加藤美智さん(39歳)岐阜県瑞穂市 取材/宮川由香 撮影/堀 隆弘 取材当日は長女の10歳の誕生日。「私も母親になって10歳。わが家を選んで生まれてきてくれたことに感謝しています」

加藤美智さん(39歳)岐阜県瑞穂市
取材/宮川由香 撮影/堀 隆弘
取材当日は長女の10歳の誕生日。「私も母親になって10歳。わが家を選んで生まれてきてくれたことに感謝しています」

 母親の加藤美智さんが見守る中、小学4年生の長女と、2年生の次女の二人の姉妹は、近所を流れる五六(ごろく)川の堤防を笑いながら走り回る。てんとう虫を見つければ持ち歩き、草むらにオナモミを見つけては服につけて遊び、落ちている桐の実の殻を夢中になって集め、ママに見せに来る。

 自宅に戻ると、部屋の中には姉妹が描いた絵や習字などが飾られ、小さなギャラリーのようだ。両親が子どもたちの感性や個性を大切に育(はぐく)んでいるのがよくわかる。

「子どもへの親の願いはいろいろありますけど、私の場合、一番の願いは、『親に愛されている安心感と自信を、いつどんな時でも持っている子になってほしい』ということなんです」

 それは、加藤さん自身の生い立ちが関係している。

 加藤さんの母親は、複雑な家庭環境で育ち、病気で苦しむことも多かったためか、あまり愛情表現をしないタイプだった。夫婦喧嘩も多く、一人っ子だった加藤さんは、怯(おび)えて沈んだ気持ちでいることが多かったという。

「小さい頃からほめられた記憶はなく、親の愛情を求め続けていたところがありました。いつしかその思いは、親への反発心と自己肯定感の低さへとつながっていったのだと思います」

 母親が病弱だったので、医療関係に進みたいと思うようになり、高校を卒業後は医科大学で看護学を学び、卒業後は看護師として大学病院に勤めた。

 平成16年、27歳の時に知人の紹介で出会った英彦さんと結婚し、3年後に長女、その2年後に次女が生まれた。

「結婚前に、夫の実家に掛けられていた生長の家の日めくりカレンダー『ひかりの言葉』のこと。生長の家総裁・谷口雅宣監修、生長の家刊)の明るい言葉や、義母や夫の明るく穏やかな人柄に惹(ひ)かれ、義母が信仰する生長の家の教えの勉強をはじめました」

 英彦さんの仕事の関係で、長女が幼稚園年少から小学校1年生まで、シンガポールで4年間、家族で生活することになった。

「シンガポールは『出る杭(くい)は伸ばす』方針で(笑)、授業では自分の長所を発表する『自慢大会』があるんです。長所を伸ばすという意味で、生長の家の教育法との共通点を感じて嬉しかったですね。どんな小さなことでも先生はほめて下さり、娘たちも自分の得意なことを伸ばそうと、積極的にチャレンジしていました」

長女の成長に感謝する

 2年前に帰国し、長女は2年生から、岐阜県の公立小学校に転入した。しかし、シンガポールで個性を豊かに表現して伸び伸びと過ごした長女は、日本の学校の画一的な規則を受け入れるのに悩んだ時期があった。

 加藤さん自身も帰国後、戸惑ったことがあった。

家の中には、愛ある言葉が壁いっぱいに飾られている

家の中には、愛ある言葉が壁いっぱいに飾られている

「長女が小学3年生の時、私は子どもの分団登校を引率する係になりました。子どもの多くは1、2年生の元気な男の子で、交通量の多い危険な道のため安全に登校させることに神経をすり減らしました」

 加藤さんはこの問題について引率する親同士で話し合い、自分勝手な行動を繰り返し、通学中危ない子同士を離して並ばせてはと、副班長を務める長女に解決策を持ちかけた。すると、長女がその子たちをかばい、涙を流して“大人の介入”に反論したことがあった。長女は自分なりに解決策を考えて、試行錯誤をしている最中だったのだ。

 

 加藤さんは、生長の家の「人間・神の子」の教えに触れ、母親教室(*1)に通い、心で認めたものが現れることや実相(*2)を礼拝(らいはい)することを学び、実践してきたつもりだったが、目の前の現象にとらわれ、疑いや不安、消極的な感情にふりまわされていたことに気づかされた。

 ちょうどその頃、母親教室に参加すると、心が穏やかになって神に全托する気持ちになり、分団の一人一人の、本当のすばらしい姿──実相を心から拝むことができるようになった。

「大人の考えを優先させていたことを反省し、娘が他人をいたわれる子に育ってくれていたことに感謝しました」

 長女の優しさを物語るこんなエピソードがある。

 加藤さんはピアノの練習をする長女に、弾き方などを口うるさく言うことがあったが、ある日「娘にうるさく言ってばかりではいけない」と思い、教室の先生や長女のリクエストもあって、ピアノは未経験ながら親子連弾に挑戦することにした。

 練習の時から加藤さんは失敗ばかりで、発表会の本番でも失敗してしまった。恥ずかしくて、長女にも申し訳ないと思ったが、長女は母親を責めることなく、笑顔で受け入れてくれた。その姿に、加藤さんは今までの口うるさかった自分を反省し、ありのままの娘を受け入れて応援することができるようになったという。

 加藤さんは、自分が間違ったと思うことは「ごめんね」と言葉にし、感動したことは「すごいね、すばらしいね」ときちんと言葉にして伝えることを心がけている。そして、毎晩寝る前にはギュッと抱きしめ、「いつでも愛しているよ、味方だよ」と表現している。

「私自身、子どもを生み育てる中で、親の有難さを感じられるようになりました。今は父と母に心から感謝しています」

 両親からの尽きることのない愛情を心いっぱいに溜めて、周囲の人にもその愛を注いでいる可愛い姉妹。未来の二人の姿が楽しみだ。

*1 母親のための生長の家の勉強会
*2 神によって創られたままの完全円満なすがた