
加藤 純さん│59歳│静岡県牧之原市
日頃、愛用しているトランペットを吹き、熱演する加藤さん
取材・写真/永谷正樹
昨年(2020)12月下旬、浜松市にある生長の家静岡県教化部(*1)で、愛用のトランペット6本を持参した加藤純さんと会った。加藤さんは、運送会社で働く傍ら、地元の市民オーケストラ、島田フィルハーモニー管弦楽団でトランペットを担当している。
「オーケストラのトランペットは、作曲者の年代や国籍によってさまざまな種類を使い分けています。今参加しているオーケストラでは、ドイツ式のロータリートランペットをよく使っています」

たくさんの種類があるトランペットの魅力について語る加藤さん
心房中隔欠損症(*2)という先天性疾患を持って生まれた加藤さんは、幼い頃に大手術を経験し、現在も心臓ペースメーカーを体に埋め込んでいる。
「1級障害者としてケアを受ける身ですが、健常者と同じように楽器を演奏できるのが嬉しく、いつも幸せを感じています」
加藤さんが、生長の家の教えに触れたのは、ペースメーカーの埋め込み手術を受けようとしていた中学2年生のとき。両親が生長の家の地方講師(*3)に相談し、勧められるまま、両親とともに生長の家本部練成道場(*4)などの練成会(*5)に参加した。
「当時はこんな体に産んだ親を恨んでいたんですが、親に感謝して運命が開けたという講話を聴いて感動しました。練成会に参加させてくれたのも親の愛情だったと、初めて親に感謝の思いが生まれたんです。そんな心境で手術を受けたためか、手術も無事に成功しました」
小学生の頃から音楽好きで、オーケストラで演奏するトランペットに興味を持っていたものの、心臓の病のため吹くことができずにいた。しかし、手術が成功してトランペットが吹けるようになり、吹奏楽部の名門校として知られる商業高校に進学して練習に励んだ。
「3年生のときには、県代表に選ばれて東海大会に出場することができ、『人間は神の子で、無限の力がある』という教えを実感しました」

生長の家静岡県教化部で、長谷川千治・静岡教区教化部長(右端)や教化部職員の皆さんと
高校卒業後、父親が営む会社の役員を務めるようになり、仕事が忙しくなったこともあってトランペットから離れた。働き始めて5年後、父親との意見の食い違いが起きて悩むようになった23歳のとき、解決の道を求めて静岡県教化部を訪ね、個人指導を受けた。
「すると、『こんなときこそ、お父さんに感謝することが大切ですよ』と教えられ、はっと目が覚めました。私が普通に働けるのも、父があのとき練成会に連れて行ってくれたおかげだったと、改めて父への感謝の思いが湧き上がってきたんです」
余裕をもって仕事ができるようになった40歳の半ば頃、再びトランペットに目覚めて市民オーケストラに参加し、今に至っている。また、平成18年には地方講師となり、生長の家の教えを伝える活動にも励むようになった。
「誌友会(*6)などに出講したときは、体に障害があっても、健常者と同じことができるという私の体験を紹介して、前向きに明るく生きることの大切さを話しています。これからも、楽しみながらトランペットを吹いていきたいと思います」
*1=生長の家の布教・伝道の拠点
*2=心臓の右心房と左心房の間にある「心房中隔」と呼ばれる壁に、生まれつき穴(欠損孔)が開いている疾患のこと
*3=生長の家の教えを居住地で伝えるボランティアの講師
*4=東京都調布市飛田給にある生長の家の施設
*5=合宿形式で生長の家の教えを学び、実践する集い
*6=生長の家の教えを学ぶ小集会