池田美千代さん 73歳・富山市 取材/南野ゆうり 撮影/野澤 廣 四季折々の花が咲く庭。春にはスイセンやハツユキカズラ、夏はヤマアジサイ、ユリ、秋はコスモスなど。取材日はピンクの花てまりを摘んで押し花にした

池田美千代さん 73歳・富山市
取材/南野ゆうり 撮影/野澤 廣
四季折々の花が咲く庭。春にはスイセンやハツユキカズラ、夏はヤマアジサイ、ユリ、秋はコスモスなど。取材日はピンクの花てまりを摘んで押し花にした

 池田美千代さん(白鳩会員(*1))の日常は、“自然の写し”に満ちている。庭に咲く四季折々の花々を摘み、和紙に挟んで押し花を作る。電気の熱で乾燥させる機器もあるが、「昔ながらの自然乾燥が一番。電気代の節約にもなるし」と池田さんは考える。

 そして短歌である。歌を詠み始めたのは13年前のこと。父・浦上秀雄さん(享年89)の死がきっかけとなった。

「父が亡くなる7年前に、母(はつ枝さん、享年77)が鬼籍(きせき)に入りました。両親はとても仲がよく、父には母を想って詠んだ歌がたくさんあったのに、母の死を機に、ぷつりと詠まなくなったんです」

 父親の没後、池田さんは姉妹二人と自分用の計3冊の、父の短歌遺詠集『山鳩』を作った。写真のアルバムをリユースし、父の短歌を選抜して、一首一首ていねいに筆で清書した手作りのものだ。

「山鳩はおしどり夫婦だそうです。仲むつまじかった両親に重ねて命名しました」

 軍服で祈りて発ちし宮の社今金婚の妻と拝む            浦上秀雄

 どのページにも、余白には池田さんが作った押し花が散らしてある。思い返せば花が好きになったのも、花を愛でていた両親の影響からだ。

「清書しているうちに短歌のリズムが心地よく、自分でも詠んでみたいという思いが強まりました。娘の初産を詠んだ初めての歌が、北日本新聞に載ったこともきっかけになり、父も入っていた八尾短歌会に入会し、短歌を詠みはじめたんです」

この日摘んだ花てまりの花と葉を、和紙に挟んで押し花にする

この日摘んだ花てまりの花と葉を、和紙に挟んで押し花にする

 父の遺詠を整理していくなかで、母以外に、花や家業だった農業など、自然をテーマにした歌が多いことに気づく。

「父の眼差しに、自然に対するやさしさを感じます。私も同じ道をたどっていると感じることがあるんですよ」

 傘さして娘とめぐりたるあじさいの新種の花「初恋」に見入る   池田美千代

 色とりどりの紙製クラフトバンドで小物入れやバッグを編むのも、紙という素材のやさしさに惹かれたから。大小のカゴや人形などの作り方を書き留めたノートは、すでに4冊に上る。

 自然を切り取り、作品として表現しながら自然を味わうことは、これからも池田さんを魅了してやまないようだ。

* 生長の家の女性の組織