田尾聡志(たお・さとし)さん│51歳│香川県三豊市 取材/佐柄全一 写真/堀 隆弘

田尾聡志(たお・さとし)さん│51歳│香川県三豊市
取材/佐柄全一 写真/堀 隆弘

 ポップアート画家、田尾聡志さんの作品は、一見、何が描かれているのか分からない。が、眺めているうちに、“いのちの鼓動”のようなものが伝わってきて、とても明るい気持ちになってくる。

「ポップアート(*1)は、日本では一般に馴染みの薄いジャンルなので戸惑う人も多いですが、もともと大衆芸術ですから、気軽に観て楽しんでいただければ、きっとその良さが分かると思います」

生き生きとした表情と明るい色調が特徴の作品

生き生きとした表情と明るい色調が特徴の作品

 そう話す田尾さんは、今年(2019)2月、初めての個展「アンディ(*2)世代の子どもたち」を、地元のギャラリーで開いて好評を博し、展覧会終了後、展示作品の半数近くに買い手がついた。

「アンディ・ウォーホルに私淑しているので、私もその作品も“アンディ・ウォーホルの子ども”という意味で、個展のタイトルを付けました。作品の多くは、アンディやキース・ヘリング(*3)へのオマージュ(*4)ですが、作風は全く違います」

段ボール箱に描いた作品もある

段ボール箱に描いた作品もある

 ポップアートに憧れを抱くようになったのは、大阪の美術専門学校で学んでいた20歳の頃、展覧会を観てアンディ・ウォーホルの作品に魅了されたのがきっかけだった。しかし、その憧れが実現するまでには紆余曲折があった。

「卒業後、デザイン事務所で働くようになったんですが、チラシ制作などの単調な仕事が多く、創造的なことがしたいのにさせてもらえませんでした。毎日夜遅くまで不本意な仕事を続けるうちに、気づくとうつ病になっていたんです」

 1年を経ずして会社を辞め、故郷の三豊市に戻った。通院しながら仕事を転々とする生活を続けたが、その間もポップアートへの思いは消えず、仕事の合間にアクリルの抽象画を描いて修練に励んだ。

 そんな29歳の時、転機が訪れる。信徒である親戚から勧められ、誌友会(*5)に参加したのだ。

「出講してきた講師の温かい人柄に感動し、勧められるまま、香川教区と宇治別格本山(*6)の練成会(*7)に参加しました。笑いの練習(*8)で心がほどけ、『人間は神の子で、本来完全円満である』という教えが心に染みて、救われました」

 その後、青年会(*9)の活動などを通し、教えを学ぶにつれてうつ病は軽減し、ポップアートへの情熱も再燃。以来、こつこつと作品を描き溜め、個展を開くまでになった。

「ポップアートの大きな魅力は、身近にある雑誌や広告、漫画など何でも素材になること。神想観(*10)に励んで感性を磨きながら、自由な発想で、観る人がわくわくし、楽しくなるような絵を描きたいですね」

 田尾さんは、近い将来、海外に出かけ、先端のポップアートの刺激を受け、さらに上を目指したいと意欲を燃やしている。

*1=ポピュラー・アート(大衆芸術)の略称。美術用語としては、現代の大衆文化が生み出す図像や記号、既製品を絵画、彫刻の領域に取り入れた純粋美術の一傾向をさす
*2=アメリカの芸術家でポップアートの旗手、アンディ・ウォーホルのこと。1928~1987
*3=ストリートアートの先駆者とも呼べる画家で、1980年代アメリカの代表的芸術家。1958~1990
*4=敬意、尊敬、献辞、賛辞 
*5=生長の家の教えを学ぶ小集会
*6=京都府宇治市にある生長の家の施設
*7=合宿形式で生長の家の教えを学び、実践する集い
*8=笑いは心を明るくし、心身を健康にする。それは笑うマネをするだけでも効果があり、習慣となるとさらに良い。そこで生長の家では「笑いの練習」を行っている
*9=12歳以上40歳未満の生長の家の青年男女の組織
*10=生長の家独得の座禅的瞑想法