S.Y.(38歳) 大阪府堺市

S.Y.(38歳) 大阪府堺市

 私は、大学で社会福祉学を専攻し、社会福祉士の資格を取得しました。現在、病院のソーシャルワーカー(相談員)として勤務しています。社会福祉の根本には、「人は環境から影響を受け、環境は人の意識が変わることで変わり得る。人と環境は互いに影響を与え合っている」という考え方があります。

社会福祉の道を志す

 私は、小学校4年生頃まで季節の変わり目や母の精神状態に呼応して、度々喘息の発作を起こし、病院に駆け込んでいました。ちょうどその頃、学校で「健康体操」が始まり、授業前の朝の時間に校庭を5周走った後、体を動かすゲームをしました。毎朝参加することで体が鍛えられたことと、成長に伴い母の精神的影響を受けにくくなったことで、小学校5年生になる頃には発作は出なくなりました。

 中学生からは母子共に積極的に生長の家の教えを学ぶようになり、バレーボール部もに入ったたことで、さらに気力・体力が充実し、以来、病院のお世話になることはなくなりました。

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 中学校1年生の時に初めて参加した練成会(*1)では、どんな罪を犯した人でも素晴らしい神様のいのちが宿っていることや、目の前に現れることは自分の心の展開だという心の法則を学びました。そして、良い人生を送るには良いコトバを使うことが重要で、話す言葉だけでなく、心で想うことや、表情・態度・行動もコトバであり、人生をかたちづくる大切な要素だと知りました。講師からは、幸せになるには、まず鏡の前で最高に幸せそうな表情をすることだと教わりました。

 家に戻ると、洗面台で歯を磨く時、玄関で靴を履きながら姿見に自分が映る時、笑顔の練習をするようになりました。当時、クラスに馴染めなくて悩んでいた私でしたが、笑顔を意識するようになると、自然とクラスメートと打ち解けられるようになりました。

 自分に祝福を送るこの習慣は、今も継続しています。鏡の中の自分にニッコリ笑いかける度に、自分にはまだまだ笑顔になる力があること、神様の世界はどんなに素晴らしいか、神様の世界はどんなに美しいかを味わうために生まれてきたことを思い出し、明るい心を取り戻すことができます。

 このような体験から、心と健康、心と環境のつながりに興味を持ち、人と深くかかわる仕事に就きたい、人と環境双方にアプローチしていく福祉の道に進みたいと想うようになりました。

患者の希望に寄り添いながら

 ソーシャルワーカーの仕事を一言で表すと「患者さんが望む生活を支援すること」です。同じ年齢、同じ病名の患者さんでも、それぞれ異なる生活背景があり、抱える生活の不具合はさまざまです。

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「入院費の支払いが心配」「体調は回復したが、体力が落ち、今まで通り家事ができなくなった」「飲み込む力が弱り、口からだけでは十分な栄養が摂れない。今後の栄養摂取をどうしたらいいか」「がんの終末期。自宅に帰って家族との時間を過ごしたい」「亡き後に家族がもめないよう遺言書を作っておきたい」「身寄りのない単身生活。家での生活は限界なので、施設を探していきたい」等々、相談内容は多岐にわたります。病気や障害があっても、現状の中で、どのように生きていきたいか希望を伺い、課題を整理し、生活の再設計をお手伝いします。

 患者さんが希望を描けるよう、「解決構築アプローチ(*2)」という面接技法を継続的に学び実践しています。何を大切にどんな人生を送られてきたか、どんな風にものごとを決めてこられたかをお伺いし、患者さんやご家族の今までの努力や工夫、成功体験を丁寧に見つけ出し、それをさらに拡げ、本来持っている力を発揮して頂けるよう働きかけます。

「どうすればいいか分からなかったけど、見通しがたって楽になりました」「おかげで父と向き合うことができました」といった患者さんやご家族からの言葉は、この上ないご褒美です。

 日々、生長の家青年会(*3)で培ってきたことが糧になっていると痛感しています。中でも青少年練成会の運営奉仕を通して、一人一人を神の子として礼拝する姿勢を学びました。さらに『生命の實相』(生長の家創始者・谷口雅春著、日本教文社刊。全40巻)第7巻に書かれていた「他のよろこびを自分の心に反射して輝くところの喜び」と言えるような、体はクタクタになっても心の底から湧き上がる清々しさを、体験を通して繰り返し学べたことは、私のかけがえのない財産です。

