鈴木悌介(すずき・ていすけ)さん(鈴廣かまぼこ株式会社代表取締役副社長、 エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議代表理事) 聞き手/菅原裕一さん(生長の家神奈川県教化部事務局長。生長の家地方講師) 写真/堀 隆弘 鈴木悌介さんのプロフィール 1955年、神奈川県小田原市生まれ。鈴廣かまぼこ株式会社代表取締役副社長、エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議代表理事、小田原箱根商工会議所会頭。日本の元気は地域からという考え方に立ち、商工会議所の活動にも関わり、エネルギーの地産地消による地域の活性化と自立を目指す。2012年、「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議」を立ち上げ、2015年には、鈴廣本社新社屋のゼロ・エネルギー・ビル化に尽力した。著書に『エネルギーから経済を考える』(合同出版)がある。

鈴木悌介(すずき・ていすけ)さん(鈴廣かまぼこ株式会社代表取締役副社長、
エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議代表理事)

鈴廣お勧めのかまぼこを紹介した後、ゼロ・エネルギー・ビル建設に取り組んだ経緯について語る鈴木悌介さん

聞き手/菅原裕一さん(生長の家神奈川県教化部事務局長。生長の家地方講師) 写真/堀 隆弘

鈴木悌介さんのプロフィール
1955年、神奈川県小田原市生まれ。鈴廣かまぼこ株式会社代表取締役副社長、エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議代表理事、小田原箱根商工会議所会頭。日本の元気は地域からという考え方に立ち、商工会議所の活動にも関わり、エネルギーの地産地消による地域の活性化と自立を目指す。2012年、「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議」を立ち上げ、2015年には、鈴廣本社新社屋のゼロ・エネルギー・ビル化に尽力した。著書に『エネルギーから経済を考える』(合同出版)がある。

inoti104_rupo_2 2015年、本社の新社屋をゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)(*1)として建設したかまぼこの老舗「鈴廣」(神奈川県小田原市)。「ZEBの新社屋は、経営するレストランや店舗に、太陽熱温水器、太陽光発電、コージェネレーションシステム(*2)、地中熱、井戸水を利用した空調システムを導入し、創エネ、省エネに取り組んできた集大成。自然の恵みをエネルギーとして使う取り組みを小田原全体に広げ、地域の活性化に繋げたい」と語る同社代表取締役副社長の鈴木悌介さんに、なぜ、ZEBに取り組んだのか、ZEBの創エネ、省エネの仕組み、再生可能エネルギーの地産地消による地域活性化のあり方などについて聞いた。

技術の集大成、技術の粋鈴廣の板付きのかまぼこ

──生長の家は、2013年、本部事務所を東京・原宿から山梨県北杜市の八ヶ岳南麓に移転しました。これは、地球環境問題の解決のためには、都会にいてできることは限られていることから、自然豊かな地に移転して、自然エネルギーで電力消費を賄う日本初のZEB“森の中のオフィス”を建設し、脱原発に基づく自然と人間が調和したライフスタイルのモデルをつくりたいと願ってのことです。そうした中、鈴廣さんが2年前、本社の新社屋をZEBとして建設されました。今日は、そのことについてインタビューさせていただきます。

 まず始めに、本業であるかまぼこについて伺いたいのですが。一押しの商品を教えていただけますか。

にこやかにインタビューに答える鈴木さん。左は、聞き手の菅原裕一さん

にこやかにインタビューに答える鈴木さん。左は、聞き手の菅原裕一さん

鈴木 かまぼこというと、板に付いているものを思い起こす方と、さつま揚げとか、ちくわとかの練り製品を思い浮べる方があるかと思います。当社でも、両方の製品を販売していますが、基本的には、板付きのかまぼこが主力商品ですから、これをぜひ食べていただきたいですね。

──先ほど本店を見学し、板付きの高級かまぼこを拝見いたしましたが、これを作るのには10年以上の修業が必要と聞きました。

鈴木 こうしたかまぼこは、当社の技術の集大成、技術の粋と言っていいものです。板付きのかまぼこについては、原料を厳選し、年季の入った職人が、きちっとした製法に基づいて作らないとできません。技術だけでなく、すべての製品を「魚のいのちに、なるべく余計な手を加えず、新鮮なままお客様に食べていただく」という考え方で作っており、保存料や品質改良剤のような添加物は使っていません。安心してお召し上がりいただきたいと思います。

