須田治子さん│山形県山形市 取材/佐柄全一 写真/堀 隆弘 山形市の自宅にあるアトリエで。ここで毎月1回、アートフラワー教室を開いている

須田治子さん│山形県山形市
取材/佐柄全一 写真/堀 隆弘
山形市の自宅にあるアトリエで。ここで毎月1回、アートフラワー教室を開いている

 山形県米沢市にある「すだ記念整形外科」(2016年9月16日閉院)の待合室に入ると、コンポートに飾られたピンクのバラや、白い傘立てに入れられた野バラ、ディルフォニュームなどの色鮮やかな花々が目に飛び込んでくる。一瞬、花畑に足を踏み入れたような錯覚を覚えるが、よく見ると精巧に作られた造花だと分かる。

 見る者の心をほっと和ませてくれるこれらのアートフラワーは、同外科の院長夫人であり、事務長を務める須田治子さんが制作したもの。

「病院が設立された平成9年から続けています。作るのに手間暇(てまひま)がかかりますが、患者さんや病院のスタッフに喜んでもらえればと、季節毎に作品を変えています」

額縁に入れた作品。アートフラワーはさまざまなアレンジが可能である

額縁に入れた作品。アートフラワーはさまざまなアレンジが可能である

 作り方は、まず型紙に合わせて、絹や木綿の布を大中小の花びらにカット、それを染色し、丸ごてなどを使って丸みをつける。次に花芯(かしん)の周りに、小さい花びらからボンドで接着していき、花弁を作成。別に作った茎と葉を付けて1本の花ができる。

 1本の花を作るのに約2時間。20本の花束を作るとなると40時間もかかり、根気を要する作業だが、須田さんにとっては、これが何ものにも代えがたい息抜きになるという。

「事務長の仕事はほぼ年中無休なんですが、仕事が一段落する夜、時間を見つけてアートフラワーに取り組むのが、至福の時です」

 アートフラワーに出合ったのは50年前。婦人雑誌に載った皇室の方の胸に付けられた花のコサージュに魅了された。それがアートフラワーであることを知った須田さんは、教室に通って習い始め、35歳で師範の資格を取得。以来、今日まで自宅で教室を開いて多くの人にその魅力を伝えてきた。

「アートフラワーは絵を描くのと同じなんです。最初こそ型通りの基本を学んでもらいますが、その後は、『感動したことを自由に表現してください』と指導しています」

野草を観察し、スケッチするのが習慣。後に見えるのは、蔵王の山々

野草を観察し、スケッチするのが習慣。後に見えるのは、蔵王の山々

 生長の家の教えには、子どもの頃に母親の影響で触れ、大学時代は青年会(*1)で活動した。

「『三界は唯心の所現(*2)』という教えに感動しました。今、多忙な仕事をしながら、アートフラワーができるのも、いつも明るい心を持とうと努力してきたおかげだと思います」

 子供に恵まれなかった須田さんにとって、アートフラワーは自分の分身のようなもの。アートフラワーを作ると、幼い頃、故郷(岩手県一関市)で見た野草の美しさを思い出すという。

「生長の家で『すべてのいのちは一体』と教えられていますが、アートフラワーを作るためにバラを眺め、スケッチしていると、そのことを実感します。楽しみながら、自分の分身を生み出していきたいですね」

*1=12歳以上40歳未満の生長の家の青年男女の組織
*2=三界とは、衆生が生死輪廻する欲界・色界・無色界という三種の世界のことで、我々が生まれ変わる現象世界すべて。その三界は、ただ心によって現されている世界だということ