東野美由紀さん│65歳│大阪府東大阪市 取材/多田茂樹 写真/中橋博文 エリンギを輪切りにし、貝柱風にアレンジしたソテーを盛りつける東野さん。「喫茶蓮華」で開かれた料理教室で

東野美由紀さん│65歳│大阪府東大阪市
取材/多田茂樹 写真/中橋博文
エリンギを輪切りにし、貝柱風にアレンジしたソテーを盛りつける東野さん。「喫茶蓮華」で開かれた料理教室で

自然食をいただき、楽しく寛げる店

 5月中旬の晴れた日、東大阪市枚岡(ひらおか)を訪ねた。近くに生駒山(いこまやま)を望む自然豊かな土地柄で、河内国(かわちこく)一之宮(いちのみや)として、古代から地元民の信仰を集めている枚岡神社もある。

 東野美由紀さんと夫の敬司さん(67歳)が営む「喫茶蓮華(れんげ)」は、近鉄枚岡駅から徒歩6分あまり、静かな住宅地の一画にあった。東野家の門を入り、緑がいっぱいの庭を抜けると、母屋と繋(つな)げて増築した喫茶蓮華の入口へ。店内には瀟洒(しょうしゃ)なカウンターとテーブル席があり、和風の鴨居(かもい)や窓がアクセントとなって、どこか懐かしい雰囲気を醸(かも)し出している。

 この店では、マクロビオティック(*1)に基づき、肉はもちろん、乳製品、卵も使わない自然食メニューを提供している。美由紀さんは、笑顔を浮かべながら語る。

「常連のお客さんが多いんですが、皆さん、来られると、たいがい2、3時間ここで過ごし、料理を食べ、楽しく寛(くつろ)いで帰られます。皆さんの憩(いこ)いの場になっているのが、何より嬉しいことですね」

 店を開いたのは平成19年。同居していた義母が亡くなり、義母が使っていた和室を何かに利用できないかと考えていた時、もともと料理を作ることが好きだった美由紀さんは、「和室を改造して店にし、手作り料理を提供できれば」と思い立った。

「主人があと少しで定年を迎えるので、老後の生活のことも考え、『いずれ主人と一緒に店ができればいいな』と思ったこともありました」

 そんな時、昔から親交のあった奈良教区栄える会(*2)の松井八重子さんから声をかけられ、松井さんが営むマクロビオティック・カフェ「フラワリッシュ」(奈良市)の手伝いをするようになった。もともと肉食を好まなかった美由紀さんだったが、毎日、電車で30分ほどのカフェに通って手伝ううちに、肉を使わない自然食が人間の心身にいいことを肌で感じるようになり、マクロビオティックに基づく喫茶蓮華を開店。2年後の平成21年から、定年を迎えた敬司さんと運営するようになった。

「ああ、幸せ」と言ってもらえるような料理を作りたい

 取材の日は、月に3回開かれるマクロビオティック料理教室の日で、女性3人、男性1人が参加した。この日作るメニューは、玉ねぎ、おから、豆乳で作る「ヘルシーオムレツ」とそれにかけるトマトソース、「エリンギの貝柱風ソテー」「水菜と蓮根のきんぴらサラダ」、葛粉(くずこ)と胡麻(ごま)ペーストで作る「胡麻豆腐」、そして玄米ご飯に欠かせない「ごま塩」。

左奥から味噌汁、「水菜と蓮根のきんぴらサラダ」、「ヘルシーオムレツ」、「エリンギの貝柱風ソテー」、「胡麻豆腐」、漬物、ひよこ豆入り玄米ご飯

左奥から味噌汁、「水菜と蓮根のきんぴらサラダ」、「ヘルシーオムレツ」、「エリンギの貝柱風ソテー」、「胡麻豆腐」、漬物、ひよこ豆入り玄米ご飯

 野菜はすべて有機栽培の地元産で新鮮そのもの。「ヘルシーオムレツ」は、卵を使わないのにオムレツの味がし、エリンギを輪切りにしたソテーも、ホタテの貝柱のような食感がする。美由紀さんが嬉しそうに語る。

「食べた人に、『ああ、幸せ』と言ってもらえるような料理にしたいな、と思って作っています」

 作り方の特徴は、食材や調味料の分量をあまり厳密にしないこと。増やしたり減らしたり、省いてもOKで、基本さえ押さえれば、あとはそれぞれの好みや体調に応じて自由に作っていいとアドバイスしている。

無理をしなくても肉食は自然に止められる

 美由紀さんが生長の家の教えに触れたのは、昭和52、3年頃のこと。友人に誘われ、生長の家の講演会に参加した。

「信徒である祖父が『生長の家』(*3)などの月刊誌を送ってくれていたので、初めての講演会で『人間・神の子』の教えを聞き、本当に懐かしい気がしました。それで『やっぱり生長の家はいいな』と思い、信仰するようになったんです」

 それから美由紀さんは、誌友会(*4)などに参加して熱心に教えを学ぶようになり、そんな美由紀さんに触発されて、敬司さんも信仰するようになった。

健康的でおいしく、しかも目にも美しく盛りつけされた料理を前に、集まった人たちの顔に笑みが浮かぶ

健康的でおいしく、しかも目にも美しく盛りつけされた料理を前に、集まった人たちの顔に笑みが浮かぶ

 肉料理を出さない喫茶蓮華を開いてしばらくすると、生長の家で肉食を控えようという運動(*5)が活発に展開され始めた。殺生(せっしょう)をしない信仰の面から、また環境保全や飢餓問題の解決の面からも、肉食を避けることの深い意義を知った美由紀さんは、「肉を使わない料理を提供してきたことが正しかった」と、一層自信を持って自然食の料理を作ることができるようになったという。

 喫茶蓮華で提供される自然食は、体調を崩している人からも、「口に入りやすく、食べやすい」と好評を博しただけでなく、「自分でも作ってみたい」という声が寄せられるようになってきた。その声に応え、「家庭でも自然食に親しんでもらいたい」と開き始めたのが、料理教室だった。

「農薬を使わない、地元で採れた旬(しゅん)の野菜、穀類、玄米のご飯など、日本の風土に合った食事をすれば、無理をしなくとも、自然に肉食を止めることができるんです。お客さんや教室に来てくださる方には、ちょっとした会話の中で、肉食をしないことの意義や大切さをさりげなく話しています。これが私にとっての伝道だと思って、これからも主人と一緒に、多くの人に心と体に優しい自然食を提供していけたらいいなと思っています」

*1=第二次世界大戦前後に食文化研究家の桜沢如一(さくらざわゆきかず)が考案した食事法ないし食生活法。生長の家でいう“ノーミート”は乳製品や卵は使っている
*2=生長の家の経済人の集まり
*3=生長の家の旧月刊誌
*4=生長の家の教えを学ぶ小集会
*5=生長の家では、ノーミートの食事を積極的に取り入れ、家族や身近な人々に勧め、他から奪わず、他に与える食生活を普及する運動に取り組んでいる