魚のいのちをお客さまに届ける“いのちのバトンタッチ”

──御社では、かねてよりかまぼこの製造工程で出る魚のアラ(*3)から魚肥(ぎょひ)を作って、地元の農家に提供したり、早くから営業用車両を電気自動車にするなど、地域の循環型社会づくり、環境保全に貢献してきたと聞いています。これは、どうして始められたのですか。

鈴木 私たちの取り組み自体が、地球環境の問題を解決するとは思いません。ただ、こういう状況を知っていただくことで、少しでも賛同してくださるお仲間が増えればいいなと思っています。かまぼこ作りは、自然の恵みである天然の魚を使わせていただくものですから、その魚がなくなったら商売ができません。かまぼこというのは、単なる物ではなく、一本のかまぼこに6尾から10尾の魚のいのちが詰まっているものです。ですから私たちの仕事は、そうした魚のいのちをお客さまに届ける、いわば“いのちのバトンタッチ”をさせていただくものだと思うんですね。

 魚は魚だけで生きているわけではなく、海がなければ生きられないし、海は川がなければだめですし、川は森がなければ成り立ちません。かまぼこ作りを通して、そういう“いのちの循環”ということを感じてきたものですから、魚のアラもゴミとして扱うのではなく、大切ないのちの一部と考えて魚肥にし、地元の農家の皆さんに使ってもらっています。魚肥を使ってもらうことで土壌が活性化し、その土壌の養分が川に流れ込んで海に還っていって、いのちが循環していくんですね。

 化石燃料を使わない電気自動車を使用しているのも、環境保全の一環として行っています。

福島第一原発事故を機にエネルギーコスト削減に踏み切る

──お話を伺って、ZEBの建設に取り組まれたのも、そうした思いの延長線上にあることが分かったように思いますが、直接のきっかけはどんなことでしたか。

inoti104_rupo_4鈴木 2011年3月11日の東日本大震災によって、福島第一原発の事故が起きたことが大きかったですね。その影響で、小田原でも電気が止まり、計画停電になって、エネルギーの大切さを痛感したわけです。そこで何ができるかといったら、まずはエネルギーをできるだけ使わないことだというので、社をあげて省エネに取り組みました。

 企業にとって、エネルギーコストの削減は重要なテーマですから、それまでにもそこそこやっていたつもりでした。しかし、まだまだ甘かったということが分かりました。ピークカット15%の削減を義務づけられたのですが、20%を目標にしました。

 設備面での変更は、時間的に難しかったため、かまぼこを生産する工場で1日あたりの稼働ラインを7割に減らし、代わりに週7日稼働させたり、空調をこまめに切るなど運用面の見直しをすることで、目標を達成することができました。

──次に、省エネから創エネに進んでいかれたわけですか。

鈴木 省エネで成果を挙げることができたので、今度はどうしたらエネルギーを創れるかということになりました。ビュッフェレストラン「えれんなごっそ」、かまぼこなどを販売する「鈴廣蒲鉾本店」、食事処「千世倭樓(ちょうわろう)」からなる「かまぼこの里」で、創エネに取り組みました。

inoti104_rupo_5 2013年、鈴廣蒲鉾本店、千世倭樓、かまぼこ製造工場に、それぞれ48.6kW、23kW、38.5kW、合わせて110kWの太陽光発電システムを導入しました。次に手がけたのが、ビュッフェレストランの改築で、新たな設備として、井戸水と地中熱を利用した空調システムを取り入れました。さらに、本店の団体食堂の厨房には、太陽熱温水器を設置し、皿洗いなどに使うお湯を沸かすことで、都市ガスの年間使用量を約2割減らすことができました。 やってみていろんなことが分かりました。井戸水と地中熱を利用した空調システムでは、井戸水だけで充分いけるということが判明しました。井戸水の温度は、一年を通して16〜17度と変わらないので、35度ぐらいの外気を井戸水を通して熱交換すると、25度ぐらいになって充分涼しいんです。冬も零度の外気を井戸水に通すと、5、6度に上がるので、足りない部分を電気で補えばいいわけです。これによってエアコンの電気使用量が年間20%削減でき、井戸水が有力なエネルギーになることが分かりました。

