川島房子さん 62歳・福岡県久留米市 取材/原口真吾(本誌) 撮影/堀 隆弘 久留米百年公園の木陰で、ヨガのポーズを取る。「登山の時も山頂でポーズを取ることがあって、とても解放的な気分になります」

川島房子さん 62歳・福岡県久留米市
取材/原口真吾(本誌) 撮影/堀 隆弘
久留米百年公園の木陰で、ヨガのポーズを取る。「登山の時も山頂でポーズを取ることがあって、とても解放的な気分になります」

 薬剤師の川島房子さんは、62歳になる今も病院内の薬局にフルタイムで勤め、勤務後はヨガやフィットネス、休日には月1、2回の登山と、忙しくも充実した日々を送っている。

「24時間365日、好きなことをしているという感じです。48歳になってヨガを始めてから、体を動かすことが好きになりました」

 学生時代、美術部や英語部に入っていた川島さんはいわゆる文化系で、運動には縁がなかった。だが、子育てが一段落し、時間の余裕ができた頃、何気なく開いた地域の広報誌でヨガ教室を知り、以前から興味があったこともあって、参加してみることにした。週1回、ヨガ教室に通い始めると、体を動かす心地良さを感じ、新しく出来た友人と顔を合わせるのも楽しみになった。

「体が少しずつ柔らかくなっていくのも嬉しい発見でした。普段から、歩く時に足の運び方に気をつけたり、背筋を伸ばして姿勢を意識したりするようになりました」

 さらに、ヨガを続けているうちに、論理的な思考に偏(かたよ)っていたことを感じるようになったという。特に薬剤師の仕事では効率のよさやミスをしないことが求められ、緊張から呼吸も浅くなりがちだった。ヨガの瞑想(めいそう)は、そうした論理的な思考を司(つかさど)る左脳的な脳の働きを休め、ひらめきやイメージによる思考を司る右脳的な働きを、活性化させるという実感があった。

「ヨガでは『グラウンディング』と言って、地球の核と自分がつながっていることをイメージする瞑想法があり、私は地球のあらゆるもの、動物や植物とも一体という実感が湧(わ)いてきます。これは、すべてが神のいのちにおいて一体であり、人間も自然の一部であるという生長の家の教えに通じるものがあると感じています。脳の働きのバランスも取れて、リフレッシュできます」

離婚を経験して

 川島さんが生長の家の教えに触れたのは平成2年のこと。24歳で結婚し、長女と長男にも恵まれ、何不自由なく生活していたが、29歳のとき突然夫から浮気を打ち明けられた。

「ショックで目の前が真っ暗になりました。相手の女性との間には子どももいたんです」

 ある時、父親の葬儀のため実家に戻ると、生長の家を信仰する母親の本棚にあった『真理』(生長の家創始者・谷口雅春著、日本教文社刊、全11巻。現在は『新版 真理』)の「女性篇」が目に留まった。

「引き寄せられるように手に取って読み始めました。妻は夫の幸福を願い、夫が望むことをなるべく叶(かな)えてあげたいと思い、柔らかい心で夫を立てるものだと知り、ショックを受けました。主人は大人だから一人でも大丈夫、私は子育てに専念すればいいと、主人をないがしろにして、寂しい思いをさせていたことに気づいたんです」

ヨガマットを肩に掛け、軽快な足取りで通りを歩く川島さん

ヨガマットを肩に掛け、軽快な足取りで通りを歩く川島さん

 川島さんは家に帰ると、「本当の愛は実相(*1)の愛」といった生長の家の言葉を紙に書いて家中に貼り、夫と和解した姿を心に描いて神想観(*2)を続けた。不安で苦しくなった時に『真理の吟唱』(生長の家創始者・谷口雅春著、日本教文社刊)を読むと、「神様の創造した実相世界は、ただ光だけの世界なんだ」と感じられ、心が落ち着いた。

「何年か経ったある日、神想観の中で『主人のことは神様の御心(みこころ)のままにお任せして、私は一生待とう』という気持ちになったんです。結局、平成15年に離婚することになりましたが、主人は長女の結婚式に出席してくれました。主人がいてくれたからこそ子どもたちにも恵まれ、今は感謝の気持ちだけです」

 現在、2人の子どもはそれぞれ家庭を持ち、孫は3人になった。川島さんは周りの人たちを元気にしたいという思いを胸に、薬局では患者さんが幸せになれるように、「実相円満完全」と心の中で唱えながら見送っている。

自分の限界に挑戦する

 ヨガを始めて数年後に、同僚から社会人の登山サークルに誘われ、九州を中心に山に登るようになった。平成22年には北アルプスの槍ヶ岳(やりがたけ)に登り、とても感動した。

「岩場の陰に小さな黄色い花が咲いていたんです。もしかしたら見る人は誰もいないかもしれないのに、それでもきれいな花を咲かせている。置かれた場所で精一杯尽くしている、小さな命に感動しました。思い返すと今でも心が震えます」

 登山では急坂(きゅうはん)で心臓がバクバクして、もう限界と感じる時があるが、それがあるからこそ、山頂に着いたときの達成感は大きく、また味わいたくなるという。

「ヨガでも、もうこれ以上曲がらないと体が悲鳴(ひめい)を上げていたのに、続けているうちに、ある日ポンと完成ポーズが取れてしまうことがあります。その時の、自分の限界を超えた気持ち良さは言葉では表せません」

 尻込(しりご)みせず新しいことに挑戦する川島さんだが、「合わなかったらやめればいい」という軽い気持ちで始めているそうだ。

「実際、やめてしまったものも多いんですよ。例えばテニス。どう練習してもラケットに球が当たらなくて……。みなさんも興味が湧(わ)くものがあったら、まずはお試しという気持ちで始めてみてはいかがでしょうか。ずっと続けられるものに出合えたら素敵なことだと思います」

 背筋をすっと伸ばし、軽快な所作で日々を送る川島さんは、年齢を感じさせない魅力で輝いていた。

*1 神によって創られたままの完全円満なすがた
*2 生長の家独得の座禅的瞑想法