感謝で一日を終える「振り返りノート」

 昨年(2020)は、新型コロナウイルスの感染拡大により院内の体制が目まぐるしく変化し、加えて10月からはタイムリーで繊細な支援が求められる緩和ケア病棟の担当になりました。職員もご家族も気持ちが敏感になっていて、慎重に対応していたつもりが、ミスが自分だけでは対処できないほどのクレームになり、上司に一緒に頭を下げに行ってもらうことが度重なりました。今までにない緊張と疲れを感じるようになりました。

 気持ちをほぐすために、帰宅後、深夜、目がカラカラになるまでユーチューブを見続け、疲れ果てて眠る。そして朝は何度も目覚ましをかけ直し、グッタリ起き上がって出勤する、という悪循環に陥りました。何とかしなければという危機感と、ただ押し流され毎日が両手からすり抜けていくような虚無感を覚えました。

 青年会では、一人一人が教えを生活習慣として定着させ、ライフスタイルを自然と調和したものに転換していけるよう、生活全般に好影響を及ぼす“鍵となる習慣”を年単位で身につける取り組みが行われています。令和元年度のテーマは「習慣化」で、うまく習慣化できた人は『日時計日記』(生長の家白鳩会総裁・谷口純子監修、生長の家刊)を用いて日々の実践を振り返っていることがわかり、昨年度(2020)は「振り返り」がテーマに掲げられました。

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 青年会のネットフォーラムで、金内崇幸・青年会会長(当時)が「記録がないと、振り返りはできない」とお話しされていたことや、谷口雅宣・生長の家総裁がご発表くださった「コロナバスターズ宣言(*4)」に力をいただき、私は生活を建て直すため、11月から就寝前にその日あった良いことを小さなノートに書き出すようにしました。

「お願いだから、一行でいいから書いて!」と自分に頼み込むような気持ちで始めましたが、毎日書き続けるうちに、毎日、学びやよろこびがあり、多くの愛念に取りまかれていることを実感するようになりました。仕事のミスも、そこから学べたことや次に活かすためのアイデアと共に記載しました。そして「神様、今日も一日、わが人生最幸の、かけがえのない宝物の一日をありがとうございます。私はとっても幸せです」と一日に花丸をつける言葉で締めくくります。生かされている感謝と、毎日を大切に積み重ねていけているという手ごたえで、満ち足りた気持ちの中で眠れるようになりました。

 その振り返りノートを足掛かりに、徐々に生活リズムが整い、朝の時間を充実させていけるようになりました。毎月月末に、青年会の仲間とその月の気づきをシェアし、翌月の目標立てをする「振り返り会」に参加することも習慣を継続する大きなモチベーションになっています。仲間の工夫や、時には失敗談も聞かせてもらう中で、うまくいかないことも貴重な経験で、何回でも挑戦したらいいのだと肩の力を抜いて、長い目で粘り強く自分を育てられるようになってきました。

半径5メートル以内の人を幸せにする

 社会人になりたての頃、いつも気にかけてくださった先輩が、働きやすい職場になるように、と率先して皆に笑顔で声をかけておられました。社会人にとって一日の中で一番長く接するのは職場の人なので、私も先輩に習って「半径5メートル以内の人に愛と信頼を積極的に伝えること」を心がけています。毎朝、同僚と冗談でひと笑いしてから業務を始められる日々に感謝しています。

 自分らしく働くことや、仕事のよろこびというのは、与えられた目の前の仕事に心を込めて取り組み、自身の仕事の幅をひろげ、質を高めていく過程から生まれてくるように思います。これからも“患者さんと私の中に宿る神の子のいのちで響き合えますように”と祈りながら、本当にお役に立てる力を磨いていきたいと思います。

*1 合宿形式で教えを学び、実践するつどい
*2 患者から希望を聞き出し、ゴール(目的)に向かって変化を積み上げる支援技法
*3 12歳以上40歳未満の生長の家の青年男女の組織
*4 新型コロナウイルス感染拡大を阻止するための「責任」「柔軟に忍耐強く」「決意」「尊敬」「抑制・制限」の5原則の宣言