
三好雅則(みよし まさのり)
生長の家本部講師。昭和24年生まれ。生長の家参議長。趣味は読書、絵画・音楽鑑賞、水彩画。
田舎(*)に住むようになって近くなったのは、自然との距離である。これは、野鳥の囀(さえず)りやせせらぎの音、森を渡る風の音を聴いたり、道端に咲く花や蜜を吸う蜂、虻(あぶ)、蝶、夜空に瞬く星、そして、毎日少しずつ姿を変えながら天空を移りゆく月などに日々接することで培われるのだろう。いずれにせよ、テレビやスマホ、書籍などでは得られないものだ。
国土の7割が森林で、海に囲まれているわが国では、多くの人が何らかの形で自然を身近に体験しているはずだ。が、「便利・快適・効率」を柱とする“近代的生活”にどっぷり浸かることで、自然との接触が希薄になり、四季折々の変化やそこにある美しさ、生きものたちへの共感力が萎えてしまったのではないか。かつての自分がそうだった。
が、田舎に来て、しばしば昆虫や野鳥、鹿などの動物や四季折々の草花やキノコに接するうちに、これらが不思議に愛おしいと思うようになってきた。また空が広く、街灯も少ないこの地で、ひときわ目立つ月や星々の美しさに打たれ、佇むこともしばしばある。

イラストは筆者
宵の明星(金星)や満月はもちろんだが、夕暮れ時の眉を引いたような三日月の美しさは格別だ。じっと眺めていると、明るさを残した空を背景に、欠けた部分を含んだ月が、実は宇宙空間に浮かぶ“天体”であることに気づかされる。そして、自分も地球という天体の住人で、見慣れた動植物たちと共に、今、ここに生かされていることを実感する。
冬の夜、外に出て星座や月を眺めてみるのも一興ではなかろうか。
参考文献
●生長の家創始者・谷口雅春、生長の家総裁・谷口雅宣著『万物調和六章経』(生長の家)
●レイチェル・カーソン著『センス・オブ・ワンダー』(新潮社)
●中野孝次著『足るを知る』(朝日文庫)他
*=山梨県北杜市