 それから、太陽熱温水器を使ってみて、太陽光で創った電気でお湯を沸かすより、太陽熱を水にあててお湯にしたほうが、3.5倍も効率がいいということも分かりました。

──そうした中で、本社の社屋を建て替えようという話が持ち上がったわけですか。

鈴木 そうです。「どうせ建てるなら、これまでの知見や経験の集大成としてZEBを造ろう」ということになったんです。普通の建物よりお金はかかりましたが、幸い設計の段階でエネルギー削減率が、規定の30%を上回る50%を超えたため、経産省から補助金をいただくことができ、2015年8月に、ZEBの新社屋を完成させることができました。

屋根に太陽光発電装置井戸水を利用した空調

──ZEBの創エネ、省エネの仕組みについて教えてください。

鈴木 創エネとしては、屋根に40kWの太陽光発電を設置し、作った電気は売電せず、蓄電池(定格出力20kW)に貯めて自家消費しています。どうしても必要な不足分の電力は、東京電力ではなく、地元の湘南電力から購入しています。

 省エネとしては、壁の内部に分厚い断熱(20㎝)を施し、窓ガラスは、Low−E(*4)ペアガラスにして断熱性を高めました。また照明は、LED照明と光ダクトによる自然採光を組み合わせ、自然光が弱い時は、センサーが働いて、自動的にLED照明が強まるシステムになっています。

 空調は、新しく掘った井戸の水を利用したヒートポンプシステムです。3階の広いオフィスでは、床にある空調の吹き出し口から温風や涼風が出ますが、常時使うわけではない2階の応接室やミーティングルームは、部屋毎に空調が調整できるようになっています。一度使用した井戸水は、捨てずに貯めて、トイレの水などに再利用しています。

 全体としては、エネルギー管理システム(MBMS)を導入し、一次エネルギー削減率60.2%を達成することができました。

──新社屋の内部を拝見して印象深かったのは、木材がふんだんに使われていることでした。これは、どんな考え方に基づくものですか。

鈴木 本当は、社屋自体も木造で造りたかったんですが、法的にそれができない場所だったんですね。それで仕方なく鉄骨造にしたものの、内部には極力木材を使いたかったので、地元の活性化ということを念頭に置き、床や天井、階段、社員の机などに小田原の山で伐採されたヒノキを使いました。

 見学に訪れた人たちに、「やっぱり日本の木はいいね。木を使ってみよう」と思ってもらえる、そうした啓発になればいいなという思いもありました。

ZEBの見学をきっかけに行政にZEBへの動きが

──生長の家の“森の中のオフィス”にも多くの見学者がありますが、ZEBの社屋を見てもらうことは、もっとも大きい啓発になりますね。

上:LEDと光ダクトによる自然採光を組み合わせた照明/下:天井、床、階段、社員の机には、小田原産のヒノキが使われている

上:LEDと光ダクトによる自然採光を組み合わせた照明/下:天井、床、階段、社員の机には、小田原産のヒノキが使われている

鈴木 それによる波及効果が着実に出始めています。小田原市の隣にある開成町(かいせいまち)では、ZEBとして庁舎を建て替えることになったんですが、その発端となったのは、町長が当社のZEBを見学したことでした。また先日は、鹿児島県沖永良部島(おきのえらぶじま)の町長が見学にいらして、「庁舎を建て替えたいんだが、ぜひZEBにしたい。そして、全体を再生可能エネルギーの島にしたい」と言っていましたし、香川県小豆島(しょうどしま)からの県会議員さんも、「ぜひ、ZEBで庁舎を建てたい」と意欲を燃やしていました。

 当社のZEBが一つのきっかけとなり、少しずつ広がりを見せているという実感があります。

地域で使うエネルギーは自分たちの手で創る

──鈴木さんが代表理事を務めている「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議」とは、どのようなものなんですか。

鈴木 これは、地域に生まれ育ち、地域に支えられ、地域を中心に活動して経済活動の一翼を担っている全国の中小企業経営者の集まりで、2012年3月に設立しました。その目的は、経済人としてエネルギーの問題を正面から捉え、地域に根ざした新しいエネルギーのあり方を探り、持続可能な地域経済と地域社会での自立を目指すというものです。

