野口みどりさん 65歳・広島市 取材/南野ゆうり 撮影/野澤 廣 自宅2階のベランダで。菜園には花々も植えられていて、見た目にも心安らぐ場所になっている

野口みどりさん 65歳・広島市
取材/南野ゆうり 撮影/野澤 廣
自宅2階のベランダで。菜園には花々も植えられていて、見た目にも心安らぐ場所になっている

 野口みどりさんは毎年楽しみにしているものがある。それは“鳥の置きみやげ”だ。

「植えたはずのない見なれない植物が芽を出していると、それは恐らく鳥のフンに混ざって運ばれた種が芽生えたものなんです」

 3年前はスイカ、昨年のそれはトウガンだった。庭の沙羅(さら)と梅の木の間に、尖(とが)った形の葉を見つけたのは春先のこと。野口さんは最初キュウリかと思い、菜園の真ん中あたりに移して地植えし、添え木を立てて、成長を見守った。

「ところが、キュウリとは似てもにつかないまん丸な実がなって……。そこで初めてトウガンだと分かりました(笑)」

 本来トウガンは地を這(は)う茎に実をつけ、土の上で育つ。しかし、キュウリと間違えられたトウガンは、添え木にぶら下がったままの格好で大きくなった。

「そのせいか実はやや小ぶりですが、おいしさは変わりません。3個もなりましたよ」

 野口さんは若い頃から夫と、四季の花を愛(め)でたり植物園に行くのが好きだった。植物も人間も、同じいのちのつながりの中にいることを教えてくれる場所だからだ。そして生長の家では、神のいのちにおいて自然と人間は一体であり、常に調和していると教わった。

上:絵巻物が描かれた帯をリユースし、額装してセンス良く飾っている/下:刺し子や刺繍も楽しんでいる野口さん。赤毛のアンをモチーフにした刺繍は、夜寝る前の楽しみとなっている

上:絵巻物が描かれた帯をリユースし、額装してセンス良く飾っている/下:刺し子や刺繍も楽しんでいる野口さん。赤毛のアンをモチーフにした刺繍は、夜寝る前の楽しみとなっている

「人間は、自然のいのちの一部をいただくことで自らのいのちをつないでいます。家庭菜園で野菜を作り始めたのは、いのちをいただく者として、家で口にするものは自分の手で作りたいと思ったからでした」

 菜園は、2階のゆったりとしたベランダにもある。

「ピーマン、ゴーヤ、トマトが実をつけ、ルッコラやサンチュを植え、夏はパッションフルーツの木のグリーンカーテンで、日差しの調整をしています。赤い実は外から見てもきれいですし、朝起きたとき緑がぱっと目に入り、癒やしの空間ともなっています。幸せな気持ちになるんですよ」

 春には緑の新芽が芽吹く。どんなに大変なことがあっても、柔らかく暖かな春は必ずやって来るのだ。

「そのことを思うと元気をもらえます。家庭菜園をするようになってから、いのちの大切さや生かされているという実感、加えて農家の方のご苦労が分かり、食べ物を粗末にできなくなりました。端から端まで調理し使い切るようにしています」