伊敷優希(いしきゆうき) 石垣島在住。2010年10月に27歳で結婚。5歳、2歳の男の子の母。息子の幼稚園のお友達&ママと、公園遊びに日々奮闘。2017年2月から沖縄教区青年会委員長。光明実践委員。

伊敷優希(いしきゆうき)
石垣島在住。2010年10月に27歳で結婚。5歳、2歳の男の子の母。息子の幼稚園のお友達&ママと、公園遊びに日々奮闘。2017年2月から沖縄教区青年会委員長。光明実践委員。

 食事会は次の週末に開かれ、私たち女性4人に、男性が3人が集まった。みんなすぐに打ち解けて、楽しい話に花が咲いた。しかし、私は気になるような男性はいなかったので、この場が楽しく過ごせればいいと思った。

 ところが3時間が過ぎた頃、突然座敷の戸が開いて「すみません、仕事で遅くなりました」と一人の男性が入ってきた。その瞬間、息が詰まった。一目惚(ぼ)れだった。「やっぱり今日は何かあるような気がしていた! この人と話してみたい!」と瞬間的に思った。

 彼は、「3時間も遅れたら行かない方がいいと思ったが、仕事とはいえドタキャンは失礼だと思い、顔だけ出しにきた」と言っていた。心の中で「ナイス判断。来てくれてありがとう!」と思っている私がいた。

 彼は私の斜め前に座った。後々、彼から聞いたところによると、彼も座敷に入って、すぐ私と話したいと思ってくれたのだそうだ。心理学的に真正面に座ると敵意を持ちやすくなるため、とっさに斜め前の席を選んだという。

 いま思えば、会った瞬間からお互いに好意をもった私たちは、いい流れに乗ってスタートしたことになる。しかし、彼は寡黙(かもく)でポーカーフェイスだったので、その時の私は、自分の一方的な好意だとしか思っていなかった。

イラスト/石橋富士子

イラスト/石橋富士子

 それでも、何か話そうと私は努力した。結果、お互いの共通の話題に行き着いた。ちょっとマイナーな、お笑い番組だ。深夜、あれを観ていてこんなところで役に立つとは……。さすが、神のはからいだと思った。

 これを機に彼と会話が弾(はず)んだ。話の端々で、目を細めて微笑む姿に、一見とっつきにくそうだが、本当は穏やかな人だとわかった。しかし、彼と話せた時間は短かった。すぐにお開きの時間が来て、みんなで二次会に行くことになったが、彼はこの後、職場の先輩に誘われていたのだ。

 先輩の誘いとはいえ、あっさり帰る様子に、「あまり楽しくなかったのかな。連絡先も知らないし、もうこれっきり会うこともないんだろうな……。でも、もう一度くらい会いたい」。そんな寂しさを感じながら店を出た。

 店の外で、私が友達と離れて一人になった時、彼がすっと私の前に立った。携帯電話を差し出して、「赤外線通信はじまってるんだけど」と淡々とした口調で言った。(ガラケーが主流の当時、連絡先交換は赤外線通信によることが多かった)

 あまりに突然で、私は一瞬思考が停止していたが、彼の携帯画面は一生懸命、通信相手を探している。慌てて自分の携帯を出し、メールアドレスと電話番号を送った。「じゃあ、また連絡する」と言って、彼は帰って行った。

「この人と、少し先が開けたんだ!」と思うと、嬉しさがこみ上げてきた。二次会からの帰り道に、知らない番号から電話が来た。「彼からかも!」胸が高鳴った。(つづく)