
松下 博(まつした・ひろし)さん│68歳│愛媛県宇和島市 取材/久門遥香(本誌) 写真/髙木あゆみ
宇和島市で建築会社を営む松下博さんは、仕事の傍ら趣味でアクリル画を手がけ、山や森の木々、滝などの風景を描いている。
現在制作中の作品は、宇和島市街の背後にそびえる鬼ヶ城連山の麓にある薬師谷渓谷を描いたもの。さまざまな形の岩や澄んだ水の流れが、明るい色調で描かれ、清涼感溢れる絵となっている。

玄関に飾られた作品
「この渓谷は、自宅から車で15分ほどのところにあり、秘境のような雰囲気が楽しめるお気に入りの場所です。いつでもどこでもスケッチができるように、出かける時は、必ずスケッチブックと水彩色鉛筆を持って行きます」
子どもの頃から絵を描くのが好きで、小中学生のときには、絵画展で何度も入選したという。芸術系大学のデザイン科を卒業後、父親が営んでいる建築会社で働くようになったが、仕事の合間に絵の制作を続けてきた。
「普段は仕事が忙しいので、休日や仕事を終えた夜に絵を描くことが多いですね。自然の風景を描いていると、優しく包まれるような感覚になり、ちょっと疲れていてもいつの間にか癒やされて、すっきりとした気分になります」
大学を卒業して働き始めた頃、自律神経失調症による体調不良に悩んでいたとき、叔母に勧められた『生命の實相』(生長の家創始者・谷口雅春著、全40巻。日本教文社刊)を読み、生長の家の教えに触れた。
「体調を崩したことで、病気や死への不安を抱いていたんですが、『人間は神の子で、完全円満である』という真理を学び、病は心の迷いが仮に現れている姿であり、本来ないということを知って、救われた気持ちになりました」
その後、愛媛県教化部(*1)の練成会(*2)に参加し、青年会(*3)の一員にもなって誌友会(*4)などで教えを学んでいくと、病気に対する恐怖心が消え、気づいた時には体調が回復していた。32歳になって、青年会の仲間だった茂子さんと結婚し、6人の娘に恵まれた。

自宅の縁側で、妻の茂子さんと作品を眺めながら談笑する
そうした中で、絵の雰囲気にも大きな変化が生まれたという。
「生長の家の教えに触れる前は、暗い色遣いの絵ばかり描いていたんです。だけど、教えを知って心が明るくなり、幸せな結婚生活を送るうちに、身の回りの美しいものや風景を描きたいと思うようになりました。自然と今のような明るい雰囲気の絵に変わっていったんです。絵は、自分の心をそのまま映し出すものなんだなと思います」
絵筆を手に、キャンバスを見つめるその表情は、松下さんが描く風景画のように明るく澄み切っていた。
*1=生長の家の布教・伝道の拠点
*2=合宿形式で生長の家の教えを学び、実践するつどい
*3=12歳以上40歳未満の生長の家の青年男女の組織
*4=生長の家の教えを学ぶ小集会