
三好雅則(みよし まさのり)
生長の家本部講師。昭和24年生まれ。生長の家参議長。趣味は読書、絵画・音楽鑑賞、水彩画。
春になると大切に育てている花などが無残に食い荒らされることがある。ナメクジ(*1)の仕業だ。
その繁殖期は冬から春。雌雄同体(*2)で2匹が相互に精子を注入して地中等に産卵し、一度に20~50個、一生(1~2年)で4回、合計約200個の卵を産んで繁殖するが、一方で優れた学習能力をもっている。
例えば、①「好物の野菜ジュースを飲もうとした時に苦い水溶液(*3)を飲ませる」と最長2カ月も野菜ジュースを飲まなくなる(条件づけ)ばかりか、連合学習(*4)もこなすから驚きだ。
具体的には、①で野菜ジュースを嫌うようにした上で、野菜ジュースの匂いと好みのポテト香料を同時に嗅がせると、ポテト香料を避けるようになる(二次条件づけ②(*5))。

イラストは筆者
だが、野菜ジュースの匂いとポテト香料を同時に嗅がせる際に、苦い水溶液を飲ませても、ポテト香料を嫌いにはならない(ブロッキング③(*6))。野菜ジュースの匂いを嗅いだ時点で苦い味が続いてやってくることを予見し、「苦いのは野菜ジュースであってポテト香料ではない」ことを知っていたからといえる。
②も③も匂い同士の関係性を理解していなければできない高度な学習で、多くの脊椎動物で報告されていたことだ。が、脳の大きさが僅か1.5ミリ角、ニューロン数がヒト(数百億個)の10万分の1の数十万個しかないナメクジがこんな学習能力をもっている。
人間にとっては厄介者だが、ナメクジはこんな能力を獲得しながら、地球で共に生き延び続けてきた仲間なのだ。彼らを見つけたら、その生き様をリスペクトする余裕を持ちたいものだ。
*1=陸に住む軟体動物に属する巻貝の仲間で雑食性
*2=雄雌の性別がなく一個体の中に雌雄の生殖器官をもつ生物
*3=キニジン硫酸水溶液
*4=2つの事物を結びつける学習
*5=パブロフの犬で知られる条件反射
*6=最初の学習が次の別の要素に対する新たな学習をブロックする現象
参考文献
●松尾亮太著『考えるナメクジ 人間をしのぐ驚異の脳機能』(さくら舎)他