金沢貴子さん(32歳)山梨県北杜市 取材/宮川由香 撮影/堀 隆弘

金沢貴子さん(32歳)山梨県北杜市
取材/宮川由香 撮影/堀 隆弘

 金沢貴子さんと3歳の長女が、台所で楽しそうに会話をしている。長女は小さな椅子の上に立って、ママのお弁当づくりのお手伝い。夫の健二さんと長女長男(2歳)の3人のお弁当のメニューは、大根の葉と舞茸、白ごまの混ぜごはん、車麩と高野豆腐のカツ、めんつゆ入りの卵焼き、ツナじゃが、白菜のおひたしだ。

 金沢さんは、昨年(2019)1月に愛知県から山梨県北杜市に引っ越し、健二さんも勤める生長の家国際本部“森の中のオフィス”で、15時30分までの時短勤務で働き始めた。長女は保育園に、長男はオフィス内の託児所に預けている。そのときから、家族のお弁当を作る生活がスタートした。

 そのお弁当の特色はお肉を使わないノーミートであること。金沢さんは、母方の祖父母、両親ともに生長の家を信仰する家庭で育ち、いのちの尊さや地球環境に配慮した食の大切さを耳にしてきた。大学卒業後、あらためて生長の家で食と地球環境について学ぶうちに、肉食には多くの深刻な問題があることが分かってきたという。

 豊かな国の人々が過剰に牛や豚、鶏の肉を求め続けた結果、食肉の生産によって排出される二酸化炭素やメタンガスが増え、地球温暖化を悪化させている。さらに、穀物が家畜の餌となるため、本来なら人の口に入る穀物が奪われ、飢餓に拍車をかけているのだ。

「肉食を減らすことは、地球環境を守るだけでなく、世界の貧しい国の人たちを救うことにもつながっています。そう考えると、お肉を食べることに抵抗を感じます」

 その意識は、子どもを授かってからよりいっそう強くなった。

わが子、そして世界の子どもたちの未来のために

上:大根の葉とマイタケと白ゴマの混ぜごはん/下:こんがり揚がる高野豆腐と車麩のカツ

上:大根の葉とマイタケと白ゴマの混ぜごはん/下:こんがり揚がる高野豆腐と車麩のカツ

 平成28年に長女、29年には長男が誕生した。長男は、生まれて2日後に先天性の小腸閉鎖と診断され、小腸の一部を取り除く手術をすることになった。

 金沢さん夫婦は、生長の家青年会(*1)で出会い、共に教えを学んできた。病気は仮の姿であり、神が創られた実相(*2)の世界には病はないことを心に描き、長男は神の子で完全円満であると信じ切って、夫婦で懸命に祈った。

「このとき本当に『人間は神の子』の教えと向かい合う機会をいただけた気がします。夫は常に明るく、どんなことが起きても、共に乗り越えてくれるタイプで、とてもありがたかったです」

 産後2日目から金沢さんは母乳をしぼって、小児病棟の新生児集中治療室へ届け続けた。長男は20日後に退院し、その後の経過観察でも医師が驚くほど順調に回復し、すくすくと元気に育っている。

長女のときにも思いましたが、私の食べたものが母乳を通してわが子の体を作ると考えたら、自分が口にする食事への関心がものすごく高まりました。買い物するときにも、“この食材は安全かな。どこから来たのかな”と気にかけるようになりました。自然の恵みに感謝しながら、栄養価の高い旬のお野菜、しかも輸送のための二酸化炭素や保存添加物の心配のない地元で採れたものを買うように心がけています」

 いつも新鮮な旬の野菜が並ぶ、地元の道の駅は、金沢さんのお気に入りの買いものスポットの一つだ。

「逆に、安く売られている外国産のバナナなどは買うのをためらいますね」

 外国から運ばれてきたものは、それだけ輸送による二酸化炭素の量が増えているし、発展途上国では、特に貧しい農家の子どもたちが、不当な対価で過酷な労働を強いられていることも……。母親となってからの金沢さんは、よりいっそう世界の子どもたちの心の痛みに寄り添うようになった。

ら詰めます。お仕事がんばっての気持ちを込めて」と金沢さん

出来上がったお父さんのお弁当をのぞき込む長女。「パパにはまず、上手に出来たおかずから詰めます。お仕事がんばっての気持ちを込めて」と金沢さん

「買い物のときにちょっと意識したり、生活の仕方を工夫してみたり。それがいつかわが子に、そして世界の子どもたちにとって、良い環境を築くことにつながっていくと思うんです」

 でも、肩に力を入れることなく、まずは身近なところから。その一つが、愛情いっぱいの旬の食材を使ったノーミートの手づくり弁当だ。

 さて、小さなアシスタントさんもがんばってくれて、お弁当づくりも佳境に入ってきた。

 前日から出汁につけておいた車麩と高野豆腐は軽くしぼり、小麦粉、とき卵にくぐらせパン粉をはたき、熱した米油の中へ。心地よい音と食欲をそそる香りがキッチンに広がる。

 フライに使った油を少量利用して、大根の葉と舞茸を炒め、白ごまをパラリ。そのフライパンにごはんを入れて混ぜれば、混ぜごはんができあがる。

「この子たちが成人したときに、『地球がこんなになっているのに、お母さんたちは何もしなかったの?』と言われたくないなぁと思って……。倫理的な生活を心がけることを、子どもたちにふんわり伝えていけたらと思います」

 旬の野菜のエネルギーと、地球を思いやる愛情たっぷりのお弁当で、子どもたちは心豊かに育っていくだろう。

*1 12歳以上40歳未満の生長の家の青年男女の組織
*2 神によって創られたままの完全円満なすがた