井口信子さん 75歳・京都府城陽市 取材/南野ゆうり 撮影/野澤 廣

井口信子さん
75歳・京都府城陽市
居間に置かれたベルギー製の薪ストーブで、夫の幹雄さんと手作りピザを焼く
取材/南野ゆうり 撮影/野澤 廣

 井口信子さんの自宅を訪ねたのは立春後まもない、雪もちらつく寒い日だった。だが家の中はふんわり温かい空気に包まれ、テーブルには春を告げる寒アヤメが一輪、鮮やかな紫の花びらをほころばせていた。

「暖房はこのストーブだけなんですよ」

 と、信子さんが指差したのは居間に据えられた薪(まき)ストーブ。空気の流入量に注意しながら扉を開け、薪をくべた。薪は近所の材木屋から分けてもらう端材(はざい)が主だという。「朝、火をつけ、寝る前に薪を1本放り込んで火種を残しておくと、奥の寝室まで暖かい。エアコンも灯油もほとんど使わないため光熱費は月5,000円。すごい節約なんですよ」と信子さん。

上:鶴の子柿で作った干し柿は古老柿(ころがき)と呼ばれる。毎年夫婦で皮むきし、軒下に吊るして作っている。冷凍保存しておけば、通年おいしい干し柿が食べられる/中:保存食の保管スペースには、梅干し、梅酒、梅味噌ドレッシングなどがずらり/下:ザルやカゴに和紙を貼って作った一閑張の数々。絵手紙の要領で描いた絵がアクセントになっている

上:鶴の子柿で作った干し柿は古老柿(ころがき)と呼ばれる。毎年夫婦で皮むきし、軒下に吊るして作っている。冷凍保存しておけば、通年おいしい干し柿が食べられる/中:保存食の保管スペースには、梅干し、梅酒、梅味噌ドレッシングなどがずらり/下:ザルやカゴに和紙を貼って作った一閑張の数々。絵手紙の要領で描いた絵がアクセントになっている

 このストーブが井口家の居間に据えられたのは平成26年。鉄骨の躯体(くたい)を再利用してリフォームした広いワンルームと、夫婦で使えるキッチンが実現した時期だ。

 信子さんは家庭菜園のキュウリ、キクイモ、チョロギ(シソ科の植物で塊茎を食用にする)などを、通年食べられる佃煮(つくだに)や酢漬けなどの保存食にする。一方、柿やリンゴでジャム作りをするのは、もっぱら夫の幹雄さん(78歳)の役目。夫婦一緒に台所に立って、料理を楽しんでいる。

「この地域の特産に鶴の子(つるのこ)柿という渋柿があります。庭にも2本の鶴の子柿の木があり、毎年1,000個ほど干し柿を作るんですよ」

 井口さん宅の周りには京都府下最大の広さを誇る“青谷梅林(あおだにばいりん)”が広がり、この地元の梅で作る梅干しや梅酒、梅味噌ドレッシングは、香りが立っていて絶品だという。

 信子さんは一閑張(いっかんばり)のクラフト作りもしている。市販のザルやカゴに和紙を糊で貼り、その上から柿渋を塗り、最後に自分で描いた絵を貼って完成。自宅で開く誌友会(*)で参加者たちに教えている。

 信子さんが生長の家に触れたのは、高校2年生だった長男のひきこもりを解決しようとした時のこと。近所の人から「人間・神の子」の教えを伝えられ、誌友会に参加するようになったのだ。「すべては良くなる」との教えに導かれ、長男は立ち直り、無事大学に入学した。今では3児の父親だ。信子さんは自然との調和を説く教えにも共感し、自然の恵みに感謝する生活を実践している。「自然との共生を存分に楽しんでいます」。そう言って目を細めた。

* 教えを学ぶつどい