東 幸子(あずま・さちこ)さん│80歳│徳島市 古い布地をリメイクして作った座布団カバー。色に合わせた刺繍が美しい 取材/佐柄全一 写真/堀 隆弘

東 幸子(あずま・さちこ)さん│80歳│徳島市
古い布地をリメイクして作った座布団カバー。色に合わせた刺繍が美しい
取材/佐柄全一 写真/堀 隆弘

 東幸子さんの自宅を訪ねると、古着をリメイクしたさまざまな小物が所狭しと並び、さながらギャラリーのようになっていた。

 童(わらべ)人形、スリッパ、ソファカバー、テーブルクロス、座布団、クッション、暖簾(のれん)、タペストリーなどの作品の中で目を引いたのが、衣紋掛けにかけられた艶やかな黒のドレス。その由来を尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「私が、3人の娘たちの結婚式で着た留袖を孫の結婚式のときに着るためにドレスに作り替えました。どんなに古いものでも、リメイクして新しい命を吹き込めば、また役立つものになるんです」

左:色彩が鮮やかな吊るし飾り/右:留袖をリメイクして作った黒のドレス

左:色彩が鮮やかな吊るし飾り/右:留袖をリメイクして作った黒のドレス

 東さんは5年前から、生長の家徳島教区で行われる「生長の家自然の恵みフェスタ(*1)」のバザーに、古いジーンズで作ったバッグなどを出品するようになった。昨年(2020)11月の「生長の家自然の恵みネットフォーラム」では、前述の黒のドレスが紹介された。

「皆さんと、作品を通して信仰の喜びを分かち合えることが何より嬉しく、大きな励みになっています」

 生長の家の教えに触れたのは、結婚して間もない20歳の頃。生長の家信徒だった伯母に誘われ、誌友会(*2)や講習会に参加するようになった。「人間は神の子」の教えはもとより、親孝行や先祖供養の大切さなど、人としての道を説く教えに感動し、すぐ家族で生長の家の聖使命(*3)会員になった。

廊下がいつの間にかアトリエに。手前のミシンは、ジーンズを縫製していたときに使っていたもの

廊下がいつの間にかアトリエに。手前のミシンは、ジーンズを縫製していたときに使っていたもの

 そんな昭和43年、3歳だった長女が、友達の母子と一緒に海に遊びに行き、友達の母親が目を離した隙に波にさらわれて溺れかけた。しかし、友達が通りがかりの人に助けを求め、その人が近くにいた漁師に呼びかけてくれたため、間一髪のところで救助されたという。

「友達のお母さんが、泣いて謝りながら話してくれましたが、助かったのは、長女も聖使命会に入っていて、神様とパイプが繋がっていたお陰だと感謝の思いでいっぱいになりました」

 その後、娘3人の子育てに専念し、末っ子が小学校に入ってからパートで働くようになり、さまざまな職に就いた。その中で、一番長く勤めたのが、ジーンズを縫製する仕事だった。

「それを通して、余ったジーンズの生地で財布やカバンを作ることを覚え、10年前に退職してから古着のリメイクをするようになったんです」

 娘たちは皆独立したが、夫の喜幸(よしゆき)さんは、平成17年に大病を患ったことから、今も入院している。しかし、現在は新型コロナ感染拡大の影響で面会もままならない。そのため東さんは、また夫婦で暮らせるようになる日を楽しみに、喜幸さんが退院したとき、手編みのベストをプレゼントしようと、その製作にも勤しんでいる。

「無心で小物を製作したり、手編みをしているときが、一番楽しいんです。これからも信仰に励みながら、見た人の心がほっと和むような作品を作っていきたいですね」

*1=自然と調和したライフスタイルの具体例を地域の参加者と共有し、体験・体感する行事
*2=生長の家の教えを学ぶ小集会
*3=生長の家の運動に賛同して献資をする会