ら、児童、幼児向けのイラストを描く。2013年、山梨県韮崎市に移住。現在、北杜市高根町に住み、消しゴムを使ったハンコ、ウッドガスストーブ、葛(くず)による筆づくり、段ボールアート、落葉のパステル画、ペーパークラフトなど、多岐にわたるワークショップを開催している。

 昨年(2017)秋、山梨県北杜市の生長の家国際本部で行われた「生長の家自然の恵みフェスタ2017」(*1)で、「木の実で飾る森のがくぶちづくり」のワークショップを開き、参加者に好評を博した、図工作家の俵裕子さん。落葉や木の実、段ボール、チラシなど身近にある素材で作られたクラフトには、既製品にはない、温(ぬく)もりと優しさがある。そんな俵さんに、日頃の活動の様子、手作りの楽しさ、その魅力などについて伺った。

カフェや食事処でさまざまなワークショップを開催

──日頃は、主にどんな活動をされているんですか。

 東京にいた頃は、幼稚園や保育園などで、子供を対象に図工教室を開いていたんですが、5年前に山梨に来てからは、大人、子供、関係なくクラフトのワークショップを開いています。プロフィールにあるようなことのほかにも、お弁当の包み、手帳やアルミ板に絵を描いたり、染め紙、織物遊び、こすりだし版画など、さまざまなことに挑戦しています。
 開く場所はカフェだったり、食事処などが多いですが、オルタナティブスクール(*2)という、普通の学校に行かないことを選んだ子供たちが通う学校とか、有志のお母さんたちによる、子供たちの遊び場などにも出かけて、“出張図工屋”をやっています。

──肩書きは、クラフト作家ということでいいんでしょうか。

上:素朴な味わいがある紙版画/下:竹の皮を使って作った風合いのある筆

上:素朴な味わいがある紙版画/下:竹の皮を使って作った風合いのある筆

 今、言いましたように、“出張図工屋”ですが、絵も好きで教えているので、“出張図工屋”、時々“絵描き”といったところでしょうか(笑)。

──昨年(2017)秋には、「生長の家自然の恵みフェスタ」でも、ワークショップを開いていただきましたが、具体的にはどんなことをしたんですか。

 「木の実で飾る森のがくぶちづくり」というテーマで、八ヶ岳の森の木の実を使い、額縁(がくぶち)をデコレーションするということをやりました。お子さんが多くいらっしゃると思ったんですが、まず大人が、男女、年齢にかかわらず来てくださったので、ちょっと驚きました(笑)。
 最終的には、お子さんもたくさん来てくれて、森のお話などができそうな雰囲気だったため、「これは、リスがクルミをかじった跡だよ」とか、「これはヤシャブシで、これはヤマハンノキという、標高が高いところにある木の実だよ」などという話をさせてもらいました。
 ワークショップの場合、往々(おうおう)にして、私が話す内容を参加者から引き出してもらえることがあるんですが、この時もそうでしたね。

──生長の家の“森の中のオフィス”をご覧になった印象はいかがでしたか。

 この時だけでなく、何度か行かせてもらっていますが、木造建築というだけあって、木の香りがして、本当に清々(すがすが)しい建物だと思います。

各家庭にある身近な物自然素材の物を使って

──ワークショップでは、主にどんな素材を使っているんですか。

 昔、東京の八王子に住んでいた頃は、各家庭にあるものを使っていました。トイレットペーパーの芯(しん)であるとか、牛乳パックとか、チラシ、包装紙など、無理なく集められて、子供たちに「いくら使ってもいいよ」って言えるようなものです。八ヶ岳に来てからは、それだけでなく、森や道に落ちている小枝やクルミなどの木の実を拾って使うようになりました。

聞き手の源さん(右)も、俵さんが開くワークシヨップにたびたび参加している

聞き手の源さん(右)も、俵さんが開くワークシヨップにたびたび参加している

──私も、クルミの実なんて、八ヶ岳に来て初めて見ました(笑)。

 ですよね。木の小枝などは、昔住んでいた八王子にもありましたが、カラマツとか、木の化石と言われるメタセコイヤ、ヤシャブシなど、森を歩いていると拾えるものが、たくさんあるんです。

──自然素材のものを使うことが多いのは、やっぱり手に入りやすいから?

