MTさん 42歳・小学校教諭・生長の家教職員会常任幹事 取材/原口真吾(本誌) 撮影/永谷正樹

MTさん 42歳・小学校教諭・生長の家教職員会常任幹事
取材/原口真吾(本誌) 撮影/永谷正樹

子どもは無限の可能性に満ちた存在です。興味の赴(おもむ)くまま新しい世界に飛び込み、新鮮な驚きと感動をもってその才能を発揮していきます。しかし、親の言葉一つで落ち込んだり、自信をなくしてしまうことも事実です。子どもが自信を持ち、本来持っている才能を伸ばしていくには、どうすればいいでしょうか。小学校教諭であり、生長の家教職員会常任幹事のMTさんに伺いました。

──まず、教師を目指したきっかけから聞かせて下さい。

Tさん 両親が生長の家の信徒で、親に連れられて講習会などの生長の家の行事に参加していました。中学生になると練成会(*1)に参加しはじめ、その中で班長として小学生の面倒を見る機会があり、子どもと接する楽しさを知りました。そうしたこともあって、小学校の先生になりたいと思い始めました。

 大学院卒業後、愛知県内の小学校教諭になり、中学校教諭を経て、今は人事交流で、奈良県内の小学校に勤めています。家では小学校6年生の長女と小学校2年生の長男の、二人の子どもの父親です。

──学校で子どもたちに接する時、どのようなことに気をつけていますか。

Tさん 一番は嘘をつかないことです。あとは、間違えたら素直に謝ること。先生と生徒の関係は、まず人と人との関係がきちんとあって成り立つものだと、中学校の現場で学びました。

──教育というと、どうしても成績の方に目が行ってしまいます。

Tさん 私は、算数なら「算数を通してその子を伸ばす」という発想です。もちろん、算数が出来るようになるのは目指すところですけど、計算が出来たり、グラフや表を使って人に分かりやすく伝えたりすることは生活の中でも役立ちますよね。算数という道具を身につけることで、その子がより良く生きていけるようにと考えています。

──どうしたら子どものやる気を引き出せるかに悩む親御(おやご)さんは多いようですが、どうすればいいでしょうか。

Tさん 私は子どもが何かをしたいと言ったら、まずは挑戦させています。でも、上手く出来ないこともあります。そんな時は、マイナスの感情で終わらないように、「失敗をそのままにしたら失敗で終わっちゃうけど、次につなげたらそれは失敗じゃなくなるよね。この経験はあなたにとって、とても良いものになるよ」と、子どもたちに明るく話しています。

──大人がプラスの考え方を示してあげることが大切なんですね。

Tさん 何かに挑戦したら「ナイスチャレンジ!」でいいと思うんです。次につなげたら失敗ではなくなるんですから、結果ではなく、その過程を見てほしいですね。『教室はまちがうところだ』(蒔田晋治作、長谷川知子絵、子どもの未来社刊)という絵本がありますが、この絵本はまさにそういった内容で、私はこの絵本を学校教育のバイブルだと思って、教室に置いています。

──積極的でない子どもには、どのようにしてあげればいいですか。

Tさん 「こんな風に出来たらステキだと思わない?」といったメッセージを投げかけています。その後は子どもに任せて待ち、行動したら出来たことを評価して認めてあげます。この「任せる」「待つ」「認める」のサイクルを、その子のペースに合わせて当てはめるのが、成長を見守るということではないかと思います。

──子どもに任せる場合、どこまで手助けが必要でしょうか?

Tさん それには、その子がどの段階まで成長しているかを見極(みきわ)める必要があります。最初は手をかけなければいけませんが、「手をかける」のがプラスにならなくなる時が来ます。そうなったら、「声をかける」だけでいい段階に入ったんです。その段階を過ぎると、次は「目をかける」だけでよくなります。最終的に子どもは親から自立していくので、最後は自主性を尊重して「心をかける(気にかける)」段階になるのですが、子どもの成長に合わせて接していただけたらと思います。

──親は先回りして手を出したくなっても、我慢することが必要なんですね。

Tさん 「これくらいしか出来ないだろう」と、大人が子どもの限界を決めてしまっている場合が多くあります。大人が出来ないと思って子どもに挑戦させなかったら、子どもはそれより上に行けなくなってしまいます。ですから、「出来る」と信じて挑戦させることが大事です。

──しかし「出来るはず」という期待が、かえって子どもにとってプレッシャーになることはありませんか?

