2013年に設立されたNPO法人「樹木いきいきプロジェクト」では、東日本大震災の津波で塩害を被った宮城県石巻市、東松島市の庭、校庭、公園などの緑の復活を目指した「緑のおにわプロジェクト」をはじめ、樹木を含む森林、緑地の自然環境の再生、保全活動などを行っている。

特定非営利活動法人「樹木いきいきプロジェクト」│静岡県富士市 取材・写真/永谷正樹

特定非営利活動法人「樹木いきいきプロジェクト」│静岡県富士市
神社のご神木の幹を触って健康状態を診断する喜多智靖さん
取材・写真/永谷正樹

 樹木いきいきプロジェクトが設立されるきっかけとなったのは、2011年に発生した東日本大震災の翌年4月、同プロジェクトの代表で、樹木医の喜多智靖(きた・ともやす)さんが、津波の被害に遭った宮城県石巻市を訪ねたことだった。当時の様子を喜多さんは、こう語る。

「津波による海水の侵入などで土壌中の塩分濃度が高まる塩害によって、多くの木々、草花が枯れかけている状態でした。再生するには、まず除塩する必要があるんですが、市の話では、その予算はなく、伐採をするしかないということだったんです。それじゃ自分たちでやるしかないと、仲間を募って樹木いきいきプロジェクトを起ち上げ、緑のおにわプロジェクトを展開することにしたんです」

 その第一歩として、学校のシンボルツリーとも言える桜などが塩害に遭っている石巻市と東松島市の小学校と高校を対象に、塩害についての理解を深めてもらうための授業を行った。

「木の根っこが塩に浸かるとどうなるか、漬物のたくあんに例えて説明しました。子供たちは皆、真剣に耳を傾けてくれましたね」

上:小学校での除塩作業には、地元の造園会社も参加した/下:喜多さんらが植栽したイソギク。周辺に雑草は生えていない(写真は、ともに樹木いきいきプロジェクト提供)

上:小学校での除塩作業には、地元の造園会社も参加した/下:喜多さんらが植栽したイソギク。周辺に雑草は生えていない(写真は、ともに樹木いきいきプロジェクト提供)

 除塩とは、いわば真水で土壌を洗い流すような作業。地中に水をザブザブと流し込み、塩分を木の根っこよりも下の方へ押し流していく。その際に使用する土壌改良資材についても説明しながら、地元の造園会社と一緒に除塩作業をした。

「2年かけて、市内の小学校と高校、合わせて5校の桜を除塩しました。その間は、月の半分ほど静岡県から宮城県に足を運びました」

 2017年末、緑のおにわプロジェクトが一段落した後は、石巻市内の耕作放棄地を利用した食育教育や盆栽の里親探し、ツリークライミング(*)などの活動に取り組むようになった。中でも注目を集めたのは、イソギクの植栽活動で、昨年(2019)7月、静岡県沼津市の門池公園に約300株を植栽。11月から12月にかけて、黄色いきれいな花が咲き誇り、公園を訪れた人々の目を楽しませている。

「木が枯れる原因の一つに、木の周りの雑草の駆除に用いられる除草剤が挙げられるんですが、イソギクには雑草を抑制する効果があって、その周りには雑草が生えないんです。これからも、環境に配慮して自然を守っていきたいですね」

問い合わせ先
Phone: 0545-64-8426 Email:info@jumoku-ikiiki.org


*=樹木の専門家である“アーボリスト”たちによって開発された、高い木でも安全に登れる技術のこと