松澤まき子さん 68歳・北海道旭川市取材/南野ゆうり 撮影/野澤 廣

松澤まき子さん
68歳・北海道旭川市
取材/南野ゆうり 撮影/野澤 廣

 家を新築した15年前、松澤まき子さんとご主人さん(67歳、会社役員)は「家の西側、東側、南側はずいぶん敷地が空いているわね」「耕して畑を作ろうか」と話し合った。こうして家庭菜園が出来上がったが、土の質に加え、腕も良かったのだろう、無農薬だが当初からよく作物が実ったという。その後、畝(うね)作りや種まきなどはご主人さんが行い、草むしりはまき子さんの役目になった。まき子さんは花も好きで、畝の間や玄関先は花でいっぱいだ。

 まき子さんは4人の男の子に恵まれ、4家族が集まると、松澤家は息子と孫たち計18人に膨れあがる。その食事を支えているのが、家庭菜園で採れる新鮮な野菜である。トマト、シシトウ、ナス、キュウリは特に収穫量が多く、通年食べられるようにカットして、専用の冷凍庫で保存する。

「本当に野菜って捨てるところは一つもないですね。干したり、漬け物にしたりと、食べ切るよう工夫します」

上:ご主人さん手作りのドライトマト。ミニトマトを半分に切って塩を振り、干して乾燥させて作る/下:菜園で採れたピーマンやシシトウなどは、野菜専用の冷凍庫で保管している

上:ご主人さん手作りのドライトマト。ミニトマトを半分に切って塩を振り、干して乾燥させて作る/下:菜園で採れたピーマンやシシトウなどは、野菜専用の冷凍庫で保管している

 松澤家の食生活は、お肉を使わないノーミートが基本である。「もともと実家がお肉を食べない家でした。母が生長の家の熱心な信徒で、殺生(せっしょう)は避けるようにとの教えを守っていましたから」とまき子さんは言う。一方、ご主人さんは、「若い頃は焼肉など大好物でしたね。でも菜園で採れる野菜がうまいし、妻の影響もあって、いつの間にか野菜中心の食事に慣れていきました」

 北国・旭川だけあって、冬は2メートル前後も雪が積もる。これほどの積雪があると、雪下ろしでの転落など命に関わる事故もしばしば起きる。そのため松澤邸は、雪を太陽光で溶かす無落雪屋根の家である。屋根がフラットなこの構造は近年、北海道全土で普及が進んでいる。

「雪はやっかいで危険な面もありますが、恵みの雪でもあるんですよ」と、まき子さんは言う。例えば、積雪は“天然の冷蔵庫”となる。炊き上げた玄米に麹(こうじ)、砂糖、塩を加えた玄米床に大根を漬け込んだ4斗樽を保管するのは、晩春まで消えないこの雪の中と決めているのだ。「主人の兄さんと妹さんがこの漬け物を楽しみにしていますので、毎年力が入ります」

 雪国ゆえの自然の恩恵。松澤さん夫婦はそれらを生かし、「買いすぎない、持ちすぎない」をモットーに生活を楽しんでいる。