2008年に設立されたNPO法人「ふじ山森の会」では、手入れが行き届かずに放置されている森林の間伐材を薪ストーブの薪にしたり、その灰を肥料に再利用するなどして、富士山とその周辺の森林の保護・保全活動に取り組んでいる。毎週末、森林環境に親しみが持てるようにとイベントを開いている活動の拠点「みんなの広場」(富士宮市)を訪ねた。

NPO法人「ふじ山森の会」│静岡県富士市
菌を打つためにほだ木の断面と側面に穴を開ける
取材・写真/永谷正樹
間伐材は、主に建材として利用されるが、その基準に満たないものは廃棄に費用がかかるため、放置されたままになっているケースが少なくない。ふじ山森の会代表理事の槇野和成(まきのかずなり)さんは、こう語る。
「車で山道を走っていると、伐採されたままになった木をよく見かけるんですが、薪ストーブのユーザーにとっては、それが宝物のように見えるんです」
20年前のある日、槇野さんは、市有林に置きっ放しにされている伐採木を回収したいと富士市に申し出た。ところが、個人からの申し込みは受け付けていないと断られたため、NPO法人ふじ山森の会の設立を思い立ちましたと、槇野さんは話す。

上:菌を染み込ませた木片。これをほだ木に打ち込む/下:植菌したほだ木から生えたシイタケ
「今では行政からだけでなく、市民の方からも、伐採木回収の要請をいただけるようになりました。伐採するのにもお金がかかりますから、私たちが現地に出向いて伐採することも結構あります」
回収した伐採木は、活動の拠点である「みんなの広場」に運ばれ、会員の手によって薪に加工される。薪作りが初めてでも、指導を受けながら楽しく薪作りすることができる。
「この広場は、会員さんが気軽に足を運んで交流できる場にもなっています。薪作りの他にも、薪を使ってチェーンソーアートを楽しんだり、薪を燃やした灰を肥料に野菜を育てたりして楽しんでいます」
取材に訪れた3月中旬には、乾燥させて60〜90センチほどに切った木にシイタケやなめこ、ヒラタケ、キクラゲの菌を植えるほだ木作りが行われた。
ほだ木の断面と側面にドリルで30箇所ほど穴を開け、その穴にきのこの菌を染み込ませた木片を、木槌や金槌で打ち付けていく。なかなか大変な作業だが、大人はもちろん、小学生や幼児の参加者も、懸命に手を動かして菌を打った。
こうして80本のほだ木が完成し、皆で森の中へ運んだ。来年の秋頃、きのこを収穫するまでほだ木を見守るという。槇野さんは、今後の抱負を次のように語る。
「伐採木は捨てればただのゴミですが、使えば資源になります。澄んだ空気やミネラル豊富な地下水など、富士山の恵みを次世代に受け継いでいきたいですね」
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