 設立のきっかけとなったのは、やっぱり福島第一原発の事故です。私たち中小企業は、地域と共に生きており、当社のかまぼこも小田原だから作れるのであり、他の地域では作れません。そう考えると、原発という中央集権的な発電所によるエネルギーに頼るのではなく、使うエネルギーは自分たちで創るのが、本来のあるべき姿ではないかと、あの事故を機に強く思うようになったんです。

inoti104_rupo_8 経済界は、原発再稼働でまとまっているように思われがちですが、私を含め経営者のみんながそう思っているわけではありません。そこで、「原発がない方が健全な暮らしができるよ」という実例を示すために、「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議」(略称=エネ経会議)を立ち上げました。設立当初は、会員が120社でしたが、1年後の11月に社団法人となって、現在は400社に増えています。

──どんな活動をしているんですか。

鈴木 地域での再生可能エネルギーの自給体制確立に向けた活動、再生可能エネルギーの先進事例の視察会、エネルギー専門家によるコンサルティングなどを行っています。

 

上:市民の出資によるメガソーラー発電所(小田原市久野)/下:下の畑でサツマイモを育てるソーラーシェアリング(小田原市下曽我)

上:市民の出資によるメガソーラー発電所(小田原市久野)/下:下の畑でサツマイモを育てるソーラーシェアリング(小田原市下曽我)

私の地元では、2012年12月に、当社を含め市内の企業24社が出資して、「ほうとくエネルギー株式会社」(小田原市)を設立し、メガソーラー(大規模太陽光発電所)、ソーラーシェアリング(*5)、公共施設の屋上を借りて太陽光発電などを行っています。おかげさまで、出資企業は現在、38社にまで増えました。その動きは、地域でつくった電力を集めて地域に供給する湘南電力、そしてさらに、地元のガス会社が参画し、電力の小売りを担当するという、まさにエネルギーの地産地消の仕組みが出来上がりました。これを私たちは「小田原箱根エネルギーコンソーシアム」と呼んでいます。

 エネ経会議を設立した頃からすると、日本全体のエネルギーに対する考え方も変わり、地域においても再生可能エネルギーがかなり普及してきたという気はします。しかし、まだ道半ばです。地元経済が潤う地産地消のエネルギー社会の具体的なあり方を、もっと広く発信していかなければならないと思っています。

小さな実践を積み重ねることで社会が日本が変わっていく

──今後の抱負を聞かせてください。

鈴木 「かまぼこ屋の親父が、なぜ、こんなにエネルギーの問題にこだわるのか」とよく聞かれるんですが(笑)、それは、地球温暖化防止ということはもとより、地域経済のことを考えているからなんです。

inoti104_rupo_9 日本の化石燃料の輸入額は、一時、年間20兆円にも上りました。電気などのエネルギーを賄うために、毎年、これだけの膨大なお金が中東などの資源国に流れている。小田原市だけに限っても、年間300億円がエネルギーの費用として市外に出ているわけです。もし、この300億円の1割を省エネ、地元でエネルギーを生み出す創エネに充てれば、毎年30億円が市内に蓄積できるんです。そのお金を雇用対策や医療福祉に使うことで、地域の活性化に繋がり、中小企業も元気になるんですね。

 原子力や石炭火力発電など、国のエネルギー政策の見直しには時間がかかります。それなら地域に愛着を持つ中小企業経営者の“草の根運動”として、エネルギーから地域を活性化したいというのが、私の考えです。そのロールモデル(*6)として、当社のZEB、エネ経会議やほうとくエネルギーなどの取り組みを参考にしていただければと思います。

 いずれも小さな実践ではありますが、こうした実践を積み重ね、実例をたくさん作っていくことで、やがて社会を、日本を変えていくことができるんじゃないかと思っています。

──生長の家でも、“森の中のオフィス”に続くZEBとして、2016年に生長の家茨城県教化部(*7)を建設し、現在は、福島県、大分県の布教拠点である両教化部会館についても、ZEBを目指して建設計画を進めているところです。今後は、鈴廣さんとも情報を交換させていただきながら、脱原発、低炭素な社会づくりを進めていきたいと思います。本日は、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
(2018年8月2日、小田原市の鈴廣本社にて)

*1=創エネ・省エネの技術により、建物内の年間エネルギー消費量を実質ゼロにするビルのこと
*2=熱源より電力と熱を生産し、供給するシステムの総称
*3=魚の下ろし身を取った後に残る頭部、骨、エラ、ヒレなどに付着した肉のこと
*4=断熱性、遮熱性に優れた複層ガラスのこと
*5=農地を使って行う太陽光発電事業のことで、営農型発電設備と呼ばれる
*6=役割を担うモデル、模範、手本
*7=生長の家の布教・伝道の拠点