 そうですね。けれどもそれに加え、都会からこちらに来て、自然の中で、土が身近にあるような生活を送ると、捨てられたプラスチックの破片が、土の中でいつまでも残っていたりするのが分かるようになったんです。だから、素材として使う物は、土に戻せば、微生物がきれいにしてくれるようなもののほうがいいな、という気持ちになったことも、大きかったと思いますね。

一つ一つの物に愛着が湧き大切に使おうという気になる

──手間暇(てまひま)をかけて物を作るのは面倒だと考える人も多いですが、クラフトの楽しさは、どんなところにあるのでしょうか。

 例えば味噌(みそ)ですが、こちらで私が食べている味噌は、都会にいた時に買っていた味噌とはまったく違うものなんです。誰が作ったのかが分かり、手間暇をかけて作られたものですから、麹(こうじ)が生きていて、ビニールの袋に入れっぱなしにしておいたら、発酵(はっこう)して爆発したりするようなものなんです(笑)。でも、味噌って本来こういうものなんですね。
 都会で生活していた時は、いろんな小物も、誰が作ったのかなんて意識すらしないで買い、必要なくなったら捨てていました。けれど、どんな物でも、自分で手間暇をかけて作ることで、不思議なことにだんだん地に足が着いてきたような感覚が生まれ、一つ一つの物に愛着(あいちゃく)が湧(わ)いてきて、「大切に使おう」という気持ちになるんです。
 私は小さい子供に教えることが多いので、いつも「子供の手に負(お)える工作を」ということを念頭においています。そんな時に心がけているのは、例えば封筒などについては、一枚の紙を切って折り合わせてできているという仕組みを理解してもらうことなんですね。そういうことを知っているかどうかで、大げさに言うと、世界観まで変わってくると思うんです。
 子供に限らず大人も、こつこつと手間をかけ、時間をかけ、物の感触を手で確かめながら、クラフトを作ることで、何か自分が確かな世界と繋(つな)がっているという実感が得られる気がするんですね。それが、クラフトの醍醐味(だいごみ)ではないかと思います。

誰でも簡単にできるお勧めのクラフトinoti97_rupo_4

──簡単にできる、お勧めのクラフトがあれば教えてください

 まず、ブックカバーでしょうか。ブックカバーって、本を買うとかけてもらえるものですが、それだけじゃつまらないから、ひと手間かけてみるんです。ブックカバーを裏側にして、好きなスタンプを押したり、絵の具で何か絵を描いてもいい。そうすると、オリジナルのブックカバーができます。(写真❶右上)
 あと、日本には、チラシのようなきれいな印刷物が捨てるほどあるので、これらを利用して、封筒を作るのもいいですね。こうしたものを青なら青、緑なら緑と色分けして取っておくと、それを使って折り紙も貼り絵もできるし、本の表紙にしてブックカバーの代わりにしてもいい。いろいろ工夫して挑戦してもらいたいと思います。(写真❷)

──いざ、やり出すと、「あれっ、あれもできるし、これもできる」ってなりますよね。私も、俵さんのワークショップに行くようになって、作ることの楽しさを実感するようになりました。この前、教えてもらった「段ボールのはがき」もよかったですね。

俵 段ボールを好きな形に切り抜いて、クレヨンで絵を描き、定形外郵便として、切手を貼って出すというものですが、家に帰って、こんな“くじら絵はがき”がポストに入っていたら、超おもしろいですよね(笑)。(写真❸)

──私には、一緒に参加した人から、スイカを描いた段ボール絵はがきが送られてきました。

 相手のポストのサイズを考えたりすると、つい手加減しちゃうんですが、結構、大きいのでも大丈夫です。大体、120円ぐらいで届くと思いますので、ぜひ、お試しください。きっと喜ばれます。

