長谷さん 90歳・札幌市 取材/多田茂樹 撮影/堀 隆弘

長谷さん 90歳・札幌市
山が雪化粧を始める季節になっても、自転車で出かける
取材/多田茂樹 撮影/堀 隆弘

 長谷さんは、90歳になる今も化粧品販売の仕事を続けている。昭和46年にこの仕事に就いたので、もう50年近くにもなる。

「受注した化粧品を、月末に自転車でお客様のお宅に届けるんですが、若かった頃は顧客をどんどん増やしました。一番多い時で100人以上もお客様がいたんですよ(笑)」

 と、かつての自分を感慨深く振り返る。

 長谷さんが化粧品を届けてくれ、その度に楽しい話題に花が咲くのだから、顧客としても長谷さんの来るのが待ち遠しい思いだっただろう。

 今はさすがに顧客は減ったものの、残ったお客を大切にして、自転車で直接商品を届け、喜ばれているという。とても90歳には見えない長谷さんだが、若さの秘訣は今も現役で仕事をしているところにあるようだ。

 そればかりではない。長谷さんは「何でも自分でやってみよう」という、はつらつとした好奇心の持ち主である。周囲の生長の家の信徒たちからは、「長谷さんは何にでも興味をもって、楽しく実行する積極的姿勢をお持ちなので、年をとっている暇(ひま)なんてないようです(笑)」と言う声を聞いた。

 長谷さんは若い頃から習ってきた日本舞踊を、2、3年前まで続けていた。「何度も舞台で踊りましたし、札幌教区の白鳩会(*1)の新年会でも踊りました。踊りは本当に楽しいものですよ」

 さらに5年前の85歳の時に、教区白鳩会の聖歌隊メンバーに加わり、メゾソプラノのパートを担当している。「お祈りを先導している時に、いい声が出ているからと誘っていただいたんです。多分私は、全国でも最高齢の聖歌隊員ではないかと思います(笑)」

元気なひいおばあちゃん

 長谷さんが生長の家の「人間・神の子」の教えに触れたのは、昭和30年。北海道北東部のオホーツク海に面した紋別(もんべつ)で2人目の子どもを妊娠していた頃のことだった。

 「知り合いに『生長の家は、子どもは福田(ふくでん)を持って生まれてくると教えている。この教えを学べば、食べるものにも困らず、豊かに暮らせる』と言われ、そんな良いことはないと思って、話を聞きに行きました(笑)」

 とはいえ、その頃は夫との不調和に悩んでいた時期でもあった。「主人の兄に私の姉が嫁いでいて、私は周りからは働き者と言われていましたが、主人には『お前の姉は2歳上だけど、お前の3倍働く』などと言われ、そうしたことが不満だったんです。姉夫婦とはお互いに兄弟姉妹同士ですから、簡単に別れるわけにもいかず、悩んでいました」

「いくつになっても、人のためになることをしていきたいですね」

「いくつになっても、人のためになることをしていきたいですね」

 初めて話を聞きに行った生長の家では、親や夫への感謝が大切と学び、それからは徐々に夫婦調和が実現するようになった。「夫が小言を言ったのは私が素直さや優しさを失っていたためで、つまり私自身が勉強させてもらうためだったんですね。生長の家で学んだことは、すべて自分を育てるための勉強になりました」

 ところが、平成9年4月14日、夫は大腸がんで亡くなった。奇(く)しくもこの日は結婚記念日だった。以来、長谷さんは聖経『甘露の法雨(*2)』を読誦(どくじゅ)して、心を込めて供養し続け、仏壇はとてもきれいに浄(きよ)まっている。

 長谷さんには現在、孫が7人、ひ孫が5人おり、孫たちはそれぞれ家庭を築き、幸せに暮らしている。2年前には、神奈川県に住む三男の孫のお産の手伝いに行ったというから、本当に「元気なひいおばあちゃん」である。残念なことに長男が平成21年に60歳で亡くなったが、長男の孫夫婦の一家が、長谷さんの自宅の隣に暮らしているので、毎日顔を合わせ、明るい会話が絶えない。

 自宅の畑では野菜を育てている長谷さんは、「葱、ピーマン、大根、ほうれん草など、いろいろな野菜を作っていますが、自分では食べきれないので、隣近所に配って喜んでもらうのが楽しみです」と笑う。

 さらに冬になれば道路の雪かきをし、体を動かすのが少しも苦にならない。

「母は97歳まで生きて、父の母も89歳の長寿でした。私も医者に『あなたは90歳ぐらいでは死なないよ』と言われてきましたが、本当にその通りになっていますね(笑)。生長の家の教えを素直に信仰していると楽しいことばかりで、いくつになっても人のためになることをやらせていただけます。こんなに有り難いことはないですよ」

周りからも慕われて

 取材の日、長谷さんの自宅では、白鳩会樽川通支部の誌友会(*3)が開かれた。長谷さんは30年以上も自宅を開放して月例の誌友会を開催し、この日も8名の信徒仲間が集まって、真理の話に花を咲かせた。

自宅の誌友会には多くの仲間が集まり、楽しく真理を学ぶ

自宅の誌友会には多くの仲間が集まり、楽しく真理を学ぶ

 講師を務めた札幌市在住の高橋さんは85歳。どこへでも車を運転して出かけるほど元気な高橋さんが「長谷先生のお元気さには驚く」と舌を巻く。

「私より5歳も年上なのに、教化部(*4)まで6キロ以上の道のりを、自転車に乗って来られるんですから、こちらまで元気をいただけます」

 足腰も膝も丈夫なので、誌友会でもしっかり正座をして話を聞くだけでなく、参加者のために、お茶やお菓子を運んだり、テキストを開いてあげたりする。人のために動くのが楽しくてたまらない様子だ。半年前までは、講師として誌友会への出講も続けていた。

 この日集まった参加者も、「私たちの心と体には生長の家の真理が入っているから、みんな若々しいですけど、長谷先生はちょっと特別かもしれませんね」と口をそろえて言う。

 人のために働くのが何より大好きな長谷さんは、教化部で開かれる練成会(*5)で泊まりがけで真理を学ぶ人たちのために、厨房での奉仕を20年以上も続けている。

「今は味噌汁作りを担当しています。参加者に『おいしい』と言ってもらえるのが、何より励(はげ)みになりますね」常にてきぱきと動きながら、はつらつと語る長谷さんは、90歳とは思えないほど若々しさにあふれていた。

*1 生長の家の女性の組織
*2 生長の家のお経のひとつ
*3 教えを学ぶつどい
*4 生長の家の布教・伝道の拠点
*5 合宿形式で教えを学び、実践するつどい