
三好雅則(みよし まさのり)
生長の家本部講師。昭和24年生まれ。生長の家参議長。趣味は読書、絵画・音楽鑑賞、水彩画。
ドイツ最古の学園都市ハイデルベルクは、瀟洒な城がある美しい街。街を流れる川の対岸には、森林に覆われた小高い丘の中を縫うように伸びる「哲学の道」があり、私はそこを歩いたことがある。ヘーゲル、カント、ゲーテなどが歩き、インスピレーション(ひらめき)を得た道だ。
「ひらめき」といえば、NHKスペシャル「人体」では、最新のMRI(磁気共鳴画像装置)を使い、興味深い報告をしていた。芸人で作家の又吉直樹氏の協力を得て、「ひらめいた時」と「何も考えていない(意識的な脳活動を行っていない、ぼうとしている)時(デフォルト・モード・ネットワーク〈DMN〉)」の脳の状態を、MRIを使って映像化しながら、両者が酷似していることを明らかにし、DMNがひらめきを生むもとになっていることを示唆していた。

イラストは筆者
DMNについては、本欄(*)で「新しい発見や創造的な解決策を生み出す」ことを紹介したが、それを最新の映像が裏付けたことになる。とすれば、散歩という単調なリズム運動が、脳の意識的な活動を抑制してDMN状態をつくり、それがひらめきを生み出すと考えられるわけだが、番組では自転車漕ぎでも同じことが起きると紹介していた。
コロナ騒動で不要不急の外出が制限される昨今だが、マスクを着用して、感染リスクが低い野外の散歩や自転車漕ぎをし、身体を使ってみてはどうか。気分が晴れるばかりか、健康も増進し、今後のライフスタイルについての貴重なひらめきが天降るかもしれない。
*=本誌2016年3月号
参考文献
●NHKスペシャル「人体」取材班編『人体 神秘の巨大ネットワーク 第3巻』(東京書籍)及び同TV番組
●アンドリュー・スマート著『できる人はダラダラ上手 アイデアを生む脳のオートパイロット機能』(草思社)