一家に一台あれば安心簡単にできるウッドガスストーブ

──俵さんは、自分でウッドガスストーブ(*3)を作り、ワークショップでも教えていますが、これは誰にでも作れるものですか。

 誰にでも作れるというのは確かですが、それだけならホームページに作り方を載せて終わりなんです。それをワークショップで始めたのは、材料となる空き缶を加工するために、1本、4,000円もする金切りばさみが必要だからなんです。「皆さん、これを買ってまで作るかな?」と考えた時、それなら金切りばさみを用意し、皆さんに使ってもらって作ったらいいと思って、ワークショップを始めたんです。
 以前私は、ペール缶(*4)を使い、ロケットストーブ(*5)を作っていたんですが、ペール缶のほうが厚くて穴を開けにくいんです。電動工具がないとできないし、あっても上手(うま)く使うのが大変なので、比較的穴が開けやすい、トマト缶(*6)を使ったウッドガスストーブを作ることにしたんです。

「手仕事を通して、人間としての暮らしを取り戻している、そんな気がしています」

「手仕事を通して、人間としての暮らしを取り戻している、そんな気がしています」

──使い心地はいかがですか。

 周辺の山や森で集められる小枝、薪(まき)があれば暖もとれるし、煮炊(にた)きも簡単にできるので、「いざ何かあっても困らない」という安心感がありますね。ウッドガスストーブを作った直後の平成26年2月、山梨県一帯が豪雪に見舞われ、私の住む集落も4日ほど孤立しましたが、あの時もウッドガスストーブがあったおかげで、あわてないですみました。
 作るのも楽しいですし、作っておけば、緊急の時に役に立ちますから、「一家に一台ウッドガスストーブ」をお勧めしたいです。それに、トマト缶はスチール製で、使っているうちに酸化して、土に帰っていくので、自然にも優しいですしね。

自然や人から生きる力をもらって

──5年前に山梨に移住して来られたわけですが、暮らしてみていかがでしょうか。

 どんどん体調がよくなり、めきめき元気になっています。花粉症が治っちゃったし、滅多に熱を出さなくなりましたね(笑)。無農薬の野菜をいただき、おいしい空気を吸い、豊かな自然を眺め、穏やかな人間関係に恵まれて、今さらながら、人間って、こうした環境の中でこそ健康に暮らせるんだなって実感しています。

──どんな所にお住まいですか。

 標高850メートルの北杜市高根町の、30戸ほどある集落に住んでいます。お年寄りも若い人たちもいますが、感心するのは、何しろ皆さん、体力があること。私なんか畑を始めようとして、鍬(くわ)をふるったりすると、すぐ手首が腱鞘炎(けんしょうえん)になってしまったりするんですが、お年を召(め)した先輩方などは全然平気で、一日中動いているんですよね。全然違うんです、体力が(笑)。
 そういう意味で、皆さんから、生きる力をもらっています。私も早く、体力がつくよう、今、訓練中です。inoti97_rupo_6

ここにあるものを利用するそこから安心が生まれる

──現在、生長の家では、自然との一体感を表現する活動の一環として、SNIクラフト倶楽部(くらぶ)を設置し、自然素材を用いたクラフトの制作を奨励(しょうれい)しています。私たちの活動に対してどんな印象を持っていらっしゃるのか、お聞かせいただければと思います。

 生長の家の皆さんは、クラフトに限らず、食事でもなんでも、この土地のものを活用しようということを強く意識して活動をしておられるので、私もすごく共感するところがあります。
 現代人は、遠くから運ばれてきた石油とかガスも使っているわけですが、今ここで、ここにある物を利用し、できることを増やしていくと、「あれがないと、これがないと生きていけない」から、「これもできる、あれもできる」ということが増えていって、安心して生きられるようになります。
 生長の家の皆さんは、そういうところを強く意識されているので、とてもシンパシーを感じていますし、これからの活動にも期待しています。

──今後も、引き続きクラフト倶楽部の活動にご協力いただきたいと思います。今日はありがとうございました。
(平成29年12月22日、北杜市清里の清泉寮ポール・ラッシュ記念館にて)

*1=自然の恵みに感謝し、低炭素なライフスタイルを実践するイベント
*2=画一的な教育ではなく、個人を尊重し子供が本来持っている探求心に基づいて、自律的・主体的に学習や行事が展開されるようにカリキュラムが組まれている
*3=木の枝や落ち葉などを使った空き缶ストーブ。使うエネルギーは自然素材なので、環境に悪影響を及ぼすことがない
*4=鋼鉄製の缶のこと
*5=薪をくべて使用する燃焼機器
*6=トマトの水煮を入れた缶のこと