三好雅則(みよし まさのり)  生長の家本部講師。昭和24年生まれ。生長の家参議長。趣味は読書、絵画・音楽鑑賞、水彩画。

三好雅則(みよし まさのり) 
生長の家本部講師。昭和24年生まれ。生長の家参議長。趣味は読書、絵画・音楽鑑賞、水彩画。

 地球で最も繁栄している生物種は昆虫で、既知生物(菌類、植物、動物)の半数以上、100万種を超えている。その繁栄要因は、昆虫の「飛翔力」「変態」「被子植物との共進化」によること等を前回紹介した。

 が、見逃せないのは“優れた記憶力”だ。その一例が花蜜の位置(方向や距離)を記憶し、それを仲間に伝えるミツバチの「8の字ダンス」。

 水波誠教授(*1)によると、8の字の2つの円を結ぶ中央部で翅(はね)を震わせて音を出し、尻を振りながら直進するが、この方向が餌場の方向を、直進部の音の持続時間が餌への距離(*2)を示すという。さらに驚くのは、持ち帰った餌の量に応じた時間ダンスをし、多くのハチを餌場に動員することだ。

 こうした記憶力は学習によるものという。とりわけ「匂い」についての記憶力が顕著で、ミツバチに匂いと砂糖水を関連づけて訓練すると、なんと1回の訓練で学習し、記憶してしまう。色は3、4回の訓練で、花の形は学習回数が増えるが、ちゃんと記憶する。こうした能力はコオロギでも実証されている。

イラストは筆者

イラストは筆者

 ヒトには、経験した出来事や語彙などを記憶し、それを意図的に想起し、言語で表現できる陳述記憶があることを本欄(*3)で紹介した。

 陳述記憶をもつ動物は、ヒトとヒトから絵文字の訓練を受けたチンパンジーくらいだが、同教授は、ミツバチのダンスも陳述記憶にあたると指摘し、1立方ミリメートルに満たない“微小脳”に隠された驚異的な能力はまだ一部しか解明できていないという。

「一寸の虫にも五分の魂」というが、研究が進めば、昆虫にも感情などがあることが分かるかもしれない。

参考文献
水波誠著『昆虫──驚異の微小脳』(中公新書)
丸山宗利著『昆虫はすごい』(光文社新書)他

*1=北海道大学大学院理学研究院、行動神経生物学分野の教授
*2=1秒あたり約200メートル 
*3=本誌No.122(2020年5月号)「記憶機能を高める好奇心と適度な運動」参照