Tさん 確かに親は、同級生と比べて「ここまで出来なくてはいけない」と思いがちです。しかし、子どもは親以上に周りと比べていますから、誰かと比べる言葉は逆効果になってしまいます。周りと比べることなく、その子自身の伸びを評価してあげて下さい。たとえ短い間でも、必ず大きな成長があるはずです。

子どもは答えを見つける力をすでに持っている

──今度は叱(しか)る時のポイントを教えて下さい。

Tさん 一つは、子どもの人格を否定しないことですね。何か悪いことをした時、「あなたが悪い」ではなく、「あなたのしたことが悪い」と、子どもそのものと子どものしたこととを分けるのです。

siro99_rupo_2 もう一つは感情的にならないこと。子どもは、大人が叱っているのか、感情的になって怒っているのかを区別するのが難しいですから、叱った後、大人がすぐ笑顔になれるくらい心に余裕があれば、子どもは安心しますよね。

──親が心に余裕をもつにはどうしたらいいでしょうか。

Tさん 心に余裕がある時に、“心の向き”を整えておくことをおすすめします。私の場合は、通勤にバスと電車を使うんですけど、その通勤の中で家族や学校の子どもたちへの祝福の祈りをしています。特に気になっている子には「神の子◯◯さん、実相(*2)顕現(けんげん)ありがとうございます」と祈っています。

 また、職員室の私の机には、「ありがとう」と書いたカードを飾っています。良い出来事だけを書く生長の家の『日時計日記』(生長の家白鳩会総裁・谷口純子監修、生長の家刊)もいいですね。私の学級では毎日帰る時に、その日あった良いことを書く「いいことノート」に取り組んでいます。普段から明るい方を見る習慣をつくっておけば、たとえマイナスの出来事が起こっても、明るい心の習慣によって、それに振り回されることがなくなります。

──悩んでいる子どものサインに気づくには、どうすればいいですか?

Tさん 例えば学級での朝の挨拶(あいさつ)で、子どもの顔が上がっているかを気をつけて見ています。悩んでいると、目に力がなく視線が下がりますから、非常によく分かるんですね。そういった時は「何かあった?」って声をかけて、話してくれるのを待ちます。まずは「気づいているよ」とサインを送ってあげるんです。

 それはお家の方も一緒です。「何かあったら言ってね」くらいの軽い感じで、「扉を開けているからね。いつでもおいで」というシグナルを出しておくんです。そのためには挨拶は大事です。相手を認めることの第一歩ですし、「あなたがいてくれてありがとう」という祝福行(しゅくふくぎょう)の一つでもありますから。

──それではのんびりし過ぎではありませんか?

Tさん 子どもが困っていたり、落ち着かなかったりした時に、親がゆったり構えていることが大事なんです。親が落ち着いていると、子どもも落ち着いていきます。そして、何か話してくれるならよく聞いてあげればいいですし、そうでなければ「気にしているよ」というメッセージを送り続けます。

──話を聞いてあげるだけでいいんですか。

Tさん 子どもが相談に来る時って、大体答えを持っているんですよ。あとちょっと背中を押してほしいというのが大半です。本当に迷っていて、悩みを握(にぎ)っているうちは言えないんですね。でも話すことが出来た時に、握っていたものをパッと放つことができて、次のことに進めるんです。

 もし、相談に来ても答えがまとまらない場合は、「こういう方法もあるよね」っていくつも選択肢(せんたくし)を示した上で、子どもの口から答えが出るのを待ちます。待てるのは、「子どもの中にすでに答えがある」という信念があるからです。

──最終的に決めるのは子どもたちなんですね。

Tさん そうしないと“自分事”にならないですよね。子どもたちには「あなたは出来る力をすでに持っているんだから、まず自分で決めよう。それを先生は全力で応援するよ」と伝えています。

 ですから、先回りして答えを与えすぎないように気をつけています。子どもにこうしたら、ああしたらって言うのは楽ですよね。子どもも楽が出来るのかもしれませんが、やっぱり自分のことだから人任(ひとまか)せにせず、自分で自分に責任を持つ必要があると思うんです。

 私の教育の根底にあるのは「人間は神の子で、無限力がある」という人間観です。生長の家の教育法は、子どもの神性(しんせい)を認め、美点をほめて引き出していくものです。私の中に「子どもはみな神の子」という信念がなかったら、何が出て来るか怖(こわ)くて、子どもに任せる教育なんてとても出来ません。

 教育の目的は人格の陶冶(とうや)だと、ある大学の先生がおっしゃっていました。つまり、その子の人格を鍛(きた)え上げることです。すでに子どもの中にある色々な問題に対する答えを、子ども自身に見つけさせることで、「神の子」を引き出すのが教育だと思います。

 小学校を卒業するクラスの、最後の学級通信にいつも書いていることがあります。

〈あなたは、あなたでなければできない何かをするために、生まれてきているんだよ。あなたが生まれてから、成功も失敗も含めて経験してきたことでないとできない何かがあるから、生きているんだよ〉

 どの子も、みんな使命をもって生まれてきているんです。

*1 合宿形式で教えを学び、実践するつどい
*2 神によって創られたままの完全円満なすがた