
三好雅則(みよし まさのり)
生長の家本部講師。昭和24年生まれ。生長の家参議長。趣味は読書、絵画・音楽鑑賞、水彩画。
毎年、近くの商店街(標高700メートル付近)でツバメを目にするのは4月中旬。軒先(のきさき)などに巣を作って産卵・抱卵・子育てを2回ほどするため、頻繁に見かけるが、繁殖期が終わる秋になると姿が消える。餌となる昆虫が豊富な東南アジア(*1)に渡るからで、その移動距離は3,000~4,000キロに及ぶ。
僅か体長15センチ、体重15グラムの小鳥が、気の遠くなるような距離を毎年定期的に往復する。しかも3~4割は同じ土地に戻り、その約4割が古巣に帰るそうだ。寿命や天敵、悪天候で命を失う(*2)ことを考慮すると、かなりのツバメがピンポイントで元の土地や巣に戻る。では、どのようにして、渡る時期、方位、経路、目的地を知るのだろう?
渡り鳥(*3)は、特定の遺伝子プログラムを持ち、それを基に太陽の位置(昼間渡る鳥)や星の位置(夜渡る鳥)を知り、体内時計や地磁気感知機能、視覚、嗅覚、聴覚等を頼りに飛ぶという。

イラストは筆者
具体的には、遺伝子に促され、太陽や星の位置と体内時計で時期や方位を決めて飛び立った鳥は、ある時間飛ぶと向きを変え、さらにある時間飛ぶなどして目的地を目指す。この間、季節風や日没の位置、地磁気を感知して経路を外れることなく飛び、山並や海岸線など特徴的な地形を辿って目的地に到達する。
ツバメやカッコウ、オオルリ、キビタキ(夏鳥)、ツグミ、ジョウビタキ、カモ(冬鳥)などを目にしたら、小さな体に秘められた驚くべき叡智に思いを致し、地球に生きる命の兄弟としてリスペクトしよう。
参考文献
●樋口広芳著『鳥ってすごい!』(ヤマケイ新書)
●渡辺茂著『鳥脳力』(化学同人)
●ティム・バークヘッド著『鳥たちの驚異的な感覚世界』(河出書房新社)他
*1=フィリピン、インドネシア、マレーシアなど
*2=平均寿命は1.5年だが、野外での長命記録は16年
*3=食糧、環境、繁殖等に応じて定期的に長距離を移動する鳥